中条あやみ、フォトエッセイに込めた想いーー自分をさらけ出したことで伝えたかったこと

中条あやみ、『明日へのことば』インタビュー

『Seventeen』『CanCam』など名だたるファッション雑誌の専属モデルを務め、『君と世界が終わる日に』『TOKYO MER~走る緊急救命室~』など人気ドラマシリーズに立て続けに出演し、ファッションモデルとしても女優としても第一線を走り続ける、中条あやみ。

 彼女にとって初書籍であるフォトエッセイ『明日へのことば』(幻冬舎)が、2025年2月4日に発売された。

 本書は、中条が今の自分をつくってきた経験、気持ちを支えてきた出来事から生まれた想いを“言葉”にして記録したフォトエッセイ。今回のインタビューでは制作の経緯から本書に込めた想いを語ってもらった。

言葉を届けるために、自分をさらけ出した

中条あやみ
スタイリスト 藤井希恵(THYMON)、ヘアメイク 横山雷志郎(Yolken)

ーー中条さんにとって、今回が初めての書籍となります。「フォトエッセイ」という形式を選ばれた理由を教えてください。

中条あやみ(以下、中条):もともとSNSでも自分のパーソナルなことを発信することが得意ではなく、自分をさらけ出すことにも苦手意識があり、本を出すということはそれまで考えたことはなかったのですが、編集者の方から「中条さんがインタビューやSNSで発する言葉が印象的で、影響を受けました」と伝えていただいて。14歳でこの仕事を始め、今年で28歳。気づけば、人生の半分をこの仕事とともに歩んできました。そんなタイミングで「言葉」にフォーカスしたフォトエッセイを出す、という提案をいただいた時には、私も自然と「やってみたい!」と思えて。

 やると決まった瞬間に、撮りたい写真や訪れたい場所など具体的にやりたいことがイメージすることが次々と頭に浮かび、実際に完成した本を見ても、それが全て実現できたと思います。

ーー本書を読むと、中条さんが言葉をとても大事にされていることを感じます。言葉への意識は、いつ頃から芽生えたのでしょうか?

中条: このフォトエッセイを制作している時も「私はいつからこんなに言葉に影響を受けていたんだろう?」と振り返ってみて、小学生の頃は図書室に通うのが大好きだったことを思い出しました。ナイチンゲールやヘレン・ケラーのような強く生きる女性たちの伝記本を読んでドキドキしたり、2年前に翻訳させていただいたサン=テグジュペリの『星の王子さま』にも大きな影響を受けました。

 それと、少し恥ずかしいのですが、ノートに歌詞を書いていたりもしていて(笑)。昔から本を読むことや書くことが好きで、言葉に敏感だったんだと思います。

ーー鈴木亮平さんやカール・ラガーフェルドさん、吉岡里帆さんといった方々から贈られた言葉も綴られていますね。忙しい日々を過ごしながら、どのようにして言葉を記憶に留めているのでしょうか?

中条:昔から日記を書いているんです。自分が「素敵だな」と思った言葉って、苦しんでいる時や大変な時だからこそ気づけるもので、逆に自分が満たされている時にはスッと入ってくるものではないと思っていて。今回のフォトエッセイを書くにあたって、過去に書いた日記を読み返しながら、贈ってもらった言葉を振り返りました。

ーー中条さんにクールな印象を持っていたのですが、この本を読んでから「熱血」という印象も加わりました。本書には「『順風満帆だよね』と言っていただくことが多いけれど、実はそんなことはなくて」と書かれていますね。

中条: ありがたいことに、「順風満帆ですね」「クールな方ですよね」と言っていただくことがあります。そう言っていただくことはとても嬉しいことなのですが、本にも「雑草魂」と書いているように、実際の私は大阪生まれ大阪育ちの下町っ子(笑)。本来の自分とは少し距離のある印象を持たれることが多いことは感じていました。

ーーSNSやYouTubeで自分自身のことやご自身の趣味を発信することで、世間のイメージと本来の自分とのギャップを縮めようと思うことはありましたか?

中条: それにはあまり興味がありませんでした。俳優として役を演じるうえで、パーソナルな情報がそこまで必要だとは思わなかったですし、私自身もタイミングによって変わっていく部分もある。自分のイメージをコントロールするよりも、作品を観てくださった方に自由に受け取っていただきたい、と考えていました。

ーーそんな中条さんが本書ではパーソナルなことについても綴られています。

中条:この本では自分自身のことをしっかり書こうと思ったのは、自分のことについて説明しないまま言葉を書いてしまっても、私が本当に伝えたいこととは違う形で受け止められてしまうかもしれない、と思って。だからこそ、この本では、まず最初に自分自身について書くことにしました。それも、素の自分をさらけ出せるスタッフの方々と一緒に制作できたこと、そして阿蘇という地で撮影できたからこそ書くことができたんだと思います。この一冊を読めば中条あやみという人間が全て分かるんじゃないかな、というくらい全てを綴りました。

中条あやみ

ーー本書の撮影地である熊本・阿蘇は、中条さんが選ばれたんですよね。

中条:熊本には東京ガールズコレクションで訪れることはありましたが、会場の外を歩くことはなく、阿蘇に訪れたのは今回が初めてでした。これまでにもCMやMVなどの映像を見て「綺麗だな」と思って調べてみると、ロケ地が阿蘇だったことも多くて。「綺麗」という言葉には「純粋」や「清らか」「澱みのない」という語源があるらしく、そこから水をイメージし、水が綺麗な熊本が思い浮かびました。そこで以前から気になっていた阿蘇で撮影することを決めました。

ーー実際に訪れた熊本はいかがでしたか?

中条:熊本には、清らかな雰囲気と生命力あふれるイメージを持っていたのですが、実際に訪れてみると、人も温かくて、まるで実家のような居心地のよさがありました。ご飯屋さんに行ったときも、初めて会った川柳を詠んでるおじちゃんがずっとダジャレを言いながら、だご汁(熊本の郷土料理)を出してくれて(笑)。人も街もご飯も、すべてが素敵で、自然と力が湧いてきました。

 鍋ヶ滝(なべがたき)に行ったときは梅雨の時期だったので、空が曇っていたのですが、到着した瞬間、雲の合間から光が差し込み、まるで光のカーテンのような景色が目の前に広がっていて……。撮影では、そんな奇跡のような瞬間にたくさん出会いました。

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