荻野洋一の『わたしの若草物語』評

『ストーリー・オブ・マイライフ』が描く生と死の円環 疾走し続ける4姉妹のきらめき

“Write something for me.”  ーー私のために何か書いて。  数年にわたる闘病の末、ついにみずからの死を…

荻野洋一の『タイガーテール』評

Netflix『タイガーテール』の味わい深いキャスティングと選曲 愛惜と憧憬がにじみ出る物語に

『タイガーテール -ある家族の記憶-』はアメリカ本国での劇場公開がパンデミックのために中止され、Netflix配信のみとなった。…

荻野洋一の『ブロー・ザ・マン・ダウン 』評

『ブロー・ザ・マン・ダウン』が描く、穏やかな狂気の危うさ 女性共同監督の野心的意図を読む

蟄居(ちっきょ)生活が続くなか、劇場で新作映画を観ることのできない世界中の観客がネット配信を通じて映画を観ている。この3月下旬に…

荻野洋一の『リチャード・ジュエル』評

『リチャード・ジュエル』が誘う終わりのない問い イーストウッドの“悪意”を受け考えるべきこと

私たち現代観客は『リチャード・ジュエル』というアメリカ映画をどのように見たらよいのだろうか。一見シンプルなテーマを持ち、ひょっと…

荻野洋一の「2019年映画TOP10」

年末企画:荻野洋一の「2019年 年間ベスト映画TOP10」 多くの女性監督が充実した作品を発表

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2019年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

ディズニーによる自己批判『マレフィセント2』

『マレフィセント2』はディズニーアニメに対する自己批判だ ヴィラン相対化時代に描かれたもの

現代映画──とくにハリウッド映画界では、知名度の高いヴィラン(悪役)を主役に昇格させ、彼らの側に寄り添ったスピンオフ映画の製作が…

『ある船頭の話』の現代社会への問い

オダギリジョーの“わがままでぜいたくな”一作 『ある船頭の話』に込められた現代社会への問い

俳優のオダギリジョーが、自身初の長編監督作『ある船頭の話』を完成させた。「俳優をやりながら片手間に監督業に手を出していると思われ…

『アス』は地球最大の革命についての映画だ

『アス』は地球最大の革命についての映画だ ジョーダン・ピール監督から観客への“死刑宣告”

『ブラックパンサー』(2018)が生まれたすぐ後に『アス』のような新種の映画が生まれてくるのは、現代映画の歴史的必然だといえる。…

荻野洋一の『アルキメデスの大戦』評

菅田将暉が演じた主人公は山崎貴の“自画像”だ 『アルキメデスの大戦』が描く倒錯した唯美史観

山崎貴という作り手を、後世の人はいったいどのように評することになるのだろうか? 彼は今や日本を代表するヒットメイカーとなり、多く…

荻野洋一の『COLD WAR』評

人生なんて88分もあればじゅうぶんだーー『COLD WAR あの歌、2つの心』が描く愛と絶望

わずか88分の上映時間のうちに、悠遠たる人生の有為転変が、まるごと入っている。私たちは決して長くはない時間を劇場の暗闇で過ごし、…

荻野洋一の『まく子』評

“児童映画”の系譜を汲む愛すべき一作 鶴岡慧子監督が挑んだ西加奈子『まく子』の映画化

「子ども?」という意味不明な問いが、やぶからぼうに頭上から降ってくる。小学5年生の3学期。11歳の少年サトシが、同じ11歳の少女…

荻野洋一の『マチルド、翼を広げ』評

『マチルド、翼を広げ』は“親子関係”についての認識を更新する 女性監督が描く9歳の少女の自立

フランスの女性監督ノエミ・ルヴォウスキーの最新作『マチルド、翼を広げ』を見ることは、母と娘の関係について、親子というどこにでもあ…

荻野洋一の「2018年映画TOP10」

年末企画:荻野洋一の「2018年 年間ベスト映画TOP10」 映画は失踪し、時には運よく再発見される

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2018年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

荻野洋一の『きみの鳥はうたえる』評

三宅唱は“いつまでも続かない青春”をどう描いた? 『きみの鳥はうたえる』のただならぬ緊張感

主人公は、ただ単に「僕」。そしてその「僕」(柄本佑)のルームメイトが静雄(染谷将太)で、ふたりの間に飛び込んでくるのが佐知子(石…

荻野洋一『インクレディブル・ファミリー』評

ピクサーの面目躍如は『インクレディブル・ファミリー』ジャック・ジャックの存在にあり?

ピクサー社アニメの魅力は、なんといっても「擬人化」ということだと思う。虫の社会もウディ・アレン映画のように世知辛いのだな(『バグ…

荻野洋一の『ウインド・リバー』評

新たな“現代西部劇”創出の予感 『ウインド・リバー』が描く苦痛に満ちた西部史

『ウインド・リバー』というきわめて地味な、だが孤高の美しさと悲しみをたたえたこの聡明なアメリカ映画は、現代にはたして西部劇は成立…

荻野洋一の『菊とギロチン』評

瀬々敬久×相澤虎之助が生み出した“化け物映画” 『菊とギロチン』が描く民衆の鼓動

化け物的な映画を観る、化け物と対峙するというのは、なんと美しい体験なのだろう。音楽、美術、演劇、あらゆるジャンルに化け物的な作品…

荻野洋一の『パンク侍、斬られて候』評

宮藤官九郎×石井岳龍が生み出した荒唐無稽な愉悦感 『パンク侍、斬られて候』に映る私たちの姿

町田康の荒唐無稽な時代小説を、クドカンがシナリオ化し、石井岳龍が監督する。製作者はアクの強いこの3人をよくぞ集めたものだ。そして…

荻野洋一の『家族はつらいよIII』評

山田洋次の“総括”は正しかったのか? 『妻よ薔薇のように』から感じる日本映画史の皮肉

『妻よ薔薇のように 家族はつらいよIII』は、今年87歳を迎える巨匠・山田洋次監督の86作目だが、このタイトルは日本映画史上の名…

荻野洋一の『ゲティ家の身代金』評

リドリー・スコットがアメリカ映画を退廃させた? 荻野洋一の『ゲティ家の身代金』評

監督デビュー前のゴダールは、批評家として週刊誌『アール』に次のように書いた。「イギリス映画についてなにか言うべきことを見つけ出す…

荻野洋一の『ラブレス』評

ベルイマン映画に重なる“交わらない視線” 『ラブレス』が提示する、映画の残酷さと凄絶さ

ノンフィクションではあるまいし、これほど凄絶な悲劇はそうはないのではないか。かつてイギリスの劇作家シェイクスピアがあえて露悪さを…

荻野洋一の『ワンダーストラック』評

『キャロル』は手法上のリハーサル? 『ワンダーストラック』は混乱しつつ、なおかつ透明たりうる

トッド・ヘインズ監督の前作『キャロル』は素晴らしい映画だったけれども、新作『ワンダーストラック』を前にした今、『キャロル』は『ワ…

荻野洋一の『ブラックパンサー』評

荻野洋一の『ブラックパンサー』評:普通の映画であることによって革命的作品に 

この映画にはメッセージはない。あるとすればただひとつ、「われは黒人」という一点が身体言語によって執拗にくり返されている。アメリカ…

荻野洋一の『8年越しの花嫁』評

『8年越しの花嫁』は安直な“メディア商品”ではないーー作り手たちが紡いだ愛のメタファーの反復

『8年越しの花嫁 奇跡の実話』のクリスマス&新春興行が絶好調である。TBS幹事の難病+結婚式ムービーとしては8年前に『余命1ヶ月…

荻野洋一の「2017年ベスト映画TOP10」

年末企画:荻野洋一の「2017年 年間ベスト映画TOP10」 映画それじたいを擁護していきたい

リアルサウンド映画部のレギュラー執筆陣が、年末まで日替わりで発表する2017年の年間ベスト企画。映画、国内ドラマ、海外ドラマ、ア…

荻野洋一の『ネルーダ』評

『ネルーダ 大いなる愛の逃亡者』は複雑かつ美しいーーパブロ・ララインが描く鋭利なるミステリー

芸術、とりわけ映画にあって複雑であることは、その質を保証しない。あれこれとクドクド説明にいそがしい映画ほど醜いものはない。映画は…

荻野洋一の『マイティ・ソー』評

“ユニバース”過剰時代における、『マイティ・ソー バトルロイヤル』の役割

『マイティ・ソー バトルロイヤル』の魅力とは何だろう? アイアンマン、ハルク、キャプテン・アメリカ、ガーディアンズ・オブ・ギャラ…

荻野洋一の『奥田民生~』評

荻野洋一の『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』評:男だって水原希子を目指すべきだ 

私たち観客は、“出会う男すべて狂わせるガール” である水原希子に対し、頭(こうべ)を垂れて、この合言葉を言わなければならない。「…