ゴリラズのバーチャルライブ映画で味わう音楽の豊かさ キーワードは“繋がり”と“同時体験”

ゴリラズのライブ映画で味わう音楽の豊かさ

 今年、日本でも大ヒットを記録したデヴィッド・バーンのライブ映画『アメリカン・ユートピア』がそうであったように、この延々と続く「コロナ禍」の中にあって、いわゆる「音楽映画」の見方――もっと言うならば、音楽映画に対する我々の「感じ方」そのものが、少し変わってきているのではないだろうか。かつてのように、何の気兼ねもなくライブやフェスに足を運び、思い思いの歓声を浴びせることが難しくなって久しい昨今、これまで以上にスクリーンが流れ出る音のひとつひとつを慈しむように、そこで歌い上げられる言葉のひとつひとつに思いをめぐらせるようになっているのではないか。12月8日より「世界同時公開」される、ゴリラズのバーチャルライブ映画『Gorillaz: Song Machine Live From Kong / Gorillaz:ソング・マシーン・ライブ・フロム・コング』もまた、そんな「コロナ禍」の鋭敏な感性を刺激してくれるような、そんな「音楽映画」のひとつになっている。キーワードは「繋がり」と「同時体験」だ。

 「2020年は、これまで体験したことのないような恐怖や混乱、そして怒りを味わった」、「『ソング・マシーン』の楽曲やミュージックビデオのエピソード、さらにはライブ配信――それらはすべて、このパンデミック禍で考えついたものなんだ」。本編の最後に流れる劇場版のみの特別映像の中で、ゴリラズの音楽面を担当する実質的なフロントマン、デーモン・アルバーンが語っているように、昨年10月にリリースしたアルバム『ソング・マシーン:シーズン1-ストレンジ・タイムズ』は、彼らが2020年の初頭に始動させ、結果的に「パンデミック禍」の中で展開されることになった新プロジェクト「ソング・マシーン」(楽曲ごとに異なるアーティストを招いて、コラボレーション曲を作るシリーズ企画)をまとめたアルバムになっていた。そして、そのリリースから数カ月に世界中でストリーミング配信され好評を博したライブ映像を、その音響面も含めて映画館仕様に再調整したもの――それが、本作『Gorillaz:ソング・マシーン・ライブ・フロム・コング』なのである。

 ストリーミング配信時と同じく、今年20周年を迎えたゴリラズの過去の楽曲やミュージックビデオを振り返りながら、その魅力と革新性を「ゴリラズ初心者」にもわかりやすい形で伝える「プレショー・プログラム」を経て、カメラはゴリラズの本拠地「コング・スタジオ」の地下にあるという、広大な空間にスイッチする。ゴリラズゆかりのアイテムやソファなどが並べられた、ガレージ然としたその空間の奥に設置された巨大スクリーンの前に居並ぶのは、ダブル・ドラマー、6人のバッキングシンガーを含む、フルセットのプレイヤーたち。その中央に位置するのは、もちろんデーモン・アルバーンだ。

 巨大スクリーンはもちろん、AR技術なども駆使して、2D、マードック、ヌードル、ラッセルというゴリラズのキャラクターたち(そもそもゴリラズとは、『タンク・ガール』で知られる世界的なコミック作家、ジェイミー・ヒューレットが生み出した、彼ら4人によるバーチャル・バンドなのだ)が画面上を駆け回る中、ライブ本編でいきなり歌い始めるのは、ロバート・スミス(ザ・キュアー)だった。アルバムの表題曲でもあり、この「奇妙な日々」を綴った楽曲でもある「ストレンジ・デイズ」。そして、ピーター・フック(ex.ジョイ・ディヴィジョン、ex.ニューオーダー)が、郷愁を誘うメロディアスなベースを奏でる「エリーズ」、キュートなアニメキャラクターとなったエルトン・ジョンが、ピンク色のピアノを弾きながら美声を響かせる「ザ・ピンク・ファントム」。さらには、気鋭のラッパー、スロータイと、パンク・デュオ、スレイヴスが激しく盛り立てる「モメンタリー・ブリース」など、時代や世代を超えて響き合う、イギリスの音楽シーンの「現在」を活写するような楽曲たち。それだけではない。アメリカからベックがARで、そして日本からは、海外での活躍が目覚ましい女子4人組バンド、CHAIが巨大スクリーンに登場し、デーモンを中心としたバンドとコラボレーションを、1曲ごとに次々と繰り広げてゆくのだ。そう、リアルとバーチャルを組み合わせながら、『ソング・マシーン』の楽曲を、サウンドとビジュアルの両面から、立体的に響かせていくようなステージ。それが、この『Gorillaz:ソング・マシーン・ライブ・フロム・コング』なのだ。

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「作品評」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる