ジャンルを超えた作家たちが寄稿する『GOAT』最新刊がランクイン 『失われた貌』も再びランク入り果たす

文芸誌『GOAT』3号がランクイン

オリコン週間文芸書ランキング

『GOAT Winter 2026』(小学館)

 年末に向けて文芸書のランキングも話題作で一層、賑わっている様子だ。2025年12月第1週のオリコン文芸書ランキング第3位には小学館の『GOAT』第3号がランクイン。

 『GOAT』については以前このコーナーでも詳しく紹介したが(文芸誌不況時代に『GOAT』がランキング浮上 「一誌入魂」の姿勢と豪華作家陣が奏功か)、12月3日に発売された第3号も話題を呼びランキング上位に入る結果となった。

 豪華な作りに反して510円という破格の安さをキープし続ける姿勢も凄いが、今回改めて思ったのは文芸ファンだけではなく全方位的に読者を増やそうとする話題作りの上手さである。SNS上では作家を始めとする豪華な執筆陣が自発的に雑誌のビジュアルや内容について発信し、一種のお祭り的な雰囲気すら漂わせている。

 こうした「何か盛り上がっている」イメージが醸成されやすい文芸雑誌というのが『GOAT』なのだと再度痛感した。

櫻田智也『失われた貌』(新潮社)

 いっぽう、年末らしいなと感じたのは第8位に櫻田智也『失われた貌』(新潮社)がランクインしたことだ。こちらの作品もリアルサウンド内で幾度も取り上げる機会があったが、「このミステリーがすごい! 2026年版」(宝島社)、「週刊文春ミステリーベスト10 2025」国内部門(『週刊文春』2025年12月11日号)、「ミステリが読みたい! 2026年版」(『ハヤカワミステリマガジン』2026年1月号)の第1位を獲得した影響で再びランキングへ浮上する結果となった。

 ヒット要因の考察はこの記事でも書いたが(櫻田智也『失われた貌』なぜ注目されている? 仮説と検証を地道に重ねていく“捜査小説”としての幹の太さ)、改めて各年末ランキングを席巻している結果を見ると、同作が如何に広範なミステリファンの心を掴めた作品だったのかを感じる。

 『失われた貌』の評価を見るとヒラリー・ウォー、ロス・マクドナルド、コリン・デクスターなど、古くからのミステリファンにとって馴染み深い名前が引き合いに出されることが多い。他方、同作の持つ地道な捜査小説のスタイルは、派手な設定や複数のアイディアを一作に盛り込みがちな面もある現代のミステリを親しんでいる読者にとっては却って新鮮な読み心地に思えるのではないだろうか。

 年季の入ったミステリ読者には懐かしく感じ、現代ミステリを読み始めたくらいの読者にとっては目新しさを感じるという幅の広さが『失われた貌』がこれだけ支持されている理由だろう。

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