『アンサンブル』松村北斗が向き合った過去の傷の原点 最終話で描かれたことの大きな意味

『アンサンブル』松村北斗の傷の原点

 真戸原(松村北斗)を幸せにしてあげたいと、宇井(田中圭)を振って真戸原のところへ向かった瀬奈(川口春奈)。彼がいるはずの真戸原の母・有紀(八木亜希子)の実家の場所へ到着するも誰もおらず、駅へ戻るとちょうど電車に乗り込んだ真戸原が瀬奈の姿を見つけ、二人は再会を果たす。さらにそこへ、有紀を迎えにきた和夫(光石研)と凛(香音)も車でやってきて、真戸原家の問題はあっさりと解決するのである。

 3月22日に最終話を迎えた『アンサンブル』(日本テレビ系)。前回のエピソードまでで広げるだけ広げておいたいくつもの問題の数々を順序よく解決していくという、基本的な幕の下ろし方が選ばれる。先述の真戸原家の問題に、真戸原の実母・ケイ(浅田美代子)との決着。前回のラストではまだ往生際の悪かった宇井がきっぱりと負けを認めること、そして、以前のエピソードで真戸原との交際を認めたことで解決したように見え、じわじわと続いていた祥子(瀬戸朝香)の過干渉もここに含まれるだろう。

 これらがあまりにも調子良くスムーズに片付けられていくため、最後の10分ほど時間が余ったのか、ちょっといい感じだったこずえ(長濱ねる)と早川(じろう)の交際ゼロ日婚の話題でエピローグは持ちきりとなる。そこに蛇足感は否めないのだが、ともかく真戸原とケイの決着のシーンが、他の諸問題と同じように都合良く丸め込まれるものにならなかったことだけは正しい(ケイに会いに行くと言った際の、真戸原家の面々の反応、瀬奈がついていくならと納得した流れは少々謎であったが)。

 真戸原が、自身の抱えている傷の原点であるケイと直接向き合い、そして自分が愛されていなかったということを、愛されていたかった相手から直接聞かされる。最終話で描くにはあまりにも酷な、痛みに痛みを重ねるような一連ではあったが、そこから逃げなかったということに大きな意味がある。何よりも、ケイの家を出る直前に真戸原は彼女の手を握る。それは、あのお祭りの夜に手を離された記憶を、自分の意思で手を離したものに塗り替えるための行為。これでようやく真戸原が前を向けるのだから一安心である。

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