八木勇征が生きる上で最も大切にしていること 「受け止める、考えることがとても重要」

2019年の初演後、何度も再演された鈴木おさむによる朗読劇『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』。2024年3月31日をもって放送作家業と脚本業から引退した鈴木が、木村真人監督とタッグを生み、作り上げたのが本作だ。
「もしも魔法が使えたら」。現実に打ちのめされたとき、夢が叶わなかったとき、そんな夢想をしたことがある人は多いのではないだろうか。そして、魔法を使えるとなったとき、それは自分のためなのか、誰かのためなのか。
FANTASTICSとしてのアーティスト活動はもちろん、俳優としても目覚ましい活躍を続ける八木勇征に、主演として本作で背負ったもの、どんな思いで表現を続けているのか、その根幹にあるものを聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】
【写真】八木勇征インタビュー撮り下ろしカット&場面写真(全18枚)
今の感情をとにかくぶつけようという思いで臨んだ芝居

ーー鈴木おさむさんの並々ならぬ思いが込められた作品です。鈴木さんとは事前にどんなお話をされていましたか?
八木勇征(以下、八木):実は映画化の話がでる前から、(鈴木)おさむさんから「主人公のアキトは勇征なんだよなぁ」と言われていたことがあったんです。「朗読劇でいつか演じさせてください」とそのときはお返事していました。それから時を経て、主演映画のオファーをいただいて、タイトルを聞いたらまさかこの作品で。おさむさんが本当に思い入れがあることは知っていましたし、念願の実写映画化で、しかも主演を僕に委ねてくださったことに、とても胸が熱くなりました。感謝と同時に絶対に責任を果たしたいという思いでした。
ーー映像化が決まる前からアキトに八木さんをイメージされていたとは驚きです。八木さん自身としては、どんなところがアキトとの共通項だと感じていますか?
八木:自分では分からない部分もありますが、どんなものにも全力で向き合って、食らいつきながら頑張るところですかね。あとは、僕は滅多に怒ることがなくて、ケンカらしいケンカもこれまでの人生でしたことがないんです。そこはアキトのマインドとも通じる部分があるのかなと。あと、アキトはとても心優しい青年で、子どもの頃から困っている人、寂しそうにしている人がいたら手を差し伸べる温かさを持っている。僕もそうありたいと思っているのですが、そんな部分におさむさんも何か近しいものを感じてくださったのかなと捉えています。

ーー作品の完成後、鈴木さんから何か言葉も?
八木:まだ直接お話はしていないのですが、プロデューサーさんを通じて、「大切に思っている作品がこんなにいい形で実写化できてすごく嬉しい。アキトの芝居にも心を打たれた」と言っていただきました。物語の終盤、アキトが涙があふれて顔もぐしゃぐしゃになっているシーンがあるのですが、何か技術を使って芝居をしようと考えるのではなく、今の感情をとにかくぶつけようという思いで臨んだんです。その思いがおさむさんにも伝わったのかなと思うので、言葉をいただいたときはすごくうれしかったです。