作品評の記事一覧
公開中の話題作を中心に、幅広い作品を映画評論家・ライターが徹底レビュー。
『シチリアを征服したクマ王国の物語』は世界を見通す一流の寓話だ 人の歴史の真実を紡ぐ
1月14日から公開されるアニメーション映画『シチリアを征服したクマ王国の物語』には、世界の歴史を見通す力がある。 「驕れる者…
ウィレム・デフォーは今回も顔面演技全開! 『スパイダーマンNWH』は青春映画の快作
スパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)は悩んでいた。これまでスパイダーマンであることを隠して悪と戦っていたのに、…
映画『99.9』はこれまでにない“劇場版”に エンタメ性と作家性を見事に両立
“悪魔の証明”という言葉がある。一見すると、さも邪悪でファンタジックな何かを示す言葉のように見えるが決してそうではない。悪魔が存…
『コンフィデンスマンJP』なぜ人気シリーズに? ロマンス編ではジェシーの存在感を再確認
「やられた……!」と毎回思っている気がする。騙されると分かっているのに、騙されてしまうのが、『コンフィデンスマンJP』シリーズな…
『キングスマン:ファースト・エージェント』の戦争描写から考える、シリーズ全体の本質
マシュー・ヴォーン監督による、イギリスの人気スパイシリーズ『キングスマン』の新作にして、過去の時代を描く初の試みとなった『キング…
『キングスマン:ファースト・エージェント』が達した新境地 戦争映画として確かな重厚感
いわゆる“シリーズ3作目の呪い”、というものはあると思っている。1作目が最高に面白くて、2作目は期待していたより実はまあまあな印…
“真摯”で“真面目”なコメディー超大作 『ドント・ルック・アップ』に感じる現実的な恐怖
2021年のNetflix最大の映画作品『ドント・ルック・アップ』が配信された。ジェニファー・ローレンスやレオナルド・ディカプリ…
『劇場版 呪術廻戦 0』には言葉の力が込められている “言霊の国”で年末に大ヒットした因果
日本は言霊信仰の国である。万葉集の中に、日本は「言霊の幸わう国」と表現する歌がある。日本は言葉によって幸せが運ばれてくる国だとい…
『ミラベルと魔法だらけの家』3姉妹の描き方に込められた、新たな呪縛からの解放
ディズニーのアニメーション映画『ミラベルと魔法だらけの家』が公開中である。 近年のディズニーのアニメーション映画といえば、『…
『劇場版 呪術廻戦 0』が見出した映像化の正解 呪い(愛)を軸に描く青年の成長譚に
12月24日から公開された、『劇場版 呪術廻戦 0』(以下、『呪術廻戦 0』)。この公開日は、劇中登場する重要な出来事「百鬼夜行…
『マトリックス』シリーズとは何だったのか 『レザレクションズ』に込められたメッセージ
2000年を挟んだ前後の時期に、映画史やその他のカルチャーに大きなインパクトを与えることとなったサイバーパンク・アクション『マト…
“偽ること”を考えさせられる 『ラブ・ハード』はマッチングアプリ世代に響く名作だ
万年ダイエッターという言葉があるように、私は“万年スワイパー”という言葉があってもいいと思う。スワイプとは、その行為自体はスクリ…
『あなたの番です 劇場版』はドラマ映画化の救世主になるか 見え隠れする作り手の遊び心
いま再び日本映画の潮流として台頭の時を迎えている「テレビドラマの映画化」。そのなかで『あなたの番です 劇場版』は、かつてのような…
『ホーム・アローン』の笑いには“痛み”が伴う 愛され続ける映画に成長させた功労者とは?
『ホーム・アローン』が日本で劇場公開されてから、ちょうど30年目の年。クリスマスが来るたび、いや真夏日でも構わず観たくなる瞬間が…
『マトリックス レザレクションズ』の奇妙な味わい 地に足が着いたメッセージが胸に迫る
うだつの上がらないコンピューター会社勤務の会社員トーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)には、ハッカーの“ネオ”という裏の顔が…
『The Hand of God』は“圧倒的”な一作に パオロ・ソレンティーノが考える“若者のすべて”
アカデミー賞のシーズンが近づき、賞レースを意識した作品が増えている。Netflixでは初のアカデミー賞作品賞の受賞を目指し、『t…
『ボス・ベイビー』は“考えずに感じる”映画? 子供の視点と感情に寄り添う奇作的な魅力
アニメーション映画って、時々少し難しい。近年のピクサー作品のような、どちらかといえば大人が観た時に深いい話すぎて泣ける作風を意識…
『ミラベルと魔法だらけの家』に抱く、ディズニーへの敬意とテーマ選びの難しさ
「世界一のアニメーションスタジオはどこか?」 その質問に対して、多くの人がディズニー、もしくはその傘下のピクサーと答えるので…
ケン・ローチの長編デビュー作『夜空に星のあるように』に刻まれた驚くべき現代性
イギリスの社会派映画監督、ケン・ローチの長編デビュー作『夜空に星のあるように』(1967年)がリバイバル上映されることとなった。…
前作に続き批評家と観客の間で評価が二分 “娯楽映画”としての『ヴェノム』シリーズを考える
邪悪かつクールな風貌で人気を誇る、『スパイダーマン』の悪役“ヴェノム”を主人公に、トム・ハーディを主演に迎え実写映画化した『ヴェ…
B・カンバーバッチの名演に圧倒 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が残す不穏な余韻の正体
観終わった後にいつまでも残る、この尋常でない不穏な余韻は一体何なのだろう。 まるで感情の奥底に眠る、言葉にならない悪夢の根源…
一周回って異色作? 『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』の安心感
人間、開き直ると強くなるものである。『ダイの大冒険』でポップも言っていた。そして『ヴェノム:レット・ゼア・ビー・カーネイジ』(2…
ゴリラズのバーチャルライブ映画で味わう音楽の豊かさ キーワードは“繋がり”と“同時体験”
今年、日本でも大ヒットを記録したデヴィッド・バーンのライブ映画『アメリカン・ユートピア』がそうであったように、この延々と続く「コ…
『ミラベルと魔法だらけの家』はディズニー作品そのもの? 主人公の複雑さが意味するもの
「高度に発達した科学は、魔法と見分けが付かない」というのは、SF作家アーサー・C・クラークの言葉だ。“魔法”を持った家族を題材に…
『レッド・ノーティス』はまるで『ルパン三世』? かつてのお正月映画のような華やかさ
ドウェイン・ジョンソン、ライアン・レイノルズ、ガル・ガドット主演のアクションコメディー映画『レッド・ノーティス』がNetflix…
『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』は腐敗した大人社会と生徒の訣別を描く重要作
つくづく、ホグワーツの生徒は命がいくつあっても足りないと思う。入学早々、ハロウィンにはトロールが校内に侵入してくるし、学校の敷地…
ジェーン・カンピオンの堂々とした到達点 『パワー・オブ・ザ・ドッグ』にみる“革命の力”
カウボーイたちが牛の群れを遠隔地へと運ぶ「キャトルドライブ」を題材にした『赤い河』(1948年)という、大スケールで描かれた映画…
ザ・スミスの歌詞が響く 偽らざる心の物語『ショップリフターズ・オブ・ザ・ワールド』
モリッシーの憂いを帯びた柔らかな歌声と弱者に寄り添いつつも鮮烈な歌詞、そしてジョニー・マーのアルペジオを多用した繊細なギターの音…
Netflix『カウボーイビバップ』は成功と言えるか? アニメ版や近年の実写化作品から探る
『機動戦士ガンダム』シリーズや、『シティハンター』、近年は『コードギアス 反逆のルルーシュ』などで知られるアニメーションスタジオ…
『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン』のエモさの裏にある、エモくなさ
映画『ジョン・コルトレーン チェイシング・トレーン』はタイトルの通り、ジョン・コルトレーンの生涯を追っていく内容だ。彼の歩みをブ…
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は見どころ満載 最後の楽しい学園生活と闇の復活
※本稿には『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のネタバレが記載されています。 映画第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』が…
“売れない表現者”のシビアな問題を描く 『tick, tick... BOOM!』にみる“真のアーティスト”の姿
アメリカの映画界で、いま最もホットな存在といえば、主に舞台人として、劇作や作曲、出演者として活躍してきたリン=マニュエル・ミラン…
『マリグナント 狂暴な悪夢』の喜ばしい驚き 内包された“自由”を巡るテーマにも着目
※本稿は『マリグナント 狂暴な悪夢』のネタバレを含みます。 驚きが多すぎるよ、『マリグナント 狂暴な悪夢』(以下、『マリグナ…
「続編映画」特有の問題を離れ業で解決 『ドント・ブリーズ2』で描かれた新たなテーマとは
目の見えない高齢者男性が、高度な殺人スキルを駆使しながら迫りくる……。そんな斬新な設定が評判となったスリラー映画『ドント・ブリー…
『チック、チック…ブーン!』と鳴動する秒針と大爆発は何をふっとばす?
Netflix映画『tick, tick... BOOM!:チック、チック…ブーン!』――この魅惑的なタイトルはどこから生まれ、…
天才ジェームズ・ワンの元気が出る映画 『マリグナント 狂暴な悪夢』はまさに全部乗せ
天才ジェームズ・ワンの元気が出る映画……『マリグナント 狂暴な悪夢』(2021年)は、そういう映画である。どっからどう見てもホラ…
『ホーム・スイート・ホーム・アローン』が投げかけた、ディズニー系列の作品作りの課題
アメリカで12週間連続興行収入ナンバーワンを獲得し、日本を含む世界で大ヒットした、もはやファミリー向けコメディの伝説となっている…