本が多すぎる自宅はどうなる? 古本マニア・日下三蔵の断捨離が凄まじい

古本マニア・日下三蔵の断捨離が凄まじい

 世の中には、とんでもない人がいる。日下三蔵の『断捨離血風録 3年で蔵書2万5千冊を減らす方法』及び、小山力也の『古本ツアー・イン・日下三蔵邸』を読んで、つくづくそう思った。この二冊は、ミステリーとSFの評論家兼アンソロジストである日下三蔵の自宅と書庫用のマンションの部屋の蔵書を整理した記録である。どちらも、あまりに本が多すぎて“魔窟”と化している。なお、二冊に登場する三人の主要人物と面識があるため、今回の書評では敬称をつけることにした。

 最初に三人を紹介しておこう。まず日下三蔵氏だ。仕事については先に触れたが、一方、有名な古本マニアとして知られている。ミステリーとSFを中心に、稀覯本や珍本を山のように所持しているのだ。また、コミックやアニメ関係のCDも、どれだけあるか分からない。そんな日下氏が、とある事情で自宅の本が山積みになっている和室を空にする必要があり、ついに蔵書の断捨離を決心したのである。

 その断捨離に参加したのが、西荻窪にあるミステリーに強い古書店「盛林堂書房」の主の小野純一氏と、手伝いに駆り出された小山力也氏だ。ちなみに小山氏は、ブログ「古本屋ツアー・イン・ジャパン」で知られる古本マニアである。「盛林堂イレギラーズ」と称して、よく小野氏の手伝いバイトをしている。我が家も半年の一回くらいのペースで「盛林堂」にいらない本を引き取ってもらっているが、そのときも小野氏が何度か一緒に来てくれているのだ。

 まあ、私のことはどうでもいい。『断捨離血風録』は、本を処分する日下氏の視点で、事の経緯が綴られている。『古本ツアー』は、本の処分を手伝う小山氏の視点で、やはり事の経緯が綴られているのだ。なおメインとなる整理以前にも、小野氏と小山氏は日下邸の本の処分をしており、結果的に約十年の歳月をかけた断捨離となっている。

 この二冊、とにかく書庫の整理と、それに付随することしか書いていない。それって面白いのと思う人もいるだろう。だが、メチャメチャ面白いのである。そもそも日下邸にある古本が尋常ではない。出てくる古本のタイトルは、比較的ミステリーが多いが、稀覯本が目白押し。しかも同じ本が、二冊、三冊あるのが、当たり前である。『断捨離血風録』『古本ツアー』の両方で、山田風太郎の『道化の方舟』を日下氏が購入するエピソードが出てくるが、こんなことをしていれば同じ本が何冊も溜まるはず。やはり日下氏は恐ろしい人だ。

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