『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』は見どころ満載 最後の楽しい学園生活と闇の復活

『炎のゴブレット』はシリーズの転換作

※本稿には『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』のネタバレが記載されています。

 映画第1作『ハリー・ポッターと賢者の石』が公開20周年を迎え、主人公3人組が再結集する特別番組の制作も決定した『ハリー・ポッター』シリーズ。映画全8作にわたって描かれる彼らの物語は、11月26日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される4作目『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』で大きな転換を迎える。ちょうどミッドポイントにあたる本作で描かれるのは、ハリーたちにとっての最後の楽しい魔法学校生活と言っても過言ではないのだ。その不穏な空気は、冒頭のクィディッチ・ワールドカップに死喰い人が乱入した事件からすでに漂う。

 本作はとにかく見どころが多いのにもかかわらず、三大魔法学校対抗試合を軸に物語が進んでいくので非常に見やすい。登場する魔法生物や、他校生徒、動き出す初恋に試合の行方など、エキサイティングな内容ばかり。しかし、そういったザ・ワクワク魔法学園生活の裏では闇の帝王が復活に向けて動き、ハリーの名をゴブレットに入れた何者かの陰謀が渦巻く。そしてこれ以降のシリーズのカラーが初期に比べて完全に暗いものになっていくことを暗示するような描写も多い。なかでも特筆すべきは、“ハリーの孤独”だ。

 ことの発端は、約100年ぶりに行われる三大魔法学校対抗試合の参加者に、異例のメンバーとしてハリーの名前が呼ばれたことだった。本来なら、代表選手は各校の17歳以上の生徒から一人ずつ選ばれる。17歳以下の人間が参加を試みることが不可能なのは、フレッドとジョージが証明してくれたわけだが、それにもかかわらず14歳のハリーの名が書かれた紙がゴブレットから出てきたのである。

 当然彼は自分でそれを入れていないから困惑するも、そういった“ハリー・ポッターは特別”的な流れが周囲の反感を買うことに。大親友のロンでさえハリーを卑怯者呼ばわりした。この時から、ビクトール・クラムに象徴される「マッチョ」に憧れを持ち始めていたロン。のちの作品で自分よりも目立つハリーに嫉妬を募らせる前触れが、すでにこの時から現れていたのだ。そしてシリーズ後半は、どんどんハリーが孤独になる。あらぬ噂を立てられたり、彼自身が周囲の人間を戦いに巻き込まないために友達を避けたり、攻撃的になって孤立する。ハリー自身、心を閉ざしてしまうようになるが、その決定的なきっかけも、考えてみれば『炎のゴブレット』のラスト、セドリック・ディゴリーの死だったのだろう。

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