『マトリックス』シリーズとは何だったのか 『レザレクションズ』に込められたメッセージ

『マトリックス』シリーズとは何だったのか

 2000年を挟んだ前後の時期に、映画史やその他のカルチャーに大きなインパクトを与えることとなったサイバーパンク・アクション『マトリックス』シリーズ。その、およそ20年ぶりの続編が公開された。“複数の復活”を意味する言葉を配した、『マトリックス レザレクションズ』である。

 時代を代表するシリーズの新作ということで、当然ながら思い入れのある観客が、当時の懐かしさを感じながら劇場に駆けつけることとなったが、その反応は様々であり、否定的な意見も少なくないように感じられる。しかし、本作が打ち出しているメッセージが、果たしてどれだけ理解されたのだろうか。本作が撮られた理由、シリーズを復活せねばならなかった理由を理解することなしに、これら作品群を真の意味で味わい、考えることはできないはずである。ここでは、そのメッセージとは何だったのかを、たっぷりと解説していきたい。

マトリックス レザレクションズ

 本作に登場するのは、都会を睥睨する高層ビルのオフィスで、緑色のデータの雨“マトリックス・コード”が流れているディスプレイを眺めている男性……現在のキアヌ・リーブスが演じる、“トーマス・アンダーソン”である。アンダーソンといえば第1作『マトリックス』(1999年)で、主人公が救世主“ネオ”として覚醒する前に自分自身だと思い込んでいた人格の名前である。

 『マトリックス』における“現実の世界”は、反乱を起こした機械たちが人間を支配している悪夢的なディストピアだった。人類の多くはチューブに繋がれ、ただ養分として搾取され続けるという存在に成り果てている。人間たちから効率的にエネルギーを搾取するため、機械は人々を眠らせながら、人間が世界を支配していた時代の懐古的な“仮想世界”「マトリックス」を現実だと思い込まされて生きているのだ。

マトリックス レザレクションズ

 そんな悲惨な真実に気づいた少数の人々は、人類の砦に集まり、搾取される人間たちを救い出していた。トリニティーやモーフィアスら有志によってマトリックスの世界から救い出されたネオは、一方的な機械の支配に抵抗するため、現実と仮想世界の両方で熾烈な戦いを繰り広げることになる。その結末までを描いたのが、『マトリックス』トリロジー(3部作)なのである。

 しかし、その「3部作」は本作において、ただの「ゲームのストーリー」であったと語られる。トーマス・アンダーソンは、ここではその開発者であり、ストーリーの生みの親なのだという。しかし彼は、それが現実の記憶だと思えてならない。ニール・パトリック・ハリスが演じる彼のカウンセラーは、「君はそもそも現実だと混乱するようなゲームを作ったんだよ」と説明する。それならば、作者自身が現実と創作の境目が分からなくなり、混乱してしまうのも道理であると。

マトリックス レザレクションズ

 だが、バッグス(ジェシカ・ヘンウィック)ら新しい世代の人間たちがアンダーソンに接触したことによって、第1作同様、アンダーソンはまたもや、この世界が仮想のものであること、自分が“ネオ”であることに気づくことになる。そして、トリロジーで絶命したはずのネオとトリニティーは、じつは機械によって再生されてふたたび機械の動力として利用されていたことが判明するのだ。ネオはそれを知ると、「あいつらは、あの出来事を“ゲーム”ということにしてしまったのか」と、嘆息する。そして、同じく搾取ポッドの中に捕らえられたトリニティを救い出すため、新世代の仲間たちと、再度「マトリックス」に潜入するのだった。

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