謎、アクション、ドラマ、無数の暗喩……『進撃の巨人』の衝撃をあらためて分析

『進撃』の魅力をあらためて整理する

 諫山創の『進撃の巨人』の、第1巻を読んだときの衝撃は、今でも忘れられない。

 巨人と呼ばれる存在を阻む城壁に囲まれた都市で、それなりに平和に暮らす人類。だが、超大型巨人の襲来により、都市と人々は大きな打撃を受ける。医師の父親は行方不明になり、母親を巨人に食べられたエレン・イエーガーは、幼馴染のミカサ・アッカーマンとアルミン・アルレルト共に兵団の第104期訓練兵となる。巨人を憎悪し、駆逐することを決意しているエレン。だが、訓練兵の解散式が行われた日、新たに巨人が襲来し、エレンたちも戦いに駆り出されるのだった。

 というのが第1巻の簡単なあらすじだ。強烈なインパクトを持ち、嫌悪感を与える巨人の造形。立体機動装置を使った兵団と巨人のアクション。そして第1巻のラストでエレンが巨人に食われるという衝撃の展開。これは凄いと第2巻が刊行されたら、すぐに入手。すると、さらなる驚きが待ち構えていた。なんとエレンが巨人になってしまうのである。いったいこれは何だと思う暇もなく、ストーリーはどんどん進み、謎が積み重なっていくのである。

 こんな調子でラストの第34巻まで読んでしまったが、あらためて作品の魅力を考えると、3点ほど挙げることができるように思う。

1)巨人と世界の謎
2)人間と巨人を中心にしたアクション
3)多数の人物が織り成す人間ドラマ

 個人的にもっとも興味を惹かれたのが(1)である。人類を無惨に殺す巨人とは、いかなる存在なのか。なぜエレンは巨人に変身できるのか。エレンの家の地下室に、父親が隠したという秘密は何か。どこか歪な人類生存圏である城壁に囲まれた都市は、いかにして形成されたのか。作者は後から後から謎を追加し、大風呂敷を広げていく。しかも(1)の要素に(2)と(3)の要素が緻密に絡まり、壮大な物語世界を創り上げているのである。

 さらにストーリーの途中に大きなクライマックスがあり、巨人や都市の謎に関する真実が、かなり明らかになるのだが、物語のテンションが落ちることはない。舞台が一挙に拡大し、ぶっ飛んだ展開でラストまで突っ走るのだ。残されていた謎も明らかになり、練りに練られたストーリーであることが分かった。最初の方に出てくる3桁の数字など、作中で説明されていないこともあるが、ここにもちゃんと意味がある。興味のある人は、ネットの考察を漁ってみるといいだろう。

 一方、登場する人物も魅力的だ。巨人になったことに混乱しながら戦い続けるエレン。飛び抜けた能力でエレンを守るミカサ。頭脳優秀なアルミン。この3人に加え、最強兵士のリヴァイ・アッカーマンや、巨人の研究に意欲を燃やすハンジ・ゾエ。あるいはエレンたちの、訓練兵時代からの仲間たち。その他にも、膨大な人物が存在を主張しているが、とてもではないが書き切れない。それぞれの信念を持つキャラクターのぶつかり合いも、大きな読みどころになっているのである。

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