【LINEマンガ】BL人気が続く中で初心者におすすめしたい『仁藤と田塚の日常』青春ストーリーが瑞々しい「素敵な恋愛漫画」

【LINEマンガ】『仁藤と田塚の日常』 レビュー

 いまは商業漫画の世界でも一大ジャンルとなったBL(ボーイズ・ラブ)。一般の漫画雑誌で見かけることは多くないかもしれないが、主なターゲットとなる女性も気軽にチェックしやすいマンガサイトやアプリを見れば多くの作品がランキングに並び、そのバリエーションに驚かされる。そんな“BL作品百花繚乱”の時代に「LINEマンガ インディーズ」からのトライアル連載で反響を呼び、本連載を勝ち取り、人気を拡大し続けているのが『仁藤と田塚の日常』(砂糖と塩)だ。

 完璧すぎる彼氏が登場する「スパダリ(スーパーダーリン)」モノに、“第二の性”により男性も妊娠できる「オメガバース」、ゾンビに溢れた終末世界を舞台とする「ゾンBL」まで、多種多様なサブジャンルが日々生まれては読者を刺激しているなかで、『仁藤と田塚の日常』に奇をてらった設定はなく、王道感のある青春ストーリーが展開される。ドキッとするシーンは多いがハードな描写は抑えられており、BL作品の魅力を知るための入り口としてもぴったりの作品だ。

 仁藤と田塚は、幼馴染みの大親友。しかし中学3年生のクリスマス、田塚は長年あたためてきた思いを仁藤に告げる。「ずっと、好きだった」ーー。

 少年っぽさを残し、周囲を明るい気持ちにする無自覚なかわいさを持った仁藤と、しっかりもの&クールなイケメンで女子にもモテるが、仁藤を溺愛し続ける一途な田塚。幼い頃から日々を重ねてきたふたりが織りなす物語はほほえましく、ときに切なく、胸を締めつけられるものになっている。

 恋愛対象としての「好き」と友達としての「好き」が交差するなかで、別の高校に進学して距離を置きながらも、関係をつないでいくふたり。BLに関心がない読者でも、「同性」であるがゆえに簡単には進まない恋愛に、やきもきするとともにキラキラとした純粋さを感じるはずだ。一方で、気づけば相手のことばかり考え、距離の近い人がいれば嫉妬してしまう……という心情は、恋愛対象や性自認にかかわらず、恋をした経験があれば誰でも共感可能なことだろう。『仁藤と田塚の日常』は「素敵なBL作品」である以前に、「素敵な恋愛漫画」なのだ。

 「お互い男性だから」という理由で、思いを寄せる男性に思いっきり拒絶されてしまう悲しいキャラクターも登場するが、多様性の尊重が少しずつ浸透してきたご時世、感情が追いつかない部分があっても露骨な偏見を「障壁」として強調することがないのも、気持ちよく読めるポイントだ。現実にそうはいかない部分もあるかもしれないが、仁藤と田塚のようなふたりが正しく祝福される世の中であってほしい、と思わずにいられない。前述のようにハードな描写も抑えられていることから、アニメや実写ドラマ、映画など映像作品としても広がりを生みそうな良作だ。なお、同作は昨年行われたAnimeJapanによる第5回「アニメ化してほしいマンガランキング」で3位を受賞しており、第6回を飾る今年も同ランキングに現在ノミネートされている。

 紆余曲折を経て、恋人同士になった仁藤と田塚は、どんな日常を送っていくのか。あらゆるジャンルのBLを知り尽くした上級者も、これから掘り下げていきたい初級者も、あるいは単純に恋愛マンガやラブコメが好きな人も、いま注目の『仁藤と田塚の日常』をチェックしておこう。

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