『呪術廻戦』なぜ乙骨憂太は五条悟のために命を賭けたのか 最終巻で描かれたエピローグの意味

※本稿は『呪術廻戦』最新話までの内容を含みます。ネタバレにご注意ください。
『呪術廻戦』の乙骨憂太といえば、呪術師らしからぬ温厚な人柄の持ち主だが、作中では何度か激高するシーンが描かれていた。そのとき感情のトリガーになっていたのは、決まって“大切な誰か”の存在だ。
本編終盤の「人外魔境新宿決戦」では、乙骨は五条悟のために感情を迸らせ、自分の命を賭けるほどの覚悟を示していた。それでは五条は乙骨にとって、いかなる存在だったのだろうか。
2人の出会いはまず、本編の前日譚『呪術廻戦 0 東京都立呪術高等専門学校』にさかのぼる。乙骨は“呪い”の力によってクラスメイトに重傷を負わせてしまい、自責の念から外界との関わりを断ち、1人で生きていこうとしていた。しかしそこで五条は「1人は寂しいよ?」と声をかけ、乙骨を呪術高専に通わせることで、なかば無理やり他人との関わりを作ってやる。
そして乙骨は呪術師としての力を身につけつつ、禪院真希や狗巻棘、パンダという仲間を得ることで、この世界における居場所を見つけるのだった。すなわち乙骨にとって五条は、自身を孤独から救い出してくれた恩人ということになるだろう。
「人外魔境新宿決戦」における乙骨の行動も、そうした関係性から見ると理解しやすい。この戦いで乙骨は、コピーしてあった羂索の術式を使い、すでに死んでいる五条の肉体へと“意識の乗り換え”を行った。簡単にいえば死体の乗っ取りであり、一種の禁忌をおかすような行為であることは言うまでもない。
当然、決戦前の作戦会議では周囲から猛反対を受けるものの、そこで乙骨は逆に怒りをあらわに。これまで自分たちが「怪物になること」を五条1人に押し付けてきたとして、今度は自分が人間性を捨てて怪物になることを宣言するのだ。
なお第261話の回想シーンでは、呪術総監部を襲撃しに向かう五条の姿を乙骨たちが見届けている姿も描かれていた。そこで乙骨は「もう独りで怪物になろうとしないでください」と声をかけており、どこまでも五条に寄り添おうとしていたことが見て取れる。
五条が自分に生きる居場所を与えてくれたのと同じように、今度は彼を孤独な世界から救い出したい……。おそらくはそれが乙骨にとっての恩返しだったのだろう。