『アオアシ』スピンオフ読切の掲載が決定! 読者の心に残り続ける男「中村平」の魅力に迫る
Jリーグユースを舞台に高校生年代の選手達がプロ昇格を目指して奮闘する様が描かれるサッカー漫画『アオアシ』(小林有吾)。2024年4月には累計発行部数が2000万部を突破したことが発表され、記念として初となるキャラクター人気投票も開催されている。
2024年6~7月頃に結果が発表されるとのことだが、先日発表された中間発表では、長らく本作に登場していないにも関わらず第11位にランクインするほど、多くの作品ファンから愛されている存在が中村平(なかむら・たいら)だ。
2024年5月20日にはビッグコミックオリジナル11号にてスピンオフ作品である『アオアシ ミッドナイト・ダイナー』の前編が描かれる。何を隠そうその主人公こそが中村平なのだ。
2020年4月に発売された『アオアシ』第20巻を最後に、平は本編には登場していない。それにも関わらずスピンオフ作品の主人公として描かれることを意外に感じる人も多いかも知れない。ただ、平をよく知る読者は大納得の上で喜びに震えているだろう。筆者もその1人だ。そこで本記事では中村平というキャラクターについて作中のエピソードも交えながら振り返っていきたい。
忘れられない敗北者
中村平は『アオアシ』の主人公、青井葦人が所属するJリーグの強豪チームでありユース世代最強を誇る「東京シティ・エスペリオン」ユースチームの1学年上の先輩だ。気さくな性格で後輩の面倒見がよく、チームメイトの信頼も熱い頼れる兄貴分だ。プロになることを至上命題とし、チームよりも個を重視するユースチームにおいては稀有な存在とも言える。
ポジションは主にサイドバックや中盤のサイドを務める。しかしチーム内では絶対的な存在ではなくAチームとBチームを行き来するような状況にあり、Aチームではベンチを温めることが多い選手だ。
作中では、東京シティ・エスペリオンユースの面々が高校生年代最高峰のリーグであるプレミアリーグを戦っている最中、突如サッカーからの引退を告げた平。激しく動揺するチームメイト達はプレミアリーグで優勝争いをしている強豪、船橋学院戦で大量得点を取って優位に立ち、その試合が引退試合となる平をなんとか試合に出場させようと一致団結する。
しかし迎えた船橋学院との試合では、葦人が痛恨のハンドを犯してしまいPKを献上するなど劣勢に立たされ、葦人と交代で途中出場する予定だった平は試合がビハインドとなった状況を鑑みて「ここで交代するのはSBの自分じゃない」と冷静にチームに今取るべき最適な行動を促す。結局、最後の試合で出場機会を得ることなくそのまま引退となった平。忸怩たる思いがある筈だが、それでも代わりに交代出場することになった選手の背中を叩いて鼓舞する平の姿は、どこまでもチームの為に尽くすという気概に溢れていた。平がチームメイトからも、読者からも愛される所以がそのシーンに凝縮されていたようにも感じる。