『ウルトラマン』監督が語る、少年時代の戦争体験 「ある瞬間に突然ポーンと命を取られてしまう」

『ウルトラマン』監督が語る、少年時代の戦争体験 「ある瞬間に突然ポーンと命を取られてしまう」

 『ウルトラマン』や『ウルトラQ』、そして『怪奇大作戦』などで名作と評される回の監督をしていたことで有名な演出家・脚本家の飯島敏宏が、自身の戦争体験を元に小説を書いた。『ギブミー・チョコレート』とつけられたタイトルからわかるように、当時「少国民」と呼ばれていた少年時代の経験が元となっている。子供からみた戦争とは? 少国民教育とは? そして、どのように世の中が戦争に向かって行ったのか? そんな問いに応える、経験者にしか語ることのできない貴重なインタビューとなった。(編集部)

焼夷弾を見たら覆いかぶさって消す

――初の自伝的小説『ギブミー・チョコレート』ですが、今回小説を執筆するにあたって、第二次世界大戦をテーマに選んだ理由を教えてください。

飯島:以前から当時のことを書きたいという気持ちは持っていました。何のために書きたいかは、その都度変わってはいましたが。では、なぜ今なのかということですが、この小説に出てくる連中とは今でも付き合いがあって、そこでふと、「なぜ過激派の少年少女は自爆テロができるのだろう」という話になりました。でも、その答えは自分たちがいちばんわかっているだろうという話になったわけです。

――当時戦時下におかれていた飯島さんや仲間たちが、その時の環境を振り返るとわかるだろうと。

飯島:僕たちは小国民教育が徹底していたから、昭和20年8月15日までは国のため、神である天皇様のために命を捧げるのは尊いことだったし、そういう風に教わっていました。「焼夷弾を見たら覆いかぶさって消す」「米兵を見たら突き殺す」そういう教育を受けて育ってきました。それ以外のことを教わってこなかった我々と、過激派の子供たちは、極端なことをいうと同じ教育を受けているんです。

――それぐらい当時の小国民教育というのは徹底していたんですね。

飯島:改めて思ったのは、この本でもいろんな先生やお祖母さん、職人の庄司さんとか、いろいろなことを教えてくれる大人が出てきますけど、教育というものが、特に幼い子供にとってどれだけ大事かということです。今は先生と子供の関係というのはそれほど濃くないと思うのですが、昔は生活と一体になっていて、先生の影響をすごく受けます。その先生が時代の流れとともに変わっていき、子供を画一的な答えしかできないように育ててしまう。その怖さを伝えたかったんです。

――物語のごく冒頭で九官鳥の話が出てきます。その対比は今回のテーマをまさに象徴している話だったんですね。

飯島:九官鳥は自分の声をもっているのに、仕込まれると自分の名前の「おタケさん」しか言わなくなってしまう。誰もいないところだと自分の綺麗な声で歌っていたのに、それもいつのまにか歌えなくなってしまう危険性がある。自分の声をもつ九官鳥でいることが、いかに大事かということを伝えていきたいですね。

突然、命をポーンと取られる残酷さ

――それをノンフィクションではなくあえて小説という形で書いたことで、ひとつの物語としてすーっと読み進められた印象があります。特に冒頭の入りかたは秀逸で、短いエピソードで時代の変革をはっきりと印象付けたのは見事だなと思いました。あそこで一気に世界観に引き込まれていきました。

飯島:あれも実体験です。ある日本郷キリスト教中央教会幼稚園が、大日本基督教團本郷中央教会支部に変わっちゃって。実はあそこを書いているときはまだ随筆でした。そこでなかなかキャラが立たせられなくて、主人公である僕と対照的な、「見る前に飛べ」というのができてしまうチュウという存在ができました。そういうチュウを見ていて妬ましくもあり、忸怩たる思いを抱えている僕とのコントラストをうまく表現できるようになり、キャラが確立して、そこからこの作品は小説になりました。

――そういう経緯があったんですね。あと読んでいて感じたのは、もちろん私も戦争は経験していないのですが、読んでいて登場人物の喜怒哀楽の表情、街並み、情景がすごく映像として脳内に浮かんできました。

飯島:僕は基本的に脚本を書いていたから、書きながら映像として見ていた部分はあったと思います。追い込みのところにむけてどう盛り上げていくかとか、ここはこういうテンポを作らなきゃいけないとか、ここは時間で押してサスペンスみたいにとか、そこには脚本の経験が生きているかもしれませんね。

――飯島さんの過去の実績をふまえると、どうしても映像で見たいなと思ってしまいました。特撮を駆使していただいて(笑)。

飯島:まあ、実写は予算的にムリだろうけど(笑)、アニメとか漫画にしてもらえたらありがたいかなとは思います。やっぱり戦争ものって、いろんな方が映像にしているけど、重いんですよ。見る前に「うわぁ……」って構えちゃうものが多いと思いませんか? だから今回の作品はああいう入り方にしました。実際に特殊な状況下で生活はしていましたけど、楽しいこともあったし、子供らしい生活もしていたし。

――確かに、もちろん戦時中なので理不尽なこと、悲惨なこともあったのは事実だと思いますが、主人公の僕やチュウをはじめとして、出てくる子供たちはみんな生き生きとしています。いい意味でちゃんと子供だし、小学生なんですよね。

飯島:運動会の障害物競走のところもそうだけど、やっぱり下町の子供は女の子の前でいいカッコしたいとかはあるんですよ、そんなご時世なのに(笑)。

――私も下町育ちなのでわかります(笑)。

飯島:あそこの件もほぼ事実ですから。女組の前ですごく速い子が転んで、ハラハラさせてから追い抜こうとか、当時は真剣に考えていましたね。そういう子供たちが上から無差別にガン! と教え込まれて変わっていく。明るいこととか楽しいこともたくさんあったのに、それがある瞬間に突然ポーンと命を取られてしまう。だから残酷なんです、戦争というのは。

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