江口寿史展「ノット・コンプリーテッド」レポート リアリズムと漫画表現が織りなす「人物描写」の魅力と進化

江口寿史展レポート

色気のある男性キャラにも注目

[写真6]

  そして、もう1つ。今回の展覧会であらためて注目してほしいのは、江口が描く少年や青年のキャラクターたちである[写真6]。そう、前述のように、江口といえば、「美しい女性像の描き手」としてよく知られているわけだが、同じくらい男性を描いた絵も魅力的なのだ。

  なかでも『パパリンコ物語』の「パパ」こと有馬三郎や、『エイジ』の主人公・赤木英児[写真7・8]のなんと色気のあることか。両作が描かれた80年代半ばの江口の絵は、白と黒のコントラストが本当に美しく、また、柔らかで艶(なまめ)かしい主線(おもせん)によって人物や背景が描かれているのだが、その特長が男性キャラにも活かされているものと思われる。

[写真7]
[写真8]

  いずれにせよ、“いい女”を描ける漫画家は“いい男”も描けるということだろう。江口寿史展「ノット・コンプリーテッド」は、来年2月4日(日)まで開催予定なので(巨大なカンバスに描かれたライブドローイング作品[写真9]や、かつて“カンヅメ”になったホテルの一室を再現したコーナー[写真10]なども見られる)、行ける方はぜひ足を運んでほしいと思う。

[写真9]
[写真10]

 

江口寿史展ノット・コンプリーテッド

2023年9月30日(土)~2024年2月4日(日)
会場:世田谷文学館 2階展示室
詳細は下記をご確認ください。
https://www.setabun.or.jp/exhibition/20230930-20240204_hisashieguchi.html

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