『超かぐや姫!』ヒットに見る、NETFLIXオリジナルのIP戦略の課題とは? エンタメ社会学者・中山淳雄に聞く


NETFLIXオリジナルアニメ『超かぐや姫!』が好調だ。配信開始直後から国内で話題を呼び、NETFLIXのグローバルランキングにもランクイン。関連書籍も売れ行きを伸ばしており、公式ガイドブック『超かぐや姫! 公式ガイドブック ハッピーエンドのその先へ!』(KADOKAWA)をはじめ、ノベライズ作品、コミカライズ作品がAmazonの和書総合ランキング上位に顔を出す状況が続いている。アクリルスタンドやTシャツなどのグッズ展開も活発で、アニメイト通販では多数の商品が並ぶ。さらにYouTubeでは複数パターンのMVが公開され、TikTokやXと連動したプロモーションも展開。ネットカルチャーの文脈を巧みに取り込みながら、配信後も熱量を維持している点が特徴的だ。
本作のヒットについて、『キャラクター大国ニッポン―世界を食らう日本IPの力』(中央公論新社)などの著作で知られるエンタメ社会学者・中山淳雄氏は、まずポジティブな側面を評価する。
「率直に言って、プロモーションが非常にうまい。宣伝期間が短いNETFLIXオリジナルアニメは話題化が難しいものが多かった中、『超かぐや姫!』は約2か月前からしっかり露出を作った。スタジオコロリドやツインエンジンの力もあると思いますが、事前の仕込みやSNSでのキャラクター運用、MVの段階的公開など、ネット世代に刺さる導線設計が徹底されていました」

とりわけ注目すべきは、映像配信にとどまらないメディアミックスの広がりだという。
「出版がここまで連動しているのは象徴的です。コミカライズやノベライズ、公式ガイドブックが売れている。これは単体のヒットというより、IPとして経済圏を作ろうとする動き。拙著でも書きましたが、日本IPの強さは作品単体の成功だけでなく、キャラクターや物語を軸に周辺市場を拡張していく点にあります。本作はそのモデルを、NETFLIXオリジナルで実践している」
さらに、オタク経済圏への的確なアプローチも鍵だと分析する。
「キャラクター性が強く、グッズ化しやすい世界観です。従来のNETFLIXアニメはグッズ展開が控えめでしたが、今回は積極的。アジア圏、とりわけ台湾や中国での反応も目立ちますが、これはボカロ文化やネットカルチャーの蓄積と接続しているからでしょう。ビリビリなどを経由した広がりは、日本のネット文化が20年かけて育ててきた文脈の延長線上にあります」
一方で、中山氏は冷静な視点も忘れない。
「ヒットしているのは間違いない。ただし、極めて深く刺さる世代・ファン層に届いている、という印象です。総視聴300万人、7百万時間という3週間の成果は、『今際の国のアリス』や『イクサガミ』などのいわゆる海外に届く“メガヒット”級のNETFLIXオリジナルと比べると一桁落ちる。プロモーション展開が一般層や海外にまで広がっているかというと、そこまではいっていない」

物語構造も、グローバルな大衆層を意識した王道とはやや異なるという。
「キャラクターの勢いとネット的オマージュで押し切る作りは、好きな人にはたまらない。ただ、より普遍的なドラマ性で広く取るタイプではない。オタクカルチャーの強度が、そのまま広がりの限界にもなり得るわけです」
それでも、『超かぐや姫!』の意義は小さくない。
「NETFLIXオリジナルでありながら、日本型のIP展開を本格的に仕掛けた点は大きい。制作委員会的な広がりを、配信発でも作れる可能性を示した。グッズやコラボがどこまで拡張できるかは試金石ですが、成功すれば今後のモデルケースになるでしょう」
配信プラットフォーム発のアニメが、映像ヒットにとどまらずキャラクターIPとして根付くのか。『超かぐや姫!』は、その可能性と課題を同時に示す存在と言えそうだ。

























