『クジャクのダンス』間宮啓行の熟練の“演じ分け” 衝撃の正体は最終章にどう関わる?

間もなく最終章へと突入するドラマ『クジャクのダンス、誰が見た?』(TBS系)。いくつものストーリーラインが複雑に絡み合い、主人公の山下心麦(広瀬すず)や彼女を献身的にサポートする弁護士・松風義輝(松山ケンイチ)だけでなく、私たち視聴者の誰もが、物語が展開するたびに翻弄されてきた。
そして前回の第8話では、またも衝撃的な展開が生まれた。これまで怪しい謎の人物であり続けてきたリュックにカラビナをつけた男が、心麦の味方であるはずの鳴川徹だと判明したのだ。演じているのは間宮啓行である。

本作は、「このマンガがすごい!2024」にもランクインした浅見理都による同名マンガ作品をドラマ化したもの。クリスマスイブの夜に元警察官である父・春生(リリー・フランキー)を殺された心麦が、彼の遺した手紙を手がかりに事件の真相に迫っていくヒューマン・クライム・サスペンスだ。
記者の神井孝を演じる磯村勇斗、心麦の叔母である木村夏美を演じる原日出子、厳しい性格の検事・阿南由紀を演じる瀧内公美、そして、刑事の赤沢正を演じる藤本隆宏……などなど、若き名優からベテラン勢までが一堂に会している。
そんな彼ら彼女らが繰り広げる妙演の数々は、謎が謎を呼ぶ複雑なつくりのこの作品の強度を底上げし、撹乱させてきたといえるのではないだろうか。現時点におけるその最たる人物が、“カラビナ男”と鳴川徹を演じる間宮啓行なのである。
間宮は元検事であり、現在は弁護士だ。ふいに心麦たちの前に現れ、初対面時から心麦のことを「お嬢」と呼ぶ、どこか謎めいた人物。番組公式サイトによあるように、“フランクで陽気な人物”といえばたしかにそうだが、どうにも初登場時から胡散臭かったというか、彼の存在に対する違和感のようなものはこれまで拭えなかった。これに関しては多くの視聴者が同じような心境だったのではないだろうか。

心麦たちが追う事件の協力者ということではあるが、登場すればコテコテの関西弁でこれでもかと自分語りを展開し、周囲の者をも、画面の前の我々をも圧倒する。そんな印象の人物だった。物語の折り返し地点である第6話から登場しただけに、鳴川というキャラクターは本作においてひとつの盛り上がりのポイントを生み出したといえるだろう。しかし、彼はそのような存在にとどまらなかったのである。
先述した“カラビナ男”が初登場したのは第3話でのこと。物語の核となる部分に絡んでいそうでありながら、その姿は見せない。画面に映るのは身体のごく一部だけであり、私たちが彼の存在を認識できるのは、主に声だった。明らかに怪しげな人物だっただけに、画面内に現れるたび、剣呑な雰囲気が漂ったものである。そしてそんな“カラビナ男”が、心麦たちの味方を買って出てくれた鳴川と同一人物であることが判明したのだ。驚天動地……といいたいところだが、勘づいていた視聴者も多いらしい。