【漫画】ハロウィンで本物を見つけてしまったら? 伏線に気づくとハッとする『10月のあの子を見つけて』

肌寒い日が続く中、Xに投稿された読切漫画『10月のあの子を見つけて』は、そんな冷えた身体を芯から温めてくれるような優しい作品だ。
ハロウィンの日、団地に暮らす男性・一の家に、「トリックオアトリート」とお菓子をねだりに子どもたちがやってくる。その子どもたちの中に一人紛れ込んだ“本物”。一は困惑するものの、彼のことが気になり、その動向を観察すると――。
ストーリーを読み進めると読者をひっかける“仕掛け”も見られ、短いながらも読み応えのある本作を手掛けた藤嶋マルさん(@marufujishima)に、どのように制作したのかなどを聞いた。(望月悠木)
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読者を騙すために意識したこと
――今回『10月のあの子を見つけて』を制作した経緯は?
藤嶋:今年の春ごろに6歳の次女から「死んだら人ってどうなるの?」と聞かれ、「日本では火葬してお骨にしてお墓に入るのが一般的だよ」と答えたらものすごく怖がってしまって。その時「お母さんが先に死んじゃうと思うけど、お空の上で次女のことをずっと待っているよ。次女もお空の上に来てお母さんと会えたら、その後はずーっと一緒にいるから何も怖くないよ」と話しました。次女はそれを聞いて「それいいね!」とニコッと安心した様子でした。
――その会話がヒントになったと。
藤嶋:はい。その出来事があって「死んだあとのこと」が何となくずっと頭にありました。それから秋になって「何かハロウィンの話を描こうかな」と思った時、「オバケの子が生きている子に混ざってお菓子をもらおうとしている。でも誰も気が付いてくれなくて泣いている」という絵が浮かび、「このオバケの子に誰かがお菓子をあげてほしい。あげられるとしたら誰だろう? その人だけがどうしてオバケに気が付いたんだろう?」と逆算するように考えて、さらに前述の「死んだあとのこと」を加えて描いた物語です。
――舞台を団地にした物語でしたね。
藤嶋:「子どもが嫌いな人間の家に子どもたちが間違えて、お菓子をもらいに来てしまうほうが面白いな」と思い、「子どもと関わらざるをえない住環境ってどこだろう?」と考えた結果、団地を選びました。ちなみに、オバケの子が団地に現れた理由が、作中では説明されていないのですが、「あの子も同じ団地に住んでいて亡くなった子ども」と考えています。異なる人生が交差する場所として、マンションやアパートより団地のほうが“街感”があり、奥行を感じられて舞台にふさわしい気がしました。
――叙述トリックのような展開でしたが、ストーリーはどう作っていきましたか?
藤嶋:最初は「千代(一の奥さん)のほうが亡くなっていて、オバケは千代のお腹にいた赤ちゃんで、親子だから一にはオバケの子の姿が見えた」という話を一度考えましたが、「あまりにも悲しくて救いがない」と思ってやめました。私たちが生きている現実世界は、非常に厳しくて実は救いがないと感じています。「せめて物語では優しくて救いや願いがある物語を描きたい」と常々思っていますので……。なので、オバケの子が一にだけ見えるには、やはり同じ“幽霊”という立場が一番わかりやすいと考え、そこを軸にストーリーを考えました。
――読者を“騙す”ためにストーリーを考えるのも大変だったように感じます。
藤嶋:「仮装した子どもたちと会話しているようで、実はしていない」「最初に遺影が登場したシーンで写真の人物の姿は見せていない」などはミスリードさせるための工夫ですが、「季節は秋なのに一だけ半袖」「遺影のある部屋に一が靴のまま土足で上がっている」など、「この人、違和感ありますよ!」という部分はちょこちょこ小出しにして、「いつバレてもいいように」とも思って描きました。
――バレないように、バレても良いように、いろいろな工夫があったのですね。
藤嶋:そうですね。ちなみに、映画好きな人なら読んでピンと来たと思いますが、構造としてはM・ナイト・シャマラン監督の『シックス・センス』と同じなんですよね。
幽霊っぽいデザインだったワケ
――幽霊はある意味“ありがち”なキャラデザでしたね。
藤嶋:巷でよく見る幽霊の造形ですね。「ハロウィンのオバケといえばこのデザイン」というほうが、一発で幽霊だとわかるので、“よくある幽霊”のデザインにしました。ただ、「病気で亡くなった子どもなので、かぶっている布は病院のシーツなのかな」とか、「本当に闘病して亡くなられたお子さんに失礼のないように、オバケだけど怖い存在じゃない、愛らしく大切な存在として描こう」と意識しました。
――また、幽霊はいろいろな表情を見せるのが可愛らしかったです。
藤嶋:しゃべらない子なので、とにかく表情のみで感情が全部伝わるように意識しました。オーバーな表現なのはわかっていましたが、「日本語ではない外国語圏の人にも表情で伝わるぐらい」を最優先に表情を描いています。
――今後はどのように漫画制作を展開させていく予定ですか?
藤嶋:去年から「コミティア」で創作漫画を発表して、ありがたいことに商業誌の編集者の方々から声をかけていただきました。今までは児童書の挿絵などのイラスト関連の仕事をメインにしていましたが、商業でも作品を発表できるように舵を切っています。
感想や購入を通して、私の作品への温かい言葉をかけてくれた人たちのおかげで「船を出すぞ!」という気持ちになれたので、「みなさんのおかげでまたこんな漫画が描けました」と早く報告したいです。
■藤嶋マルさんのXアカウント:https://x.com/marufujishima
■『10月のあの子を見つけて』全ページ:https://www.pixiv.net/artworks/139086461


















