急増するBL市場 『おっさんずラブ』が転機にーー 専門家が読み解く3つのポイント
2.電子書籍の普及でBLファン増加 原作の売上が指標に
また、BL自体のファン人口が増えたことも、ドラマが爆発的に増加した要因のひとつだ。そもそもBLドラマは、漫画や小説を原作とした作品がほとんど。『おっさんずラブ』のようなオリジナル作品の方が珍しい。
BLドラマにおいて原作付きがメジャーである理由について、ちるちる編集部は「BLが漫画や小説を中心に発展してきた文化である、という点が大きく影響している」と話す。「活字離れが叫ばれる昨今ですが、BLは今でも小説やコミックスが売れているジャンル。原作にどれくらいのファンがついているのか予測しやすいので、ドラマ化をする際の指標になるのでしょう」
そして、新型コロナ流行下における、電子書籍の普及もドラマの原作であるBL漫画・小説の人気を後押しする契機となった。
「コロナ下で電子書籍が普及したことで、気軽にBL漫画・小説を購入する人も増えた。電子書籍がBLを購入するハードルを下げたのではないでしょうか。ライトなファンも増えた結果、電子書籍では読み応えのある重厚なストーリーの作品より、さらりと読めるポップな作品が好まれる傾向にあります」
時代により変遷するジェンダー観を反映するように、描かれるキャラクターにも変化が生まれた。
かつてのBLでは、桁違いに裕福な男性が憧れの象徴であり王道だった。最近ではお互い対等なポジションであるキャラクター同士の恋愛が描かれることが増加。「自立している二人の対等な恋」というストーリーの方が読者に馴染みやすい社会に変化してきたと言える。
また登場人物の年齢も変化しており、最近では成人した社会人がメインであるケースが増加。「ドラマの視聴者層が主に20~30代であることも影響しているのでは」と指摘する。
3.日本発BLドラマが国外でヒット 海外展開を視野に制作か
そして近年のBLドラマを語る上では、海外BLドラマの話題は外せないだろう。特にタイのBLドラマは日本を始め世界でも大きなブームになった。そして日本発のBLドラマも、海外人気を順調に伸ばしているようだ。
注目される契機となったのは、2019年より放送されたドラマ『美しい彼』(毎日放送系/原作:凪良ゆう)。配信により海外でも評価され、日本BLドラマの地位を引き上げた。2024年2月より放送されている『恋をするなら二度目が上等』(毎日放送系/原作:木下けい子)は、中国での人気が高いのだという。
配信後にはWeibo(微博)でトレンド入りを果たし、雑誌の表紙にメインキャストが抜擢されるなどの快進撃を見せる。国内BLドラマが海外進出を念頭に置いた展開を行っていることも、BLドラマ人気拡大、そしてBLドラマ増加の一因となっているだろう。
ちるちる編集部は「これからは国内のファンだけでなく、海外のファンをどう取り入れていくかがBLドラマが発展する鍵になるかと思います。さらに多くのファンを見据えたコンテンツ作りが広がっていくのでは」と、未来の展望に期待を寄せる。
かつては「好き同士」で隠れて楽しんだBL。今では世界に誇る日本の映像作品として、羽ばたこうとしている。
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