『機龍警察』『マジオペ』ミリタリーSF作品で読む、未来の戦争

SF作品から考える未来の戦争

 『機動戦士ガンダム』や『新世紀エヴァンゲリオン』に登場するようなロボット兵器が出現するのはまだ先になりそうだが、身体機能を拡張するパワードスーツや戦闘を支援するロボット兵器は、それほど遠くない時期に実現可能かもしれない。それらが現実の社会や戦場に投入され、犯罪や世界各地で起こっている紛争に投入されたらどうなるのか。最新刊が出た月村了衛による「機龍警察」シリーズと、完結した芝村裕吏の「マージナル・オペレーション」シリーズは、そんなビジョンを見せるSF作品だ。

 月村了衛の「機龍警察」シリーズは、機甲兵装と呼ばれる一種のパワードスーツが開発され、兵器として使用されるようになっている世界が舞台。外務省出身ながら警視庁に特捜部を立ち上げ、部長となった沖津旬一郎のもと、自衛隊上がりの傭兵、モスクワ警察の元警察官、そしてアイルランド民族主義のテロリストといった異色の経歴の持ち主たちが、傭兵となって龍機兵(ドラグーン)と呼ばれる特別な機甲兵装に乗り込み戦うポリスアクションとなっている。

 沖津を中心にした特捜部が挑む事件の裏には、どうやら純粋な正義とは違った意識で国を動かそうとする“敵”が存在しているらしい。政治家や警察を始めとした官僚組織、そして経済界にも糸を張り巡らせたその“敵”による謀略を、沖津たちがどうかわして正義を遂行していくかといったサスペンス要素が「機龍警察」シリーズの魅力のひとつだ。

 そして、龍機兵(ドラグーン)を始めとした機甲兵装を使ってのバトルアクションも、シリーズの読みどころになっている。とりわけ特捜部に所属する3人が駆る龍機兵(ドラグーン)は謎めいたテクノロジーが使われていて、“敵”のみならず世界の組織が秘密を知ろうと血眼になっている。そのことが、最新刊となる『機龍警察 白骨街道』で、3人が日本を離れてミャンマーへと送り込まれる原因となった。

 表向きの任務は、日本で極秘に開発されていた機甲兵装のデータが中国に流れそうになったため、データを持って逃げた会社員を確保しにミャンマーの国境地帯まで行くというものだった。外交官で事足りる話に見えたが、裏で“敵”が動いているようで、特捜部の3人の傭兵を龍機兵なしで現地に向かわせ、紛争に巻き込まれる形で殺害する、といった謀略が巡らされていた。

 文字通りの死地へと送り込まれる3人の行動を、かつてミャンマー近隣で日本軍によって繰り広げられ、無数の餓死者を生みだしたインパール作戦になぞらえ、無謀な作戦が誰かの利益のために実行される理不尽さを問うた本作。それほどまでに苛烈な状況に陥りながらも、自衛官、警官、テロリストといった経歴を活かし、現地の機甲兵装を奪取して戦う3人の活躍ぶりには胸がすく。弘法筆を選ばずとはまさにこのことだ。

 日本では沖津と“敵”とのやりとりが続き、果てに驚くような結末を迎えて権力を目指す人間の恐ろしさといったものを突きつけられる。じわじわと迫る包囲網に沖津や特捜部のメンバーたち、そして3人の傭兵は生き延びられるのか? 尽きない興味がシリーズの次回作を早くと求めさせる。

 「機龍警察」シリーズが、機甲兵装という兵器を除いてほぼ現在を描いているのとは違って、芝村裕吏「マージナル・オペレーション」シリーズは少し未来の技術であり、国際情勢を取り入れたミリタリーSFとなっている。



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