ミニシアターが日本映画界に与えてきた影響を考える  "世界の多様さ"を教えてくれる存在を失わないために 

ミニシアターが与えてきた影響を再考する

ミニシアターは世界の窓

 筆者はアメリカのロサンゼルスで暮らしていたことがあるが、様々な国からやってきた人々と出会った。バックグラウンドの異なる人々との会話のきっかけに映画をよく利用した。台湾人とはホウ・シャオシェンやエドワード・ヤンの話をしたし、ブラジル人とは『シティ・オブ・ゴッド』の話をした。ミニシアターで様々な国の映画を観ていたことがすごく役に立った。

 ミニシアターは筆者に教科書やニュースでは学べない世界の広さと複雑さを教えてくれた。マケドニアに『ビフォア・ザ・レイン』やエミール・クストリッツァ監督の『アンダーグラウンド』を観て、バルカン半島の民族の複雑さを学んだ。これらの映画から歴史の複雑さと、アメリカ以外にも素晴らしい映画がたくさんあることを教わった。南アフリカ映画の『ツォツィ』ではヨハネスブルグの目も眩む格差社会と南アフリカのヒップホップのパワフルさを知った。数えればきりがないほどに色々なことをミニシアターで教わってきた。最近もベトナム映画『第三夫人と髪飾り』を観て、北ベトナムの美しい風景を知った。

 筆者に世界を教えてくれたのはミニシアターだった。今年もヨーロッパ最後の自然養蜂家の生活を描く『ハニーランド 永遠の谷』で未知の世界を知る予定だったが、コロナ禍で公開延期となってしまった。ミニシアターがもし無くなってしまったら、世界が小さく閉じてしまう、そんな危惧を抱いている。

ミニシアターの支援方法

 深田晃司監督と濱口竜介監督の呼びかけで、ミニシアターを少しでも支援するため、クラウドファンディング『ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)』を立ち上げた。集めたお金は賛同しているミニシアターに均等に分配するという。

 新しい才能にチャンスを与え、世界の多様さを教えてくれるミニシアターは貴重な存在だ。決して失ってはならない、大切な文化なのだ。

 ミニシアター・エイド(Mini-Theater AID)のクラウドファンディングサイトはこちら他にもいくつかの支援方法があるので、それぞれの方法で、できる範囲で支援してほしい。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

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