『パン屋』『挿し木』に続くヒットなるか? 第24回このミス大賞受賞作に高まる期待感

第24回このミス大賞受賞作に高まる期待感

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 第174回 芥川龍之介賞・直木三十五賞(2025年下半期)の選考が1月14日に行われ、芥川賞は鳥山まこと『時の家』(講談社)と畠山丑雄『叫び』(新潮社)の2作、直木賞は嶋津輝『カフェーの帰り道』(東京創元社)が受賞作に決定した。前回の第173回(2025年上半期)が芥川賞・直木賞ともに「受賞作無し」という異例の結果になっただけに、第174回は例年以上の注目が集まった印象だった。2026年1月第2週(1月12日~1月18日)のオリコン文芸書ランキングでは第8位に嶋津輝『カフェーの帰り道』がランクインしている。受賞決定後の1月第2週半ばより各書店では大々的な展開を行っていると思うので、第3週以降の推移を引き続き見届けたい。

 さて、1月第2週は年明け発売の新刊にも注目作が多い。第3位の今野敏『分水─隠蔽捜査11─』(新潮社)は<隠蔽捜査>シリーズの最新長編だ。20年以上続く警察小説シリーズで、初登場で第3位にランクインする結果が根強い人気を改めて示している。

 1月新刊で最も言及すべき作品は犬丸幸平『最後の皇帝と謎解きを』(宝島社)だろう。第24回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞した、新人のデビュー作である。同作の詳しい内容や評については筆者が聞き手を務めたインタビュー(2026年『このミス』大賞受賞作『最後の皇帝と謎解きを』犬丸幸平インタビュー「歴史への拘りは何かしら表現していきたい」)や「杉江松恋の新鋭作家ハンティング」杉江松恋の新鋭作家ハンティング 第24回「このミス!」大賞受賞作『最後の皇帝と謎解きを』など、当サイトでもいくつか取り上げた記事があるので、そちらをご参照いただきたい。「このミステリーがすごい!」大賞は第23回の大賞受賞作である土屋うさぎの『謎の香りはパン屋から』(宝島社)が発売2か月で20万部を突破し、第23回の文庫グランプリ受賞作である松下龍之介の『一次元の挿し木』(宝島社文庫)が昨年末時点で50万部を超えるなど、ミステリ新人賞の受賞作として大きな話題を呼んでいた。

 それを受けての第24回受賞作ということで『最後の皇帝と謎解きを』への注目度は高かった。同作は“ラストエンペラー”こと愛新覚羅溥儀と日本人絵師の青年との交流を描きつつ、紫禁城内で起きる不可解な出来事の謎を解く歴史謎解きミステリになっている。思えば『謎の香りはパン屋から』はいわゆる“日常の謎”、『一次元の挿し木』は遺伝子学を物語に織り込んだスリラーと、そして今回の大賞受賞作における歴史ミステリと、それぞれミステリの方向性として全く異なるものが揃っている印象だ。このような「何が飛び出してくるのか分からない」面白さも、「このミステリーがすごい!」大賞への読者の期待感を高める一因にもなっているのだろう。「このミステリーがすごい!」大賞は2002年の創設から既に20年以上の歴史を誇る小説新人賞になっているが、ジャンルの幅広さを示し続けている点で日本ミステリに果たしている役割は未だに大きいものがある。

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