『機龍警察』『マジオペ』ミリタリーSF作品で読む、未来の戦争

SF作品から考える未来の戦争

 主人公のアラタは専門学校を出てしばらくニート生活を送っていたが、民間軍事会社の募集に応じ戦場へ行って、そこで優れた指揮官ぶりを発揮する。途中からアラタは、他の指揮官の下で消耗品のように扱われる子供たちを集め、子供たちが死なないようにと戦術を駆使し、負けない戦いを続けるように。いつしか「子供使い」という異名で呼ばれるようになったアラタは、世界の軍事組織が注目する存在となっていく。

 シリーズ完結作となる『マージナル・オペレーション改11』でアラタは、『機龍警察 白骨街道』と同じミャンマー付近で中国軍を相手にした戦闘を繰り広げている。中国の攻勢によって朝鮮半島で動乱が起こり、韓国のソウルが北からの攻撃で壊滅。中国は東南アジアにも進撃を始めていた。これを迎え撃ったのが、アメリカ海兵隊とアラタたちの部隊だった。

 そこでの戦いで、アラタが子供たちとともに投入したのが「まめたん」と呼ばれる多足型ロボット戦車だ。これは芝村作品の『富士学校まめたん研究分室』で女性技術者によって生み出された兵器が実用化されたもの。人間よりも素早く敵をとらえて確実に射殺していくAI兵器の実力を、余すところなく見せてくる。無人のドローン兵器がテロリストの拠点を爆撃したといったニュースが出てくるが、ロボット技術がさらに進むとこうなるのかと戦慄させられるだろう。

 物語の中では、アラタに対する戦闘で連敗を喫する中国国内で不満が爆発し、内乱が起こり分裂状態となる可能性が示される。世界情勢も混沌としたものになっていく。決して起こりえない事態ではないだけに、日本も「機龍警察」シリーズのような機甲兵装や、「マジオペ」シリーズの「まめたん」のようなAI兵器の開発が非現実的だとは言い切れないのではないか。そんな未来に思いを馳せ、戦争の理不尽さを再認識するためにも、手に取って開いて欲しいシリーズたちだ。

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