ウィレム・デフォーは今回も顔面演技全開! 『スパイダーマンNWH』は青春映画の快作

『スパイダーマンNWH』は青春映画の快作

 スパイダーマンことピーター・パーカー(トム・ホランド)は悩んでいた。これまでスパイダーマンであることを隠して悪と戦っていたのに、色々あって世界中に正体がバレたからだ。おまけに殺人疑惑もかけられた。どこへ行っても注目の的になり、恋人や親友も“スパイダーマンの仲間”と見なされて好奇の視線にさらされ、実家にマスコミのヘリが突撃取材してくる始末。「ぼくの青春がメチャクチャに……そうだ! 魔法使いのドクター・ストレンジ先生(ベネディクト・カンバーバッチ)にお願いして、世界中の人から“スパイダーマンはピーター・パーカーである”という記憶を消してもらおう!」と思いつく。しかしこのアイデアは、ピーターを人生史上最大の危機に叩き落すのであった。魔法は失敗に終わり、他のユニバース、つまり『スパイダーマン』シリーズと『アメイジング・スパイダーマン』シリーズの世界から強力な悪人たちを呼び寄せてしまったのである。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

 本作『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』(2021年)は『スパイダーマン』映画の総決算だ。マルチバースという設定を活かして、過去作の要素を理想的にすくい上げている。これまで『スパイダーマン』を追いかけてきたファンならば必ず胸に来るシーンがあるだろう。そんなわけで本作は間違いなく同窓会映画の傑作だが、それでいてノスタルジーを売るだけの映画にはなっていない。これまで通りコメディ要素の強い作品だが、今まで以上に厳しい現実や、ヒーローの孤独も容赦なく描いている。これはピーター・パーカーという少年が、己の生き方を決める物語でもある。本作はスーパーヒーロー映画だが、同時に青春映画の快作とも言えるだろう。

スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム

 人生は決断と諦めの連続だ。子供の頃からの夢や理想を一つも諦めずに大人になった人なんて滅多にいない(かくいう私も、たけし軍団になりたいという夢を持っていましたが、小6の時に諦めました)。本作は若きピーター・パーカーが、そういった人生の岐路に立たされる物語だ。もちろん怪人・超人が次々と襲ってくる現実離れした見せ場が連発するが、ここで語られるのは“親愛なる隣人”の異名に相応しい、等身大の青春の葛藤である。トム・ホランドの幼さが残る顔立ちもあってか、過去の『スパイダーマン』映画で一番“思春期感”と“青春の終わり感”があり、とある重大な決断を下す姿には普遍的な感動があった。

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