孫家邦はなぜ坂元裕二と映画を作ったのか “遠いところまで来てしまった”『片思い世界』
『花束みたいな恋をした』(2021年)の脚本家・坂元裕二と土井裕泰監督が再びコンビを組んだ『片思い世界』が現在、全国劇場で公開中…
ポン・ジュノによるマルチバース的全能感の批判的検証 『ミッキー17』で“取り戻す”第一歩
『パラサイト 半地下の家族』(2019年)に『グエムル 漢江の怪物』(2006年)を接ぎ木したポン・ジュノの現在形、それが彼の新…
坂元裕二でも免れることのできない掟 『ファーストキス 1ST KISS』にみる“マルチバースの病”
長年にわたりTBSドラマを中心に主軸ディレクターとして鳴らし、近年は『ラストマイル』(2024年)、『グランメゾン・パリ』(20…
接点のない2つの世界を調合する 『オークション』パスカル・ボニゼール監督が語る思惑
このたび、フランスの映画作家パスカル・ボニゼールにインタビューする機会に恵まれた。パスカル・ボニゼールといえば、とにもかくにもヌ…
荻野洋一の「2024年 年間ベスト映画TOP10」 ハリウッド衰退のはざまで失われた欠片を再発掘
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2024年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』に貫徹された破滅的な試み “上下巻”だから描けたもの
※本記事はネタバレを一部含みます。鑑賞前の方はどうぞご注意ください。 『ジョーカー:フォリ・ア・ドゥ』をめぐる一連のネガ…
ラウールは日本映画の閉塞性を打破するメルクマールになる 若きカリスマが放つもの
「ラウール」という男子名は世界的な見地から量るなら、一にも二にもラウール・ゴンサレス・ブランコのことを指す。元スペイン代表のフッ…
アラン・ドロン最大の特徴は“二重性”だった 日本で愛された理由を映画評論家に聞く
俳優アラン・ドロンが88歳で逝去した。映画ファンであれば確実に、映画ファンではなくとも、その出演作を観たことがなくても、「アラン…
『ホールドオーバーズ』はアレクサンダー・ペインの“リベンジ”作 “図らずも”の作法
タイトル「ホールドオーバーズ(原題:The Holdovers)」とは、「残留者」「遺物」「繰り越し」という意味である。時は19…
“客人”の映画作家ヴィム・ヴェンダース “スランプ”を経て『PERFECT DAYS』に至るまで
ヴィム・ヴェンダース監督が100%日本資本のもと全編東京ロケを敢行した『PERFECT DAYS』(2023年)が、日本映画とし…
荻野洋一の「2023年 年間ベスト映画TOP10」 1位から4位までを女性監督が占める
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2023年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』マーティン・スコセッシの試みにリスペクトの拍手
映画にしろ、小説にしろ、サイコパスによる血なま臭い凶悪事件はたいていの場合、近代の大都市の片隅でおこなわれる傾向がある。歪みきっ…
『ザ・ホエール』の忘れられるべきではない一面 メイキングが照らし出すもうひとつの愛
人は死ぬ間際まで愛を求める。たとえ最愛の人に先立たれて絶望の淵にあり、さらには自分の病状も悪化の一途をたどり、死に瀕しているとし…
『ナチスに仕掛けたチェスゲーム』の“悪夢”こそ映画の存続価値か? 現代への凄惨な耳打ち
64マスの市松模様で区切られた四辺形。この小さな平面上で起こる事柄が、あたかも激動の近現代史そのものを映しているかのようである。…
荻野洋一の「2022年 年間ベスト映画TOP10」 「映画だけが……」とゴダールがつぶやく
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2022年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』に刻まれた“3つの進化”
アメリカ映画なのにアメリカは蚊帳の外である。ブラックパンサーはアフリカの秘境で高度な科学技術をもつ架空の王国ワカンダの王であり、…
『エルヴィス』バズ・ラーマン劇場と化したプレスリー伝 トム・ハンクスの必見の怪演も
エルヴィス・プレスリーにとって歌とは「赤い靴」だ。アンデルセン童話で貧しい少女が履く赤い靴は、貴族令嬢がサイズ違いで売れ残った「…
『トップガン マーヴェリック』失った命に想いを馳せて アメリカ映画そのものの旋回と反復
『トップガン』(1986年)の監督トニー・スコットが2012年に自死したとき、同作の続編企画はこれでもうダメになったと誰もが思っ…
このロシア映画を観よ 『インフル病みのペトロフ家』から戦争予言作『ドンバス』まで
人類最大の脅威は、戦争と疫病である。太古の時代からこの2つの災厄によって人類は痛めつけられ、人口を激減させ、それでもなんとか命脈…
巨匠A・コンチャロフスキー、最新作『親愛なる同志たちへ』、そしてウクライナ侵攻を語る
アンドレイ・コンチャロフスキー監督(84歳)。黒澤明の原案に基づく『暴走機関車』(1985年)や、シルヴェスター・スタローン主演…
追悼・青山真治監督 偉大な同時代作家との出会いと別れ
まだ57歳だというのに青山真治がこの世を去ってしまった。畏友の追悼文を書かねばならぬこの運命を、ただ呆然として呪うことしかできな…
のん、表現者としての不屈の抵抗 監督作『Ribbon』に込めた切実な思い
のん監督・主演の最新作『Ribbon』は、パンデミックによる人間活動の停止そのものを直截的に描いた映画である。コロナ禍が始まった…
荻野洋一の「2021年 年間ベスト映画TOP10」 登場人物と私たち自身の今が接続/浸透
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2021年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
ヘッドバンギングする聖少女 『ジャネット』『ジャンヌ』『裁かるゝジャンヌ』を見比べて
この冬、フランスの聖少女ジャンヌ・ダルク(1412年?~1431年)を主人公とする映画が、立て続けに3本も公開されることになった…
『チック、チック…ブーン!』と鳴動する秒針と大爆発は何をふっとばす?
Netflix映画『tick, tick... BOOM!:チック、チック…ブーン!』――この魅惑的なタイトルはどこから生まれ、…
Netflix『THE GUILTY/ギルティ』は2020/21年という時代を不気味に象徴している
『THE GUILTY/ギルティ』は、911番(日本の110番&119番に相当する緊急ダイヤル)のオペレーターを演じる主演のジェ…
濱口竜介監督の圧倒的な一作 『ドライブ・マイ・カー』という主語なきフレーズが示すもの
『ドライブ・マイ・カー』は、今年7月のカンヌ国際映画祭で脚本賞ほか4冠に輝いた。日本映画史上まれな快挙だが、壇上で受賞スピーチに…
密集・密接・密着を讃美する奇跡の大作 愛すべき人の体温を思い出す『イン・ザ・ハイツ』
いま全世界は隔離の時代にある。3密(密閉・密集・密接)を避け、フィジカル・ディスタンシングは人類共通の合言葉となった。だからこそ…
“映画監督”土井裕泰の作家性 『花束みたいな恋をした』が描く“特別なことではない時間”
「坂元裕二さんのシナリオが素晴らしい言葉に溢れていたので、私から特別なことは付け加えなくていい、と思いながら作りました」 2…
池松壮亮が歩む映画旅 “沈黙”の2020年から、2021年『アジアの天使』『柳川』への期待
池松「僕自身にとってはすごく難しい役でしたね。まず脚本を読んだときに、恐ろしく優しい男だなと思ったんです。石井(裕也)さんが池松…
『ワンダーウーマン 1984』にみるアメリカ近現代史 “ヘスティアの縄”が果たす重要な役割
DCコミックスが誇る女性スーパーヒーロー、ワンダーウーマンのコミック雑誌デビューから70年以上経ってようやく実写による単独主演映…
年末企画:荻野洋一の「2020年 年間ベスト映画TOP10」 すべてが転覆可能な天/地にほかならない
リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2020年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…
ロドリゴ・ソロゴイェン監督が突きつける“喪失” 『おもかげ』が描く悲しみからの再生
始めに恐ろしい事件が起こる。映画開始から私たち観客は異常なパニックへと持っていかれる。ワンシーン=ワンカットで撮られたファースト…
細く長く引き伸ばされるヒコウキ雲のように 人々を魅了し続けるイザベル・ユペールの輝き
フェルメールの絵筆がひとりの女性を、薄暗い室内から静かに浮き上がらせる。彼女は窓外にまなざしを送る。誰かのことを思いつめて夜を明…