荻野洋一の『マチルド、翼を広げ』評

『マチルド、翼を広げ』は“親子関係”についての認識を更新する 女性監督が描く9歳の少女の自立

フランスの女性監督ノエミ・ルヴォウスキーの最新作『マチルド、翼を広げ』を見ることは、母と娘の関係について、親子というどこにでもあ…

荻野洋一の「2018年映画TOP10」

年末企画:荻野洋一の「2018年 年間ベスト映画TOP10」 映画は失踪し、時には運よく再発見される

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

荻野洋一の『きみの鳥はうたえる』評

三宅唱は“いつまでも続かない青春”をどう描いた? 『きみの鳥はうたえる』のただならぬ緊張感

主人公は、ただ単に「僕」。そしてその「僕」(柄本佑)のルームメイトが静雄(染谷将太)で、ふたりの間に飛び込んでくるのが佐知子(石…

荻野洋一の『ウインド・リバー』評

新たな“現代西部劇”創出の予感 『ウインド・リバー』が描く苦痛に満ちた西部史

『ウインド・リバー』というきわめて地味な、だが孤高の美しさと悲しみをたたえたこの聡明なアメリカ映画は、現代にはたして西部劇は成立…

荻野洋一の『菊とギロチン』評

瀬々敬久×相澤虎之助が生み出した“化け物映画” 『菊とギロチン』が描く民衆の鼓動

化け物的な映画を観る、化け物と対峙するというのは、なんと美しい体験なのだろう。音楽、美術、演劇、あらゆるジャンルに化け物的な作品…

荻野洋一の『パンク侍、斬られて候』評

宮藤官九郎×石井岳龍が生み出した荒唐無稽な愉悦感 『パンク侍、斬られて候』に映る私たちの姿

町田康の荒唐無稽な時代小説を、クドカンがシナリオ化し、石井岳龍が監督する。製作者はアクの強いこの3人をよくぞ集めたものだ。そして…

荻野洋一の『家族はつらいよIII』評

山田洋次の“総括”は正しかったのか? 『妻よ薔薇のように』から感じる日本映画史の皮肉

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』は、今年87歳を迎える巨匠・山田洋次監督の86作目だが、このタイトルは日本映画史上の名…

荻野洋一の『ゲティ家の身代金』評

リドリー・スコットがアメリカ映画を退廃させた? 荻野洋一の『ゲティ家の身代金』評

監督デビュー前のゴダールは、批評家として週刊誌『アール』に次のように書いた。「イギリス映画についてなにか言うべきことを見つけ出す…

荻野洋一の『ラブレス』評

ベルイマン映画に重なる“交わらない視線” 『ラブレス』が提示する、映画の残酷さと凄絶さ

ノンフィクションではあるまいし、これほど凄絶な悲劇はそうはないのではないか。かつてイギリスの劇作家シェイクスピアがあえて露悪さを…

荻野洋一の『ワンダーストラック』評

『キャロル』は手法上のリハーサル? 『ワンダーストラック』は混乱しつつ、なおかつ透明たりうる

トッド・ヘインズ監督の前作『キャロル』は素晴らしい映画だったけれども、新作『ワンダーストラック』を前にした今、『キャロル』は『ワ…

荻野洋一の『ブラックパンサー』評

荻野洋一の『ブラックパンサー』評:普通の映画であることによって革命的作品に 

この映画にはメッセージはない。あるとすればただひとつ、「われは黒人」という一点が身体言語によって執拗にくり返されている。アメリカ…

荻野洋一の『8年越しの花嫁』評

『8年越しの花嫁』は安直な“メディア商品”ではないーー作り手たちが紡いだ愛のメタファーの反復

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』のクリスマス&新春興行が絶好調である。TBS幹事の難病+結婚式ムービーとしては8年前に『余命1ヶ月…

荻野洋一の「2017年ベスト映画TOP10」

年末企画:荻野洋一の「2017年 年間ベスト映画TOP10」 映画それじたいを擁護していきたい

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

荻野洋一の『ネルーダ』評

『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』は複雑かつ美しいーーパブロ・ララインが描く鋭利なるミステリー

芸術、とりわけ映画にあって複雑であることは、その質を保証しない。あれこれとクドクド説明にいそがしい映画ほど醜いものはない。映画は…

荻野洋一の『マイティ・ソー』評

“ユニバース”過剰時代における、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の役割

『マイティ・ソー バトルロイヤル』の魅力とは何だろう? アイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、ガーディアンズ・オブ・ギャラ…

荻野洋一の『奥田民生~』評

荻野洋一の『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』評:男だって水原希子を目指すべきだ 

私たち観客は、“出会う男すべて狂わせるガール” である水原希子に対し、頭(こうべ)を垂れて、この合言葉を言わなければならない。「…

荻野洋一の『ワンダーウーマン』評

ガル・ガドットという“スター誕生”の瞬間 『ワンダーウーマン』が映し出す現代映像のありよう

『ワンダーウーマン』が世界的にブームとなり、女性スーパーヒーロー映画では歴史的な成功作となった。主人公ダイアナ/ワンダーウーマン…

荻野洋一の『スパイダーマン』評

“ユニバース系”が『スパイダーマン:ホームカミング』にもたらした光と影 

今年の初夏以降のアメコミ系映画の勢いが怖ろしいことになっている。6月に『X-MEN』の渋いスピンオフ『LOGAN/ローガン』が日…

荻野洋一の『ザ・マミー』評

“ユニバース”全盛時代となったハリウッド映画の行き先は? 荻野洋一の『ザ・マミー』評

よせばいいのに高校生のキャンプはたいてい、一組のカップルだけで乳繰り合うために夜の森へ消えていく。よせばいいのにコソ泥グループは…

荻野洋一の『LOGAN/ローガン』評

荻野洋一の『LOGAN/ローガン』評:スーパーヒーローが死滅した近未来のディストピア

ミュージカル映画のヒット作『レ・ミゼラブル』(2012)における主人公ジャン・バルジャン役の熱演を見た時、ヒュー・ジャックマンの…

荻野洋一の『夜空はいつでも〜』評

荻野洋一の『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』評 絶望の浄化の先にあるもの

“きみがかわいそうだと思っているきみ自身を、誰も愛さないあいだ、きみはきっと世界を嫌いでいい。そしてだからこそ、この星に、恋愛な…

荻野洋一の『イップマン』評

荻野洋一の『イップ・マン 継承』評 ドニー・イェンの稽古場面には批評無効作用がある

『イップ・マン 継承』は甄子丹(ドニー・イェン)による、甄子丹のための映画である。つまり、この現代香港映画界最高のスターの動き、…

荻野洋一の『ジャッキー』評

荻野洋一の『ジャッキー』評:女性の一代記にせず、“倒錯の儀式”を描いた潔さ

ケネディ大統領暗殺事件(1963年)当時の状況、そしてジャクリーン夫人の動向をたどりつつ、にわかには納得しがたいような、とてつも…