『マッサン』から『ばけばけ』まで “シャロやん”シャーロット・ケイト・フォックの歩み

NHK連続テレビ小説『ばけばけ』(2025年度後期)で、物語の流れに新しい風を入れてくるのが、シャーロット・ケイト・フォックス演じるイライザ・ベルズランドだ。アメリカで活躍する女性記者で、ヘブン(トミー・バストウ)の同僚でもある。彼に日本行きを勧めた“導き手”として、ここから物語の核に関わっていく役どころであり、シャーロット本人も「これまであまり演じたことがなかったような役」と語っている(※1)。

シャーロット・ケイト・フォックスと聞いて、多くの人が思い浮かべるのは、朝ドラ『マッサン』(2014年度後期)だろう。朝ドラ初の外国人ヒロインとして抜擢された彼女は、亀山政春(玉山鉄二)の妻・亀山エリーを演じ、日本で暮らす日々の喜びや戸惑いを、1年かけて丁寧に積み重ねていった。異国で暮らすことは、言葉や習慣の違いだけでなく、周囲との距離の取り方ひとつにも悩みがつきまとう。それでもエリーは、立ち止まるのではなく、少しずつ言葉を覚え、人との関係を築き直しながら、この場所で生きる選択を続ける。視聴者が心を動かされたのは、国際結婚のドラマというより、分からない土地で暮らしを築いていく人のリアリティだった。
そのリアリティを支えたのが身体の使い方だ。日本語が完璧に滑らかでない場面も、エリーが必死に言葉をつかもうとする姿と自然につながっていた。だからこそ、少したどたどしく聞こえる瞬間さえ、弱さではなく、気持ちの切実さとして届く。朝ドラが得意としてきた成長の物語に、異文化の戸惑いや学びの積み重ねが重なり、エリーの一歩一歩が物語を前へ進める力になっていった。
『マッサン』以降も、シャーロットは日本国内で出演作を重ねてきた。朝ドラ『べっぴんさん』(2016年度後期)では、ヒロインのすみれ(芳根京子)が子ども服作りを始めるきっかけを与えるエイミー・マクレガー役で登場し、朝ドラの世界の中で価値観を受け渡す役割を担った。さらに『ドクターX〜外科医・大門未知子〜』(2012年〜/テレビ朝日系)では、世界レベルの腕を持つ外科医ナナーシャとしてゲスト出演。献身的な妻というイメージとは違い、プロとしての矜持と倫理を背負う人物として存在感を放った。NHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺〜』で演じた大森安仁子(アニー・バロウズ・シェプリー)も、厳しさと愛情が同居する教育者で、文化の違いを教える側の責任として引き受ける役どころだった。





















