斜線堂有紀が紡ぐ、独創的な物語世界

1人殺しても地獄に堕ちないが、2人殺すと地獄行きーー斜線堂有紀『楽園とは探偵の不在なり』の独創性

2016年、『キネマ探偵カレイドミステリー』で第23回電撃小説大賞メディアワークス文庫賞を受賞して、斜線堂有紀は作家デビューを果…

伴名練アンソロジストとしても才能発揮

伴名練『日本SFの臨界点』でアンソロジストとしても才能発揮 粒揃いのSF傑作集

 伴名練は凄い。……というのは、すでに周知の事実だろう。2019年に刊行されたSF短篇集『なめらかな世界と、その敵』は、…

大阪の新名所にすでに怪談が誕生?

大阪の新名所「あべのハルカス」の怪談とは? 文芸評論家が選ぶ、夏のホラー小説3選

夏である。熱いのである。ということで、読めば涼しくなるホラー小説を三冊紹介したい。いや、実際に涼しくなるものではないが、夏の様式…

平安ラブコメミステリー『探偵は御簾の中』

平安時代ならではのトリックに脱帽! 平安ラブコメミステリー『探偵は御簾の中』の面白さ

ライト文芸の時代小説で、一番、人気のある時代はどこか。戦国? 幕末? いやいや、平安時代である。女性向けのライト文芸では、小田菜…

松苗あけみが描く、少女漫画版『まんが道』

少女漫画誌『ぶ~け』は新しい時代を切り拓いたーー松苗あけみが描く、少女漫画版『まんが道』

かつて『ぶ~け』という少女漫画誌があった。1978年に創刊され、2000年まで発行。百花繚乱ともいうべき80年代の少女漫画誌の中…

ヒーローへの夢を諦めたモブ達へ捧ぐ

『涼宮ハルヒの憂鬱』に通じるモブ視点の物語 『同じクラスに何かの主人公がいる』が共感を誘う理由

いつかヒーローになって、世界を救う。子供の頃、こんなことを真剣に考えていた人は、意外と多いだろう。私も、そうなると信じていた。だ…

オカルト好きの有閑貴族が事件解決

交霊会で起こった奇妙な事件、貴族はどう解決する? 『有閑貴族エリオットの幽雅な事件簿』が描き出す、イギリスのオカルト事情

ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた時代をヴィクトリア朝という。産業革命により、工業や文化が発展した、大英帝国の最盛期である…

『からかい上手の高木さん』変わらない日常

『からかい上手の高木さん』が描き続ける、甘酸っぱい日常の尊さ 長期連載となった理由を考察

山本崇一朗の『からかい上手の高木さん』第1巻を読んだとき、面白いと思うと同時に、これは長く連載できる話ではないと感じた。理由はふ…

「防振り」はガラパゴス化によって生まれた

「防振り」はガラパゴス化で生まれた? 独自の進化を遂げた小説ジャンル「VRMMO」の系譜

「ガラパゴス化」というビジネス用語がある。孤立した環境で独自に進化した状況を指す。結果的に巨大な市場と乖離してしまうため、ビジネ…

『SPY×FAMILY』のシームレスな面白さ

『SPY×FAMILY』は「まぜるな危険」をやってのけたーーシリアスとコメディがシームレスにつながる面白さ

洗剤の表示に書かれている「まぜるな危険」という言葉を見たことがあるだろうか。これは洗剤に“塩素系”と“酸性”という、ふたつのタイ…

金の力で事件解決、筒井康隆『富豪刑事』

大金持ちの刑事がお金の力で事件解決『富豪刑事』ーー筒井康隆は“社会派推理小説”の殻を破った

世の中の大体の問題は、金の力で解決できると思っている。金でどうにもならないのは、人の命(多少は金の力で寿命を延ばせても、誰もが必…

パルプ・フィクション現象に出口はあるか

出版業界が陥るパルプ・フィクション現象に出口はあるか 『パルプ・ノンフィクション』が伝える、紙の本への情熱

本書を読んで、大いに共感し、激しく胸を揺さぶられた。出版業界の内側を書いた本だからだ。著者とは立場が違うが、私も文芸評論家という…

「はめふら」人気は主人公の魅力にあり

悪役令嬢もの人気作「はめふら」の魅力は主人公の“人タラシ”にあり? 『乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった…』評

女性向けのネット小説を中心に“悪役令嬢もの”と呼ばれるジャンルがある。悪役令嬢とは、物語の中で悪役的な立場に置かれる(もしくは将…

『麒麟がくる』のお供に、光秀ブックガイド

『麒麟がくる』がもっと楽しくなる! 文芸評論家が教える、様々な明智光秀像を描いた本7冊

今年(2020年)のNHK大河ドラマ『麒麟がくる』は、帰蝶役の沢尻エリカが薬物問題で降板するなど、放送前から話題になっていた。し…

憂国のモリアーティは優れたパスティーシュ

『憂国のモリアーティ』は優れたパスティーシュだーー“正典”への大胆なアプローチを読む

この世界にある、すべての物語の中で、もっともパロディ、パスティーシュ作品が生まれているのは、コナン・ドイルの「シャーロック・ホー…

『本好きの下剋上』の止まらない下剋上

『本好きの下剋上』マインは個人で世界そのものに立ち向かうーー異世界ファンタジーとしての魅力を考察

『本好きの下剋上 ~司書になるためには手段を選んでいられません~』(以下、『本好きの下剋上』)の下剋上が止まらない。それは作品の…

『危機と人類』語り口の巧さ

警世の書『危機と人類』はなぜ“読みやすい”のか? ジャレド・ダイヤモンドの語り口の巧さ

多彩な分野で精力的な活動をしている学者、ジャレド・ダイヤモンドの名前が日本で広く知られるようになったのは、なぜ地域によって文明の…