押井守『攻殻機動隊』が多くの映像作品に与えた影響 IMAX上映決定を機に解説
アニメ演出家・押井守の代表作として知られる『GHOST IN THE SHELL/攻殻機動隊』(1995年/以下『GHOST IN THE SHELL』)は、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』を原作としたアニメ映画であるが、アニメ化にあたって士郎正宗が「漫画にとらわれないで作ってほしい」と伝えたことから、原作とは細かい部分で相違点があり、難解な長台詞を含めて押井守の作家性が色濃く出た仕上がりとなっている。日本で劇場公開されたあと、海外(特にアメリカ)での好評ぶりを受けて、日本でも再評価と共に本作を熱烈に支持する文化人やクリエイターも増えている。そして初公開から26年の時を経た2021年9月、この作品の4Kリマスター版がIMAXで日米同時公開される運びとなった。
映画『GHOST IN THE SHELL』は近未来を舞台に、サイバー犯罪やテロリズムの抑制に対抗すべく組織された秘密部隊「公安9課」、俗称・攻殻機動隊のメンバーの活躍を描く物語で、脳と脊髄の一部以外を全身義体化(サイボーグ化)した所属メンバー・草薙素子を主人公としている。映画の大筋は原作コミックス1巻の内容がベースで、人形使いと呼ばれるハッカーと公安9課チームの攻防戦が主軸になる。とはいえ、前述の通り原作漫画と異なる部分が多く、特に素子は表情豊かな原作版からストイックでクールな性格に変更されている。
本作は電脳世界のビジュアルや、首筋の穴にケーブルを繋いでネットと精神を接続する描写、そして精神体だけがネットの海へダイブする見せ方が、ハリウッド映画をはじめ国内外のアニメなど多くの映像作品に影響を与えた。2008年には一部の新作カットとCGの追加、再アフレコ、音響面の刷新といった手を加えたリニューアル版『攻殻機動隊2.0』が劇場公開され、ソフト化もされている。
映画の成功によってアニメ版『攻殻機動隊』は監督とスタッフ、キャラクターデザインを変えながら拡張を続け、神山健治監督の『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』3シリーズ(2002年~2006年)、押井守監督自身による映画第1作の続編『イノセンス』(2004年)、黄瀬和哉総監督の『攻殻機動隊 ARISE』(2013年)と、その完全新作映画『攻殻機動隊 新劇場版』(2015年)、神山健治&荒牧伸志の共同監督でNetflix独占配信の『攻殻機動隊 SAC_2045』(2020年)と続いている。ちなみに2017年には『ゴースト・イン・ザ・シェル』のタイトルで製作されたアメリカの実写映画版が日本でも公開された。主人公の素子役は、今やマーベルヒーロー映画のブラック・ウィドウですっかりお馴染みのスカーレット・ヨハンソンが扮している。