「描く」技術以上に重要なのは「売る」技術? 大人気イラストレーターIxyが語る、プロとして生きる心得

Ixyが語るプロイラストレーターの心得

人気イラストレーター、初の著書が話題に

 Xのフォロワー75万人の人気イラストレーターのIxyが、初の単行本を出版する。『それでイラストで食べていけるの? プロはみんな気づいている 稼ぐための考え方』(MUGENUP/刊)と、なかなか刺激的なタイトルだが、イラストレーター志望者はもちろんのこと、フリーランスとして仕事をしたい人なら必読の興味深い内容になっている。

 本書はイラストレーターが執筆したイラストの本であるが、“イラストを描く技術”について一切扱っていない唯一の本かもしれない。Ixyが「イラストレーターにとって、イラストを売る技術はイラストを描く技術より重要であると考えている」と説くように、イラストでご飯を食べる方法、すなわちお金を稼ぐ方法を手ほどきした内容になっている。

 イラストレーターという仕事は、実態がいまいちわかりにくい。というのも、ネットで検索しても原稿料などの具体的な数字は出てこないし、どのように仕事を受けて、ギャラをもらっているのか、とにかくわからないことが多いためである。漫画家やアニメーター以上に、ヴェールに包まれている部分が多いかもしれない。

 また、イラストレーターという職業を何か特殊な仕事と考えている人は多い。持って生まれた才能がなければ生きていくことができない、と思われがちだ。もちろん、特別な才能で仕事を得たプロもなかにはいるが、大半のイラストレーターに求められるスキルは普通の業種となんら変わらない。自営業でお金を稼いでいる人なら、誰しもが実践していることなのだ。

『それでイラストで食べていけるの? プロはみんな気づいている 稼ぐための考え方』(Ixy/著、MUGENUP/刊)。さいとうなおきが推薦文を寄せている。

イラストを売る技術は、描くこと以上に大事

 Ixyによると、多くのイラストレーター志望者は「絵の技術が高かったりセンスがよかったりするイラストレーターの絵こそがお金になる」と考える傾向があるという。そうした志望者に対し、Ixyは、「描く技術も重要なことは間違いありません」と念を押しつつ、「自分の描いたものや自分自身についてアピールする工夫や技術が必要」と力説する。

 また、「仕事をくれた依頼者の要望を汲み取ることやそれに沿った絵を描くこと」「納品スケジュールの相談やギャランティーの交渉に関する技術」も大切と説く。実は、イラストレーターに限らず、フリーランスには交渉事を苦手とする人が非常に多い。ということは、交渉事が得意な人は、多少絵の技術がイマイチでもプロになれる可能性が大いにあるのだ。

 Ixyが「イラストを描く技術はプロイラストレーターに求められる能力の一つに過ぎない」と述べるように、いわゆる“神絵師”ほどの画力がなくてもイラストで食べている人は、記者の周りに何人もいる。無茶ぶりに応えてくれるとか、締切を確実に守ってくれる人は筆頭格で、SNSでは知名度がまったくないが、収入は有名イラストレーター以上かもしれない。

 今回のIxyの本は、イラストレーターは言うに及ばず、フリーランスになりたいと思っている人は必見の一冊である。この本に書かれている通りに実践すれば、大抵のフリーランスはある程度の収入を確保できるのではないか、とすら思えるほどだ。最後に、今回の本の出版に至った経緯について、Ixyにインタビューを行ったので紹介したい。

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