“ヤクザ”主人公の漫画、描かれ方に変化アリ? 『極主夫道』『珈琲いかがでしょう』が人気のワケ

“ヤクザ”は新たなコンテンツに?

 元ヤクザを主人公にした漫画が、相次いでテレビドラマ化されている。おおのこうすけの『極主夫道』と、コナリミサトの『珈琲いかがでしょう』だ。昨年の10月から放送された『極主夫道』は、元伝説の最凶ヤクザで、今は専業主夫をしている不死身の龍を、玉木宏が演じた。今年の4月から放送の始まった『珈琲いかがでしょう』は、珈琲の移動販売をしている訳ありの元ヤクザ・青山一を、中村倫也が演じた。

 『極主夫道』の龍は強面で、しかも言動がアンダーグラウンド的であるため、なにかと誤解を受ける。元最凶ヤクザが主夫をしていることから生まれるギャップを中心にしたギャグ漫画だ。専業主夫との格差を際立たせるために、元ヤクザとしいう設定が機能している。以前のレビューで取り上げているので、詳しい内容を知りたい人は、そちらをお読みいただきたい。(なぜ人は『極主夫道』にハマってしまうのか? 考え抜かれた作風を紐解く:https://realsound.jp/book/2020/11/post-657488.html

 一方の『珈琲いかがでしょう』は、ヒューマン・ドラマだ。蛸の絵が描かれた車で、珈琲の移動販売をしている青山が、さまざまな人々と出会い、美味しい珈琲を通じて癒しや潤いを与える。次々と登場する人物は、意外とシリアスな事情を背負っていたりするが、重くない絵柄と、適度に入れられるギャグタッチのコマにより緩和されている。それは暴力シーンも同様で、ヤクザ時代の青山が人を殴るシーンもあるが、主人公に悪印象を持つことはない。

 さらにストーリーが進むと青山が、自分の組の組長と、対立していた組の組長を殺して逃亡したという話が出てくる。しかも、かつての舎弟だったヤクザが執拗に追ってくるのだ。後半の展開は緊迫しているが、やはりこちらも主人公に対する読者の共感を損なわない展開になる。もちろん興趣のあるストーリーにするためという意味もあるが、青山の他人に対する人情味を引き立てるために、元ヤクザという設定が機能しているように思えるのだ。

つきや『組長と世話係』(コミックELMO)
つきや『組長娘と世話係』(コミックELMO)

 などということを考えているうちに、ヤクザを主役や準主役にした漫画を幾つか想起した。ひとつは、つきやの『組長娘と世話係』だ。主人公は桜樹組の若頭の霧島透。「桜樹の悪魔」と呼ばれる、凶暴なヤクザだ。ところが組長から、一緒に暮らせるようになった小学生の娘・八重花の世話係を命じられる。最初は懐かない八重花に困惑していた透だったが、しだいに距離が縮まっていく。それにつれて凶暴だった透の心も変わっていくのだ。また透の暴力シーンは、巧みに画面から排除されており、優しい世界が構築されている。

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