『おむすび』は“大変な時代”の朝ドラ 失われ続けた30年と向き合った物語の最後の答えは?

NHK連続テレビ小説『おむすび』第24週「家族って何なん?」はコロナ禍もなんとか落ち着き始めた令和5年、阪神・淡路大震災で亡くなった真紀ちゃん(大島美優)似の少女・詩(大島美優・一人二役)が結(橋本環奈)の前に現れる。
身寄りのない詩は保護施設を飛び出して、大阪の先輩を頼って来たものの、財布とスマホを失くして、公園で水だけ飲んで飢えをしのいできた。街でうろついているところを、病院に搬送されてきた詩は生きることに絶望し、何も食べない。なんとか食べ物を口にしてほしい結だったが、詩は反抗的で、病院から脱走しようとする。たまたま、怪我して病院に来ていた花(新津ちせ)が人懐っこく詩に手を差し伸べる。そして、真紀に似ているということから、歩(仲里依紗)も、詩を放っておけない気持ちになって……。

おせっかいな米田家の気質ゆえ、結も花も歩も、孤独な少女・詩に執着する。結は仕事だから、とにかく、栄養を摂ってもらおうと創意工夫をこらし、花はすっかり友達気分で詩に接する。歩は、結に頼まれて、詩が大事にしていた自社ブランドの鏡が壊れているのを修理したうえ、自社ブランドの服をプレゼントする。それでも詩はなかなか心を開かない。
詩の孤独と絶望は、10代の頃に家出して、そのまま実家と縁を絶った愛子(麻生久美子)の経験談によって、裏打ちされる。第24週の「家族って何なん?」というテーマは、愛子や詩のように、家族のいない、あるいは自分から家族を断ち切った、そんな人たちが社会にいること。その人たちにとっての家族について考えるものであるようだ。

愛子は自ら家族と縁を切ったものの、聖人(北村有起哉)と出会い、ふたりの子どもにも恵まれ、幸福な家庭生活を過ごしてきた。それでもどうやら「親」というものを完全に否定しているわけではなく、むしろ、「親」と縁がなかったことが彼女のなかでわだかまっていたようなのだ。糸島に残っている義母・佳代(宮崎美子)が無性に気にかかり、糸島へのに移住を考える。佳代は愛子を屈託なく「娘」と呼び、ともに畑を耕しながら、愛子の長年のわだかまりが溶けていく。
一方、詩は、結、歩、花とのやりとりを経て、ようやく食事を口にし、保護施設に引き取られていった。だが、これで解決ではないだろう。歩がいつでも連絡して、と名刺を渡すので、最終週にもうひとつ展開があるのではないだろうか。それを待ちたいと思う。