「次に流行るのは立ち食いそば女子だ」U字工事×『そばギャルとおじさん』原案・本橋隆司が語る、飯テロ必至のそば道

U字工事が『そばギャルとおじさん』を読む!

 日本の食文化を代表する、立ち食いそば。そんなカウンター越しの小宇宙を、今もっとも熱く、かつポップに描いているのが漫画『そばギャルとおじさん』(稲葉そーへー、光文社)だ。 本作は、立ち食いそばをこよなく愛する冴えないサラリーマンのおじさん・秋丸泰造と、意外にもそばの魅力に取り憑かれたギャル・じゅりなが織りなす、異色のグルメコメディ。

 第2巻の発売を機に、YouTubeでも並々ならぬ「立ち食いそば愛」を爆発させているお笑いコンビ・U字工事の益子卓郎と福田薫が登場。漫画原案の本橋隆司を交え、あふれんばかりの「そば愛」をぶつけ合った。 「紅しょうが天の染みたつゆは最高」「卵を丸呑みする衝撃の作法」「かき揚げ丼にカレー」など、読めば今日、帰りに寄らずにはいられない立ち食いそばの極意が満載。おじさん文化の聖域に、立ち食いそば女子という新しい風が吹き抜ける。

安くて早くて、お腹いっぱい…生活の中の立ち食いそば

U字工事 福田薫氏(左)、益子卓郎氏(右)

本橋隆司(以下、本橋):『そばギャルとおじさん』って立ち食いそば屋が舞台の漫画なんですけど、行かない人にとっては少し敷居が高い場所でもあるので、そのハードルを下げられたらという気持ちもありました。

福田薫(以下、福田):読みました。面白かったです。

益子卓郎(以下、益子):面白かったし、これ読んですぐ立ち食いそば食いたくなったよね。おじさんが主人公だけど、絶対に女性も読んだ方がいいね。

福田:そうそう、これで女性にも立ち食いそばがはやるといいよな。

本橋:漫画って、立ち食いそば好きの内輪ネタになりすぎるとダメで、でも浅くすると嘘になる。その間のバランスが難しくて。だから、立ち食いそばのリアルを知ってるお二人が「面白い」と言ってくれるのは嬉しいです。

福田:あるあるが多いですよ。あと、テンポがいい。

益子:ギャルがちゃんとギャルで、でも嫌味がないのもいいよね。

本橋隆司
漫画原案 本橋隆司氏

本橋:お二人はYouTubeでも立ち食いそばの動画を出されてますが、ハマったきっかけは何だったんでしょう。

福田:僕が一番最初に好きになったのは、小学生の時ですね。地元の駅のホームに立ち食いそばがあって、兄ちゃんと一緒に行った時に「ここうめえんだぞ」って。それがすごく記憶に残ってますね。当時は、ホームでそば食ってるのが、ちょっと大人っぽいというか。背伸びしてる感じもありましたね。

本橋:ホームの立ち食いそばって、立ち食い文化の原風景ですよね。

益子:俺は東京出てきてからです。下積みの頃、お金ないじゃないですか。住んでた沿線の駅そばが安くて、そこか牛丼か、みたいな生活でした。セットも安いんですよ。そばとミニカレーでワンコイン切ってたり。あとは『そばギャルとおじさん』のじゅりなみたいに、飲んだ後に行ったりね。

福田:そうそう、若い頃は僕もカレーセットばっかり。とにかく「安くて腹いっぱい」ってのが大きかった。

益子:そば屋の黄色いカレーって出汁がきいてて旨いんだよな。

本橋:お二人とも、最初は生活として立ち食いそばに入ってるんですね。『そばギャルとおじさん』も、立ち食いそばをグルメとして持ち上げすぎず、生活の中にあるものとして描いています。安い、早い、うまい。だけど、それだけじゃ終わらない。

福田:そうですね。安いから食ってたのに、いつの間にか「今日はそばの気分だな」ってなる。そういう食べ物って、意外と少ない。

ギャルも思わず「これヤバない!?」な立ち食いそばの極意

益子:ハマった味の決定打ってなると、かき揚げですね。俺は紅しょうが天が大好きでよく入れるんですけど、その天ぷらをつゆに浸した時の味! 濃いめのつゆが衣に染みて、ふわっとして、つゆの味もさらに濃く感じるーー。若い頃は塩分欲してるから全部飲んでました(笑)。北関東の人間なんで、あの醤油の効いた濃いつゆが好きですね。

本橋:かえしが効いたつゆって、関東の立ち食いそばの魅力ですよね。まさに漫画の第一話で、ゲソ天とオキアミ天を浸してそばが「完成」するところが描かれています。

稲葉そーへー(漫画)、本橋隆司(原案、監修)『そばギャルとおじさん 1』(光文社、熱帯COMICS)

福田:あれ良かったですよ(笑)。じゅりなが「これヤバない!?」ってなってるの。

益子:ギャルの反応がいちいちいいよね。ちゃんと読者目線になってる。

福田:僕は春菊天の旨さに気づいてからですね。大人になってからあの苦味が美味しく感じられるようになって、「うめえ」って思って。そこから毎回そればっかり食ってる。あれが僕のターニングポイントかもしれない。若い子はラーメンもいいけど、この漫画読んで、立ち食いそばにもハマってほしい。

益子:本橋さんのおすすめのトッピングはあるんですか?

本橋:ごはんもののお新香代わりに紅しょうがを置いてある店がたまにあるんですよ。かき揚げに乗せてあげるだけでいい酸味が出るからおすすめですね。あとは、その店にしかない天ぷらは頼みます。店によっては納豆天とかあるんです。

益子:へー! 食ってみてえな。

福田:あと立ち食いそばって、やっぱり早さが魅力だと思う。

益子:そうだね。俺なんかせっかちなんで、早いのが嬉しい。駅のホームの立ち食いそば屋にフラッと入って、紅しょうが天そばを頼んだら3分で出てくる。

福田:先に食べてる人がいて、自分が後から入って、僕が先に食べ終わって出た時に、勝ったみたいな変な意識あるんですよ、「俺のほうが店に貢献してる」みたいな(笑)。

本橋:それって単なる提供スピードじゃなくて、食べる側のテンポも含めて文化ですよね。サッと出てきて、サッと食べて帰るのがいい。

福田流の食べ方、「リューイーソー」とは

U字工事 福田薫

福田:『そばギャルとおじさん』最新の2巻を読んで衝撃受けたんですよ。8話でかき揚げ丼とカレーを組み合わせるところ。あんなことできるんだって。

本橋:そうそう、意外と美味しいんですよ。カレーセットのカレーに、かき揚げを乗せちゃうんです。

福田:読んだとき「なに!」って思いましたよ(笑)。なるほどなあ、今度やってみよう。

益子:この漫画、めちゃくちゃ勉強になるよな。

本橋:立ち食いそばって気取った食べ物じゃないから、自分が好きなようにアレンジできるのも魅力ですよね。

福田:僕が最近編み出してるのが、ネギの使い方ですね。まず、ネギの半分だけ沈めて熱を通して、つゆと絡めて甘くする。辛味のある方は天ぷらと一緒に食べて、衣の甘みとネギの辛味で食う。変化があって楽しいですよ。

本橋:沈めて火を通すという、ちょっとした調理ですね(笑)。まさに漫画のようです、僕も真似したくなりました。

福田:あと僕の中で「緑一色(リューイーソー)」って呼んでるやつがあって。

益子:麻雀の役の?

福田:そう、春菊天とワカメと青いネギ。緑が揃って「リューイーソー」だなって。

益子:そこにほうれん草トッピングしたらもっと緑が強いそばになるな(笑)。

本橋:でもこういうこだわりが許されるのが立ち食いそばですよね。

益子、じゅりなの卵丸呑みに衝撃

U字工事 益子卓郎

益子:俺が驚いたのは2巻の天カスですね。衣だけのあげ玉じゃなくて、天ぷらのかけらの天カスをかけて食う、だからたまに紅しょうがとかゲソの「当たり」が混ざってる。

稲葉そーへー(漫画)、本橋隆司(原案、監修)『そばギャルとおじさん 2』(光文社、熱帯COMICS)

本橋:そう、色々な風味が混ざっているのが美味しいんですよ。それは2巻の9話、ヒヤタ(冷やしたぬきそば)の回に出てくるんですけど、冷やしって食べますか?

益子:俺は夏でも温かいそば食いたい派なんですよ。汗かくけど、一旦冷たい水で口を冷やしてからズルッといく。熱いのを勢いよくすするのが好きなんで。

本橋:その汗だくも含めて立ち食いですよね。

福田:確かに(笑)。

益子:あとは卵の食べ方ね。じゅりなが卵を丸飲みするじゃないですか、あれはびっくりしたなあ。

福田:そうなの、なんで?

益子:俺、つゆ汚したくない派だから、卵はあんまり入れないんだよ。でも今度やってみよっかなあって思ったね。

本橋:1巻の第2話ですね。卵もネギみたいに先に沈めると、少し固まって散らなくなりますよ。

福田:そうなんですね! 僕はタンパク質摂りたくて卵入れることあるんですよ。立ち食いそばの貴重なタンパク源なんで。僕も卵を広げたくないからちょっとだけ崩して、濃いめのすき焼きみたいにして、一気にチュルっと食うんです。旨えから今度試してよ。

益子:それいいかもな。俺は「今日は立ち食いそばだ」って日は、ブロッコリー食ってから出るよ。そばだと栄養がちょっと足りないから。

福田:なんだそれ(笑)。

立ち食いそば女子が流行るかも!?

U字工事

本橋:U字工事のお二人にとって、立ち食いそば屋のカウンターってどんな場所ですか?

福田:「背中で気配を感じるところ」ですね。混み具合とか意識して、背中で周りを見ながらそばを食う場所って感じ。

益子:「短期決戦の場所」ですね。そばが出てきたら、何も考えずにサッと食べる。楽しみにしていた立ち食いそば屋にやってきて、食べるのは5分。でも、それが最高。

本橋:いいですね。僕にとっては、仕事の合間に来る場所とでもいいますか。仕事の気分が途切れないのがいいですよね。特別な場所じゃないところもいい。親戚の家で食べてるような気分があります。

益子:会話もあんまりないのも気楽。

本橋:『そばギャルとおじさん』では立ち食いそば屋の交流も描かれています。外国人にじゅりながそばの食べ方を指南したり、店主と話したり。

益子:現実だと黙って食いますけど、こういうのも面白いですよ。

福田:実際の立ち食いそば屋でも、数少ないやり取りの中に、色々なものが詰まってますよね。「今日はかき揚げそばでお願いします」「ごちそうさま」の一言で気持ちが伝わるような気がします。「いつもありがとね」って言われると、見てくれてたんだなって嬉しくなるし。

益子:混雑してる店に入ると、横のお客さんがちょっとズレてくれたりね。

本橋:そう、立ち食いそば屋の空気感もこの漫画で味わってほしいですね。というのも、『そばギャルとおじさん』の根底にあるのは「立ち食いそばの入口を広げたい」という気持ちなんです。

益子:でも立ち食いそば屋でギャルはまだ見たことないね。

福田:OLさんはいるよね。立ち食いそば好きのアイドルさんとか出てきてもいいと思うけどなあ。

益子:佐藤栞里さんが立ち食いそば大好きなんだよね。やっぱ女性にも読んでほしいですね。あと昼ラーメンばっかり食ってる人にも。「たまにはそば食ってみろよ」って。

本橋:立ち食いそばって、好きな人には当たり前だけど、そうじゃない人にはちょっと入りづらい場所でもある。だから、ギャルとおじさんという組み合わせで、入口を作れたらと思っています。

福田:昔の牛丼もそうでしたよね。おじさん文化だったのに、今は普通にギャルいますもん。だったら立ち食いそばにも、その流れで来てもおかしくない。

益子:立ち食いそば女子、そばギャル。この漫画をきっかけに流行りそう。安くて美味しいし、ダイエットにもいい。

福田:漫画の続きも読みたいよね。

本橋:ぜひそうなればと思います。

U字工事

■書誌情報
『そばギャルとおじさん 1』
著者:稲葉そーへー(漫画)、本橋隆司(原案、監修)
価格:792円
発売日:2025年10月17日
出版社:光文社
レーベル:熱帯COMICS

『そばギャルとおじさん 2』
著者:稲葉そーへー(漫画)、本橋隆司(原案、監修)
価格:792円
発売日:2026年1月23日
出版社:光文社
レーベル:熱帯COMICS

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