「ムー」三上丈晴編集長が語る、“日ユ同祖論”の面白さ 話題の歴史ミステリー『アマテラスの暗号』を読む

「ムー」三上編集長が語る“日ユ同祖論”

イスラエルの失われた10支族の謎

――先ほどの三上編集長のお話にあったマックレオドの日ユ同祖論とは、どういった説なのでしょうか。

三上:マックレオドが着目したのは歴史上から消えたユダヤ人です。正確にはユダヤ人と呼ばれる以前のイスラエル人です。先述した預言者ヤコブの子孫からイスラエル12支族が誕生し、紀元前11世紀ごろ、古代イスラエル王国が樹立します。2代目の王がダビデ、その次のソロモン王の時代、絶頂期を迎えます。

――最初は「12支族」だったのですね。その後、古代イスラエル王国は南北に分裂しましたが、ここで何か変化があったのでしょうか。

三上:ソロモン王が亡くなると、紀元前922年に10支族から成る北朝イスラエル王国と残りの2支族から成る南朝ユダ王国に分かれます。しかし、紀元前8世紀に北朝はアッシリア帝国に滅ぼされ、同様に紀元前6世紀、南朝は新バビロニア王国によって滅亡します。いずれも、敵地へと民は連行されたのですが、問題は北朝のイスラエル人です。彼らの足跡が突如、消えるのです。世界史上最大の謎、いわゆる失われたイスラエル10支族です。マックレオドは、彼らがシルクロードを経て、この日本列島へとやってきたと考えたのです。

――なぜ、失われたイスラエル10支族は日本列島へとやってきたのでしょうか。

三上:イスラエル人がいるところ、必ず預言者がいます。彼らは預言者にしたがって行動します。失われたイスラエル10支族にも預言者がいました。預言者が目指したのが、ユーラシア大陸の極東、この日本なのです。事実、南朝の預言者のひとり、イザヤは失われたイスラエル10支族が終末の世、日の出ずる方角、地の果てにある海の島々からひとつの国を挙げて帰ってくると語っています。

 中東におけるカナンのように、日本は約束の地なのです。イスラエル10支族だけではありません。同様に捕囚された南朝ユダ王国の2支族もまた、シルクロードを東に向かい、中国を経て日本へとやってきました。さらに、紀元1世紀、イエス・キリスト直系の弟子たち、すなわちユダヤ人原始キリスト教徒もまた、朝鮮半島を経由して、日本へと渡来してきました。『日本書紀』に登場する秦氏(はたうじ)が、それです。

 古くは日本は大和と称しました。女王・卑弥呼で知られる邪馬台国も、正しくはヤマトです。ヤマトとはヘブライ語で神の民を意味するヤ・ウマトのこと。今でも、ユダヤ人にヤマトといえば通じます。

鍵を握る“アーク”とは

――大和という名称は、そう言われてみると不思議な響きがありますね。

三上:大和朝廷が成立したとき、神武天皇と饒速日命(にぎはやひのみこ)が、お互いに天神の子である証拠として天羽々矢(あめのはばや)と歩靫(かちゆき)を見せ合いました。これは暗号です。矢には羽がついており、歩靫は矢を入れる箱です。これは翼の生えた天使がしつらえた蓋をもつ契約の聖櫃アークを意味しています。

 本来、アークは南朝ユダ王国のソロモン神殿に安置されていましたが、滅亡と同時に行方不明になりました。今でも、ユダヤ人たちは本気でアークを探しています。『旧約聖書』の外典によれば、預言者エレミヤは神殿が破壊される直前、アークを運び出し、密かにモーセが昇天したネボ山に隠したとされます。これが日本にあるのです。

――そんなアークがなぜ、日本に伝わったと考えられるのでしょうか。

三上:隠されたアークを再び運び出したのは捕囚された南朝ユダ王国の民です。手にしたのは、おそらく預言者モーセの子孫だと思われます。彼らはエルサレムへと戻らず、約束の地である日本を目指し、東へと向かった。途中、中国でアークを手にしたのが、かの秦始皇帝です。アークの力によって秦始皇帝は中国を統一した。

 しかし、アークは日本へと運ばねばならない。この使命を帯びたのが、秦始皇帝と同族であった徐福です。両者は、ともに失われたイスラエル人です。預言者だったに違いありません。預言に従い、このときアークは蓋と箱に分けられた。秦始皇帝は蓋、徐福は箱を手にした。かくして、下の箱は徐福により海路で日本列島へと運ばれた。徐福集団の子孫は後に古代豪族、物部氏となります。この大王が饒速日命(ニギハヤヒノミコト)です。

 一方、秦始皇帝の死後、蓋は子孫たちに守られ、戦乱を生き延びて、朝鮮半島へともたらされます。彼らは秦人と呼ばれ、朝鮮半島で秦韓と弁韓を建国します。これらは後に新羅と伽耶という国になるのですが、その始祖伝説には黄金の箱が登場します。アークの記憶です。最終的に、蓋を日本へと持ち込んだのが渡来人の秦氏です。

――日本誕生のきっかけが、イスラエルから伝わったアークにあった、と。

三上:秦氏が日本に渡来してくるとき、彼らを率いたのが騎馬民族の大王で、これが大和朝廷を開く神武天皇と呼ばれます。神武天皇と饒速日命は、ともにイスラエル人であることの証として、アークの蓋と箱を見せ合い、それを符牒として一致することを確認したのです。こうして無事、再び合体したアークは日本の某所に安置されることとなった。

ただし、アークは祭司レビ族でなければ扱うことができません。アークはモーセが作らせた聖なる祭壇です。儀式を執行するのも、本来、モーセの子孫が行わなければなかったはずです。もし、アークが日本にあるならば、当然ながら、モーセの子孫もまた、日本にいるはず。レビ族は男系です。ユダヤではレビ族が王になったときもあります。男系にこだわる祭司王とくれば、どこか日本の天皇家を思わせますね。

――こうした日本誕生の歴史まで遡る壮大な古代史のロマンが、『アマテラスの暗号』にはたっぷりと詰まっているわけですね。三上編集長は、この本をどんな人に読んでもらいたいですか。

三上:日ユ同祖論を知っている方はもちろんですが、知らない方にも、ぜひ読んでいただきたい。学術書ではなく、あくまでもエンターテインメントというスタイルなので、こんな説もあるのかというぐらいのスタンスで楽しんでほしいですね。これ一冊、読めば、日ユ同祖論の全体像をつかむことができるかと思います。興味をもった方は、ぜひ本書のネタ元になった書籍を探し出して、深く研究してみてはいかがでしょうか。新たな歴史的な発見があるかもしれません。

■書籍情報
『アマテラスの暗号(上)』
『アマテラスの暗号(下)』
著者:伊勢谷 武
価格:各840円
発売日:2024年2月28日
出版社:宝島社


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