【文芸書ランキング】『変な地図』『失われた貌』『殺し屋の営業術』……多様なミステリ作品がランクイン

オリコン週間文芸書ランキング
2025年12月第5週、つまり25年12月29日~26年1月4日におけるオリコン文芸書ランキングは、昨年の文芸作品の状況を総攬できるような結果になった。
第1位は雨穴の『変な地図』(双葉社)。発売から2ヶ月が経っても売れ行きは伸びているようで現時点では累計70万部を突破しているとのこと。シリーズの中では正統的な謎解きミステリの要素に最も近い作品であることは以前このコーナーで触れた。同作の読者には小学生も多いようなので、同作をきっかけに謎解きの魅力に触れる低年齢層もいるのだろう。
このほかに宮島未奈の〈成瀬〉シリーズや、話題の文芸誌『GOAT』の第3号がランクインするなど、当コーナーで紹介した昨年の人気作品が勢揃いしている。
ふだんミステリを中心に活動している筆者として着目しておきたいのは第4位の櫻田智也『失われた貌』(新潮社)と第8位の野宮有『殺し屋の営業術』(講談社)だ。『失われた貌』については「このミステリーがすごい!」などの年末のミステリランキングでトップに輝き、第71回江戸川乱歩賞を受賞した『殺し屋の営業術』については「ブランチBOOK大賞2025」に選ばれるなど、ベスト本企画で注目を集めたことが年末年始にランクインした要因でもあるのだろう。
これも当コーナーで触れたことだが、櫻田の『失われた貌』は著者がこれまで書いてきたレギュラー名探偵による本格謎解きミステリ短編とはひと味違う、地道な捜査を積み重ねていく警察小説の要素が色濃い作品になっている。日本ミステリにおいて警察小説が一大ブームとなったのは二〇〇〇年代のことだが、その時ほどの勢いは昨今あまり感じられなかったというのが正直なところだ。もちろん『失われた貌』の魅力はそれだけではないのだが、それでも警察小説の要素が前面に出ている作品がここまで注目を集めたのは、2020年代以降のミステリシーンにおいては際立つ出来事というべきだろう。
また、野宮の『殺し屋の営業術』は軽快な犯罪小説で、謎解きや捜査ものとはまた違った魅力を放つ作品になっている。『変な地図』のヒットで謎解きの魅力が多くの読者へ拡散される一方で、『失われた貌』や『殺し屋の営業術』が読まれることで警察小説やクライムコメディの面白さも広まる状況も見ていると、ミステリというジャンルが持つ幅広さを改めて認識できる。
























