『ふしぎ駄菓子屋 銭天堂』ファン必見! 横山だいすけおにいさんに聞く、親子で楽しみたい『妖怪の子預かります』の魅力
舞台は、平和な江戸時代。太鼓長屋に少年・弥助(やすけ)と目の見えない美青年・千弥(せんや)がやって来るところから物語は始まる。どう見ても親子とは思えない2人。しかも弥助は千弥のうしろに隠れて他の誰とも話そうとしないのだ。そんな中、弥助が妖怪の子どもを預かる“うぶめ”の住まいである“うぶめ石”を割ってしまう事件が起こる。
その罪を償うために、しばらくうぶめに代わって妖怪の子を預かる仕事を任命されてしまった弥助。もちろん、妖怪の子を預かるのは初めてのこと。戸惑いながらも次々に預けられる個性豊かな妖怪の子どもたちと過ごすうちに、弥助の中にもある変化が起こって……。
もともとは大人向けの文庫シリーズとして生まれたものを、児童書版としてリニューアルしてできた本作。それゆえ子どもが夢中になるだけでなく、大人にとっても読み応えのあるストーリーになっている。そこで、自身も4歳の娘を持つ父親であり、『おかあさんといっしょ』(NHK)11代目・うたのおにいさんとして多くの子どもたちとその保護者から愛されてきた横山だいすけおにいさんに、この本の魅力をたっぷりと語ってもらった。
弥助と妖怪たちの関係は、うたのおにいさんと子どもたちに近いかも!?
――『妖怪の子預かります』の第一印象はいかがでしたか?横山だいすけおにいさん(以下、だいすけおにいさん):まず『妖怪の子預かります』っていうタイトルにワクワクしました。「え、妖怪って子どもいるの? 子育てしてるの?」って(笑)。もうタイトルから「どういうこと?」と惹きつけられましたね。
――個性豊かな妖怪がたくさん出てきますが、お気に入りのキャラクターは見つかりましたか?
だいすけおにいさん:僕は玉雪さんが好きです。こういう包容力のある存在がいてくれると、癒やされるというか。妖怪ってどっちかというとドキドキさせられることのほうが多いので。玉雪さんって最初は正体不明なんですけど、とにかくやさしくて献身的なんですよ。なので彼女が出てくるとホッとできました。
それから、こんな妖怪が自分の近くにいてくれたら面白いだろうなって思ったのは、梅吉です。梅の妖怪なのでサイズも可愛らしいし、胸ポケットなんかに入れていろんな現場にも連れていきたいなって。友だちというか、相棒になれそう!
――梅吉はおしゃべり好きなところも魅力的ですよね。
だいすけおにいさん:番組収録に来る子どもたちの中にも、梅吉みたいな子っているんですよ。おしゃべりが好きで、たまに「へへへ」って自慢げになるんですけど、ちょっと抜けちゃってたりする(笑)。そういうの、すごく可愛らしいなと思うんです。
――考えてみると、だいすけお兄さんが子どもたちと接するときの距離感は、弥助が妖怪の子どもたちを預かるのと、どこか近いものがありますね。
だいすけおにいさん:そうですね。家族ではないけれど、他人というほど遠くない。そんな感覚はちょっと似ているかもしれません。番組収録には3〜4歳の子どもたちが40数人が来てくれるんですが、みんな性格が全然違うんです。すぐに泣いちゃう子もいれば、転んでも元気に遊んでいる子もいるし、ずっと喋っている子もいれば、まったく話せない子もいる。お母さんから離れられない子もいれば、「もうここに住む!」ってスタジオが大好きになる子もいて本当に個性豊かなんです。
――個人的には、みんなでワーッと走り回るときに、端っこのほうでずっと座っている子がいると、つい気になって見ていました。
だいすけおにいさん:そういう子は、そのあとに降ってくる予定の風船が上にセットされているんですけど、それを見ていることが多いんですよ。だから、ただ座っているわけじゃなくて、風船が落ちてくるのを頑張って待ってくれている子なんです。
――そうなんですか! あれだけたくさんの子どもたちがいても、1人ひとりが何を見ているかまで把握されていたのがすごいです。
だいすけおにいさん:やっぱり40数人いるので、ケンカしたり事故が起きたりしないように、うたのおにいさん、おねえさん、体操のおにいさん、おねえさんでアイコンタクトをしながら気をくばるようにしていましたね。
――『妖怪の子預かります』では、弥助がだんだんと妖怪の子どもたちのタイプに応じて対応の仕方を工夫していましたが、子どもたちと接するなかでそうしたノウハウがたまっていく感覚はありましたか?
だいすけおにいさん:なんとなくはありました。でも、「こうすれば大丈夫だろう」って思っていたのに、全然違う反応になっちゃうこともあって。たとえば天候によっても子どもたちの反応は違いますしね。やっぱり雨が降るとスタジオに入るまでにバタバタしてしまうし、やっぱり普段どれだけ元気な子でもやっぱりグズグズしちゃうのは仕方ない。だから、やっぱり「コレをすれば大丈夫」みたいなのは、子ども相手にはそう簡単にはいかないですよね。
日常では味わえない体験を想像させてくれるのが、本のいいところ
――だいすけおにいさんは妖怪の子を預かることはできそうですか?だいすけおにいさん:預かってみたいですね。それこそ僕はもう小さいころから『ゲゲゲの鬼太郎』が大好きだったので。妖怪とか都市伝説上の生き物とか幻的なものはどうしても知りたくなっちゃう。
――それで言うと、“かぞえてんぐ”さんには会うことができましたね。
だいすけおにいさん:そうですね。おかげさまで親友になることができました! かぞえてんぐさんと友だちになってから「てんぐ」と聞くたびにものすごく親しみを感じるようになって。まるで他人とは思えないくらい(笑)。法螺貝の音とか聞くと、すごく懐かしい気持ちになります。
――(笑)。かぞえてんぐさんにもお子さんはいらっしゃるんでしょうか?
だいすけおにいさん:いると思いますよ、かぞえ子てんぐが。初めてお会いしたときにはまだ子どもはいなかったようですが。あれから世界中を数える旅に出ているようで、僕もしばらく会えていないんですけど、ぜひ今度はかぞえ子てんぐといっしょに会ってみたいですね。
――もともとは大人向けに書かれていたという本作ですが、その点はどう感じられましたか?
だいすけおにいさん:それを知って「なるほどな」と思いました。大人の僕が読んでも、スッと本の世界に入ることができたのは、表現が子どもっぽ過ぎなかったからかな、と。とはいえ、難しい言葉がいっぱい出てくるわけではないので、子どもたちも読んでいくうちに「こういう意味か」ってわかる。親御さんに聞いてもいいですしね。子どもたちにとってたくさんの言葉にふれる機会ってすごく大事なことだと思っているので、そういう役割も果たしてくれる本になっているように感じます。
――だいすけおにいさんは子どものころ本を読むのはお好きでしたか?
だいすけおにいさん:はい。小さいころは親に勧められて伝記なども読んできましたが、ハマったのはファンタジー系ですね。『指輪物語』『はてしない物語』『ハリー・ポッター』……想像する楽しさが本にはすごくあると思っていて。本を読むと日常では味わえない体験を想像させてくれる。妖怪も伝説は残っていてもやっぱりいつでも誰でも見られるものではないじゃないですか。だから、この本も「こういう妖怪がいたら楽しいな」とか「本当にいるんじゃないかな?」って想像させてくれるところが大好きです。
絵本や図鑑が好きなお友だちなら、きっとハマってくれるはず!
――では、ズバリどんなお子さんにこの本をおすすめしたいですか?だいすけおにいさん:もちろんみんなに読んでほしいなとは思うんですけど、なかでも絵本が好きなお友だちとの相性がいいのかなって感じました。みんな絵本を読んで、少しずつ活字の多い本を読むようになっていくと思うんですけど、絵本が好きな子って絵の中から物語を自分で想像して膨らませていく力がついていると思うんです。なので、絵本好きなお友だちが小学校に上がって本に触れていく中で手に取ってもらいたいですね。
あとは、やっぱり妖怪好きな子ですね! いろんな妖怪が次々に出てくるから絶対に楽しいはず。そういう意味では電車とか車とか恐竜とか図鑑を見るのが好きな子もハマってくれるんじゃないかなと思います。
――読み進めるほどにコレクションが増えていく感覚がありますもんね。
だいすけおにいさん:そうなんです。妖怪ってもともとは人間を脅かすとか、怖いみたいなイメージが強いと思うんですけど、この本に出てくる妖怪たちはいい人もいればそうじゃない人もいて。世の中にいろんな考えを持っている人がいるんだよっていうのを学ぶのにも、ちょうどいいんじゃないかなと思います。
――弥助も個性の強い妖怪たちと触れ合ううちにどんどん成長していきます。
だいすけおにいさん:子どもたちも小学校にあがったりクラスが変わったりと、大きくなるにつれて環境はいろいろと変化していくわけじゃないですか。そのたびにいろいろな人たちと出会っていくと思うんです。そういうところで弥助のように、ぶつかってもがきながらも周りと協力して、活路を見出していく大切さを知っていてほしいなって。何かを乗り越えていく力っていうのが、この本から学べると思うので。
――弥助が妖怪の子を預かるきっかけは、うぶめの石を割ってしまうという「失敗」でした。
だいすけおにいさん:そこもこの本が描いている素敵なところですよね。妖怪たちも最初こそ怒っていますが、弥助が子どもを預かってくれるなら、それで「いいよ」って。誰も責め続けることはしない。現代社会では一度失敗するとなかなか許されないというか。だから絶対失敗したくないって、どんどん縮こまっちゃう。もちろん、誰しも失敗したくないと思うんですけど、投げ出しちゃうのはもったいないですよね。
弥助も大きな失敗を最初にしてしまうけれども、小さな成功を重ねつつ挽回していく。また壁にぶつかったときには、周りに助けてくれる誰かがいる。だから、「まずは一生懸命やってごらん、大丈夫だから」「間違ってもいいし、失敗してもいいんだよ」「今は目に見えなくても、キミのまわりには助けてくれる人がかならずいるから」っていうメッセージがあるように僕は思いました。