恩田陸『spring』本屋大賞ノミネートに寄せてメッセージ公開 「私にとって最高の星です」

恩田陸『spring』本屋大賞ノミネートに寄せてメッセージ公開 「私にとって最高の星です」

 恩田陸の最新長編小説『spring』(2024年3月22日刊/筑摩書房)が、全国の書店員が最も売りたい本を選ぶ「2025年本屋大賞」にノミネートされた。恩田陸は2005年に『夜のピクニック』で第2回本屋大賞を受賞、2017年には『蜜蜂と遠雷』で2度目となる第14回本屋大賞(直木賞とのダブル受賞)を受賞しており、4月9日の発表で本作が受賞となれば、本屋大賞が始まって以来初となる“三度目の受賞”の快挙となる。

 『spring』は、『チョコレートコスモス』で描いた「演技」と『蜜蜂と遠雷』で描いた「音楽」という要素に加えて、ダンサーたちの優美な身体の動き=「舞踊」の表現が必須となるバレエのステージを、無二の言葉で描き出した作品だ。

 恩田陸は『spring』の本屋大賞ノミネートに寄せて、以下のメッセージを寄せている。

『spring』本屋大賞ノミネートに寄せて(恩田陸)

 気が付けば、小説家としてデビューして三十年が経っていた。
 もう三十年。ようやく三十年。やっと三十年。なんと三十年。
 デビュー直後はおずおずと手探りで、専業作家になってからはとにかくがむしゃらに書いてきた。途中、パンクしそうになって(実際パンクしていたのかもしれない)よろよろ低空飛行していた時期もあったし、何を書きたいのか自分でもよく分からない時期もあった。
 小説家にとって文学賞というのは、励みでもあり、呪いでもあり、里程標みたいなものでもある。私はデビュー作からして新人賞を逃しているし、これまでたぶん二十敗くらいしているのだが、書かなければ候補にもなれないわけで、候補になるということを、自分がこの世界の第一線にいられていることの証だ、と受け止めてきた。
 中でも本屋大賞は、ずっと励みにしてきた文学賞の最前線だ。私の中で『spring』は「デビュー三十周年記念作品」という位置づけなので、今回この小説が三度目のノミネートという栄誉に浴したことは、まだ自分が最前線にいられているのだ、と思えて、その感慨もひとしおである。これまでも、節目節目にお世話になってきた本屋大賞。今回、候補に推してくださった皆さまに、深く深く御礼申し上げます。

■書籍情報
『spring』
著者:恩田陸
価格:1,980円
発売日:2024年3月22日
出版社:筑摩書房

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