【漫画】クラスの隠キャがK-POPアイドルに!? 話題作『ガールクラッシュ』“女の子たちのぶつかり合い”が熱い
LINEマンガにて連載中の漫画『ガールクラッシュ』。歌もダンスも完璧でスタイル抜群な高校一年生・百瀬天花(ももせてんか)とひたむきにK-POPアイドルを目指す地味目な女の子・佐藤恵梨杏(さとうえりあん)の二人が、ともにK-POPアイドルへの道を駆け抜ける青春ストーリーだ。
遠い世界の話のようで、身近な物語のような印象を受ける本作。K-POPアイドル、完璧な主人公、ひたむきなライバルとどこか特殊な設定にもかかわらず、読めば読むほど惹かれていくのは何故だろうか。本インタビューでは、作者のタヤマ碧氏にK-POPを題材に選んだ理由や描き方の工夫などについて聞いた。(とり)
K-POPを題材に選んだ理由
――まず、本作誕生の経緯からお聞かせください。K-POPを題材にしたきっかけは何だったんですか?
タヤマ:担当さんと題材の案を考えているときに、私が好きなものや今ハマっているものを書き出してみたんです。そこにK-POPも挙がっていて、担当さんに「K-POPアイドルを目指す女の子の話を描いてみたら?」と提案していただいたことが始まりですね。もともとK-POPが大好きだったので、描きたい気持ちはずっとあったんですが、題材としては難易度が高い気がしていて、自分の中で敬遠していました。そのため、担当さんに背中を押していただいたからこそ、実現した作品とも言えますね。
題材が決まってから、実際に韓国へ取材に行かせていただきました。時期は2019年の暮れ頃。コロナで渡航制限が出る直前だったので、本当に運が良かったです。そこでは、レッスンを受ける女の子たちから直接話を聞いたり、模擬オーディションの様子を見学させてもらったりしました。おかげさまで、練習生生活(K-POPアイドルになるには、数年間、練習生としてレッスンを受けながら、寮生活を行わなければならない)をよりリアルにイメージすることができましたね。扱うのが難しい題材だったからこそ、現地でしっかり取材ができて良かったです。取材前に軽く描いていたネームも結局全部描き直しましたから。
――実際に模擬オーディションを見学されてみて、アイドルとして選ばれる基準における日韓の違いは感じましたか?
タヤマ:どうでしょう。私も、やはり韓国のアイドルはスキル重視のイメージがありましたが、模擬オーディションでは、今後の練習次第でどれだけ伸びそうか、その子自身にアイドルの素質があるかを見ている印象を受けました。その選考基準は、日本のアイドルも同じですよね。個人的な実感としては、求められるアイドル像や音楽性に違いはあっても、選考基準におけるはっきりとした違いは感じませんでした。
――取材に行かれた時期は、ちょうどHKT48だった宮脇咲良さんが韓国に行かれて、IZ*ONEのメンバーとして活動されていた頃でもありますよね。日本のアイドルがK-POPで活躍するという新しい挑戦による影響も、本作の背景にはあったのでしょうか。
タヤマ:そうですね。まさに当時、宮脇さんが出ていたオーディション番組『PRODUCE 48』にハマっていました(笑)。少しずつ歌やダンスが上達していく姿や、その成果が結果として表れる様子は見ていてとても面白かったですね。
もともとバトルものというか、スポ根的な作品を描いてみたいとも思っていました。韓国のオーディション番組を見ていると、昔のスポ根漫画にある熱血さを感じる瞬間があったんですよね。番組から感じられる熱っぽさが好きでしたし、スポ根的なライバル関係を描くうえでも、K-POPを題材にするのは結構アリなんじゃないかと繋がっていった感覚はあります。
――ちなみに今、K-POPで特にハマっているアイドルグループはありますか?
タヤマ:基本的に曲を好きになってグループを覚えていくので、TWICEやBLACKPINK、ITZY、IZ*ONEなど、かなり満遍なく聴いていますね。特にMAMAMOOの曲の癖になる感じが結構好きですかね。男性グループももちろん聴くのですが、基本的には女性グループが好きです。
特殊な題材だからこそ、分かりやすく
――本作の主人公である天花と、そのライバルにあたる恵梨杏のキャラ設定はどの構築されていったんですか?
タヤマ:実は、最初は恵梨杏を主人公にして描いていました。そもそもK-POPアイドルという題材自体が特殊なものなので、読者の方が読み進めやすいように、キャラ設定は王道な感じでシンプルにいきたいと考えていたんです。地味でパッとしない主人公に対して、華やかで何でもできる優等生タイプのライバルが登場し、次第に地味な主人公が努力で才能を開花してライバルを追い抜いていく展開は、ひとつ王道の型ですよね。しかし、描いていくうちに優等生タイプの天花の気持ちに興味が湧くようになったんです。
能力はあるのになかなか報われなかったり、恵梨杏の才能に嫉妬したり……。王道の型で言うと、優等生タイプのライバルキャラは、主人公の引き立て役として損な役回りを担いがちじゃないですか。そこで、主人公とライバルを入れ替えて、優等生タイプの天花を主人公にして描いたらどうなるんだろうと思い、今のキャラ設定になりました。入れ替えたことによって、王道な感じではなくなってしまいましたけど(笑)。
――本作はK-POPアイドルが題材にもかかわらず、日本の学園生活の様子から物語が描かれています。この学園生活も王道な描き方という印象を受けました。これも読者が作品に入り込みやすいよう意識されてのことなのでしょうか。
タヤマ:そうです。もちろん、K-POPアイドルの練習生が成長していく姿を描くことが目的ではあったのですが、いきなり韓国での寮生活を描いても、あまり感情移入できないですよね。“普通の女子高生たちが韓国に渡ってK-POPアイドルを目指す”という過程を描くことに本作の意味があるような気がしたので、冒頭は主人公たちの学園生活の様子を描きました。学園シーンも描いていて楽しかったです。
――加えてダンスシーンの描き方にとても惹かれました。スピード感や臨場感が伝わってきました。
タヤマ:ありがとうございます。ダンスシーンは、私がダンスを踊れないので、実際にダンスができる方に振り付けを作ってもらって描きました。想像だけだと、どことなく嘘っぽい動きになってしまいますし、“ダンスが上手な子”の説得力を持たせられない。そのため、実際に踊ってもらった映像を見ながら、その迫力が絵でも伝わるように若干誇張して描いています。
――才能があって上手な人と、一生懸命頑張っている人のダンススキルの描き分けがとてもリアルでした。
タヤマ:よかったです。ただ自分としては、自信を持ってうまく描き分けられているとは言い切れないですね。どれほどダイナミックでカッコいいダンスを参考にしても、静止画にすると、どうしてもそのカッコよさが伝わりにくくなってしまいますし、ダンスの個性を描き分けるって本当に難しくて。だからこそ、もっと魅力的に描けるように工夫ができたらいいなと思っています。今後の課題ですね。
――個人的にはダンスシーンに限らず、タヤマ先生の絵はただ会話しているだけのシーンにも躍動感があると感じました。天花の嫉妬心や感情の揺らぎが細かく描かれていました。だからこそ感情移入しやすくて、一気に読み進められましたし、この躍動感こそタヤマ先生の特徴だと思いました。
タヤマ:「読みやすさ」はいちばん意識しているところではありますね。読んでいて引っかかる部分をいかになくすか。それは第一優先として考えています。
――それは、デビュー当初からのこだわりですか?
タヤマ:意識的にこだわっていた覚えはありませんが、編集者の方に「ネームが見やすいね」と言っていただくことはありました。当時の自分としては「ちゃんと解読してもらえるだろうか?」と心配で、毎回ドキドキしていたので嬉しい言葉でしたね。このように、実際に反応をいただいてからうまく描写できていたんだと知っていく感じです。読んでいただかないことには始まりませんし、デビュー後も読みやすさ、分かりやすさは常に心掛けているので、「読みやすい」と言っていただけることは大変ありがたいです。