「この世には不思議なことなど何もない?」ツタンカーメンの呪い、古代技術、超能力者……”超常現象”を考察する

  人気作家、東野圭吾氏の「探偵ガリレオ」シリーズは、ミステリーでもやや異色な作品である。主人公である湯川学は探偵役だが、刑事でも私立探偵でもなく物理学者で、彼の元に寄せられる謎は一見すると超常現象に見える現象だ。その一見すると超常現象に見える奇怪な現象を湯川が合理的に解き明かしていくのが同作の魅力である。

東野圭吾『ガリレオの事件簿』(文藝春秋)

  実写ドラマ・映画も大成功し、「難解な科学的説明を要する機械を犯行に用いてはならない」というロナルド・ノックスの探偵小説十戒に反してはいるものの、今や数ある現代日本ミステリーシリーズでも指折りの人気シリーズである。シリーズは単行本ですでに10作を数え、昨年(2022年)には『探偵ガリレオの事件簿』のタイトルで小中学生向けのジュニア版も発行された。

  類似作として小野不由美氏の『ゴーストハント』シリーズも挙げられるが、こちらはよりライトノベル的な作風で。雰囲気が異なる。

小野不由美『ゴーストハント』(KADOKAWA)

  さて、ここで疑問なのだが、「探偵ガリレオ」こと湯川学や「ゴーストハント」のナルのように、超常現象を合理的に解決する人物は現実に存在するのだろうか?

  結論を言ってしまうと存在する。

  現象を正面から素直に受け取るのではなく、否定はしないが盲信せず、客観性ないし蓋然性を吟味する姿勢を「懐疑主義」と呼ぶが、超常現象をその懐疑主義の立場から検討する「懐疑論者」はそれなりの数存在する。

  マジシャンのジェームズ・ランディ氏(1928-2020)はその最先端を行っていた人物だ。ランディ氏は15歳時、宗教集会で行われていた降神術の欺瞞を暴いたことで拘置所に4時間拘束され、一生涯に渡って超能力者に個人的な恨みを持っていた。

 ランディ氏の審査基準で超能力があることを証明した者には賞金100万ドルを授与するとしていた「100万ドル超能力チャレンジ」には1000人を越える(自称)超能力者が挑んだが、全員、見事にランディ氏にタネを見破られて敗北している。ランディ氏は講演で代替医療の一種だが、医学的には何の薬効も無いと考えられているホメオパシーのレメディ(治療薬)を致死量まで飲むパフォーマンスを頻繁に披露していたが、結局92歳で亡くなるまでピンピンしていた。実にらしい人生の終え方である。

『定本ラヴクラフト全集 第2巻』(国書刊行会)

マジシャンと懐疑論は相性がいいらしい。古くは高名な奇術師だったハリー・フーディーニ(1874-1926)も数多くの超能力者のインチキを見破っている。ただし、フーディーニの場合、ランディ氏と動機が違い「本当に超能力者がいるなら、降霊術で亡くなった最愛の母にもう一度会いたい」という切ない動機があったようだ。フーディーニは数多くのフィクションでも題材になっており、同時代に活躍したH・P・ラヴクラフト(1890-1937)の『ファラオとともに幽閉されて』はフーディーニの体験談という体裁を取っている。

  少々余談が過ぎたが、日本にも懐疑論者はいる。その先端を行っているのが兼業ライターの本城達也氏である。本城氏は超常現象の懐疑的な調査を目的とする団体・ASIOSを発足させており、ASIOS名義で著作も発行している。

  今回はASIOSの『謎解き超常現象』シリーズ、本城氏のWEBサイト、「超常現象の謎解き」https://www.nazotoki.com/、梅原 勇樹、苅田 章 (著)『NHKスペシャル 超常現象 科学者たちの挑戦』、NHK BSで放送中の『ダークサイドミステリー』などを元に、すでに合理的な解釈が得られている有名な伝説の「謎解き」を紹介していこう。

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