映画ファンが思わず語り合いたくなる? 『映画大好きポンポさん』には仕掛けがいっぱい

映画好きが語りたくなる『ポンポさん』とは

 杉谷庄吾【人間プラモ】の漫画『映画大好きポンポさん』は、最初、イラスト投稿サイトのpixivに掲載された。そこで注目を集め、2017年に単行本が刊行されたのである。その際、本の帯に「アニメ化企画進行中!!」と書かれていたが、話半分に受け止めていた。しかし順調に製作が進んだようだ。すでに公式サイトが出来ており、作品は2021年の春に公開予定である。この物語のファンのひとりとして、今から楽しみでならない。

 本のタイトルになっているポンポさんは、正式名をジョエル・ダヴィドヴィッチ・ポンポネットという。職業は映画プロデューサー。数々の大ヒット作を製作してきた伝説のプロデューサー、J・D・ペーターゼンの孫で、彼の作った会社「ペーターゼンフィルム」を受け継いでいる。強力な業界のコネと、映画製作の才能を持つ、若きシネアストなのだ。しかし彼女は主人公ではない。物語を動かす狂言回しといっていいだろう。

 では、誰が主人公なのか。ペーターゼンフィルムで制作アシスタントをしている、ジーン・フィニだ。現実から目を逸らし、映画の世界だけを愛する青年である。映画しかない人生をおくるジーンの才能を見抜いたポンポさんは、自ら脚本を書いた『MEISTRE』の監督に抜擢。同時に、映画スターを目指しているが、オーデションに落ち続けているナタリー・ウッドワードを主演女優に抜擢する。このナタリーが、サブ主人公だ。ポンポさんに導かれ、才能を開花させた若者たちが、成長し成功する。悪人の出てこない、ストレートなビルディングス・ロマンが、なんとも気持ちいい。

『映画大好きポンポさん』2

 続く『映画大好きポンポさん2』では、超大作の続編の監督を任せられたジーンが、自己の作家性と映画の商業性の相克に陥り暴走。ポンポさんを振り回しながら、新たな映画を製作する。面白いのは、一作目で完成されたキャラクターだったポンポさんが、恵まれた環境で育った天才であるがゆえに、欠けた部分のあることが明らかになる点だ。実は彼女も成長の余地があったのである。

 ジーンに対抗して、映画俳優を目指しているフランこと、フランチェスカ・マッツェンティーニを主人公にした映画を製作したポンポさん。彼女のラストの言葉に、映画ファンはご機嫌になり、その成長を感じるのである。

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