BLの原点は“美少年漫画”にアリ? 『リボンの騎士』から70年、少女漫画の変遷

少女漫画の変遷を辿る作品が続々

 ここ数年、少女漫画を回顧する内容の本が増えている。まず注目したいのが自伝(もしくは自伝的)漫画だ。松苗あけみの『松苗あけみの少女漫画道』、池野恋の『ときめき漫画道 ―池野恋40周年本―』、庄司陽子の『ゴールデン・エイジ』、高階良子の『70年目の告白 ~毒とペン~』など、幾つもの作品が刊行されている。

 アシスタントの立場から、かつての少女漫画界の内実を描いた、笹生那実の『薔薇はシュラバで生まれる』も、貴重な時代の証言だ。また、今年(2021)の4月に、萩尾望都が1970年代の“大泉時代”を語ったエッセイ『一度きりの大泉時代』を刊行するという情報が流れ、少女漫画ファンをザワつかせている。私もそのひとりだ。2016年に出た竹宮恵子の自伝エッセイ『少年の名はジルベール』を読み返して、準備万端整えている。

 いやまあ、そんな個人的な話はどうでもいい。こうした動きは少女漫画が、すでに歴史として語るだけの歳月を重ねたことの証左であろう。とはいえ少女漫画の歴史の起点を確定するのは難しい。戦前から少女雑誌に漫画が掲載されているが、現在へと繋がる少女漫画の起点は、1953年から「少女クラブ」で連載の始まった、手塚治虫の『リボンの騎士』を起点にするのが妥当だろう。その作品から、すでに70年近く経った。その歳月が、少女漫画を文化として受容する土壌を作ったと思っている。

オフィスJ.B編『私たちが震えた少女ホラー漫画』
『私たちが震えた少女ホラー漫画』

 さらに、こうした回顧の動きは、実作者の本だけではない。2020年に出た、オフィスJ.B編の『私たちが震えた少女ホラー漫画』は、ホラー漫画にジャンルを絞ったガイドブックだ。作品の紹介や、単行本未収録作品の再録。作家インタビューや座談会など、実に充実した内容で、少女漫画ファンを喜ばせた。全体のセンスのよさに、これはとんでもない少女漫画好きが編集にいるなと、確信させてくれたものだ。そのオフィスJ.Bが、またもややってくれた。『私たちがトキめいた美少年漫画』を刊行したのだ。今度のジャンルは美少年漫画。現在のBLへと繋がっていく美少年漫画が、やはりセンスよく紹介されている。

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