脚本家・吉田恵里香、2024年に読んだおすすめ書籍3選 川上弘美の短編、小川公代の評論、もう一冊は?
各界の第一線で活躍する方々に、今年の読んだおすすめの書籍を紹介してもらう企画「2024年、なに読んだ?」。第一回目に登場するのは脚本家・吉田恵里香だ。
アニメ『ぼっち・ざ・ろっく! 』シリーズやドラマ『恋せぬふたり』、『君の花になる』など幅広いジャンルの作品を手掛け、視聴者から信頼を獲得してきた吉田氏は、2024年は連続テレビ小説『虎に翼』(NHK)を手掛けことで更なる知名度を獲得。大晦日に放送される『第75回 NHK紅白歌合戦』の審査員にも選ばれるなど、誰もが認める「今年の顔」だ。
そんな今最も注目を集める脚本家である吉田氏は今年、どのような本を読んだのだろう。アンケートに答えてもらった。
犬山紙子『女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
ーー吉田さんが今年読んだ本の中でおすすめの本を良かった点とともに教えてください。
吉田:1冊目は、犬山紙子さんの「女の子に生まれたこと、後悔してほしくないから」です。女の子が生きづらさや誤った劣等感を持たずに育ってほしいという祈りのようなものが感じられる。男女問わず一読していただきたい本だからです。
大人気イラストエッセイスト、犬山紙子の最新刊。タイトルにもある「女の子に生まれなければよかった」と後悔してほしくない、という願いから生まれた一冊。「見た目コンプレックスになって、人生を楽しめなくなってしまったらどうしよう」「性教育をいつ、どんなふうに始めるべきなのか」といった不安について、まずは家庭の中で保護者ができることを知るべく、上野千鶴子、SHELLY、荻上チキといった専門家の方や当事者の方、アクティヴィストへの話を聞き、考える一冊。
川上弘美『ぼくの死体をよろしくたのむ』(新潮社)
吉田:2冊目は、川上弘美さんの短編集「ぼくの死体をよろしくたのむ」です。川上弘美さんの柔らかい文体と細い針で胸の奥を突かれるような物語にずっと憧れています。今年はこの本を何度か読み直しました。
「蛇を踏む」で芥川賞を受賞後、紫式部文学賞、谷崎潤一郎賞など名だたる文学賞を受賞している小説家・川上弘美の短編集。一篇約15ページ、恋と不可思議な日常に満ちた、珠玉の短篇集。
小川公代『翔ぶ女たち』(講談社)
吉田:3冊目は英文学者・小川公代さんの「翔ぶ女たち」です。朝ドラを描く際に大きなテーマとしてケアについて考えていたことがきっかけに小川さんの著書を沢山読みました。その後イベントでご一緒させていただいたのですが作品と小川さん自身にエンパワメントされまくりました。
『ケアの倫理とエンパワメント』『ケアする惑星』などの著作を手掛け、「ケア」をテーマに研究を続けてきた英文学者・小川公代の評論集。明治から昭和にかけて活躍した小説家・野上弥生子は、語学力や教養やケア実践を、彼女はその先駆的な仕事にどう活かしたのか。松田青子や辻村深月など、映画、アニメ、音楽……現代の表現者たちの言葉をつなげて語る斬新な評論。
ーー吉田さんは普段どのようにして、本を選びますか?
吉田:本屋に行って前調べなく直感で選ぶ──なのですが今年はあまり本屋にいけず、Amazonのおすすめをどんどん深く潜っていく感じで新しい本に出会って行きました。
ーー今後読みたい本、注目している作家やジャンルがあれば教えてください。
吉田:久しぶりに大型本屋に行って直感で選びたいです。ティーン向けの小説にも興味があります。
ーー2024年はどのような年でしたか?
吉田:世の中の解明度があがった一年でした。
ーー吉田さんにとって「2024年を象徴する愛用品」を理由とともにご紹介ください。
吉田:ノートパソコンと六法全書です。朝ドラ執筆中共に戦った仲間です。六法全書は資料というよりも今どのように社会は物事を捉えているのかという確認の為に良く目を通していました。
ーー2025年に期待していること、計画、控えている仕事などを教えてください。
吉田:様々な差別が横行して、戦争も終わる気配がない。気が滅入ることばかりが社会で起こっているので、少しでも世の中がよくなることを期待します。自分としては仕事としても人としても誠実でありたいなと思います。今は小説を書いています。
吉田恵里香(よしだ・えりか)
神奈川県出身。脚本家。テレビドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」、映画「ヒロイン失格」「センセイ君主」など、多くの作品で脚本を手がける。2022年のNHKよるドラ「恋せぬふたり」で第40回向田邦子賞、ギャラクシー賞を受賞。