山下智久のボディは“瓶内二次発酵中”だ! 『神の雫/Drops of God』で魅せる、さりげない肉体美

お祭り騒ぎとは裏腹に厳粛なムードが立ち籠める再ドラマ化作
全世界で累計1500万部以上売り上げているワイン漫画『神の雫』(作:亜樹直)には500本以上の銘柄が登場する。原作で紹介されたことがきっかけで人気銘柄に躍り出たワインも多い。例えば、超コスパワインの代名詞「カーサ ヴェッキオ モンテプルチアーノ・ダブルッツォ」。イタリア中部アブルッツォ州を代表する品種モンテプルチアーノで作る、名門ファルネーゼ社の看板ワインの一つだ。
濃いルビーレッド色のワインを注いだグラスを傾けると、強い粘性があり、高アルコール度だとすぐにわかる。かと思えば、アタック(ワインを口に含んだ時の第一印象)はまろやかで、強い甘味と凝縮された果実感が口いっぱい広がる。酸味は控えめ。同じファルネーゼがバジリカータ州で手掛ける「ピポリ アリアニコ デル ブルトゥレ」など、南イタリアの濃厚でジャミーな銘柄を思わせもする。何より3,000円以下で購入できることが嬉しい。原作第19巻で中華の肉料理(イタリアワインとの相性は抜群!)と合わせて以来、ロングセラー商品になっている。
『神の雫』は2009年に日本テレビで初めてドラマ化された。どこかバブリーな残り香がする原作と平成初期寄りドラマの作りがうまくマッチしていた。主演は亀梨和也。世界的ワイン評論家・神咲豊多香の息子で、莫大な遺産を賭けて「十二使徒」ワインを探し求める主人公・神咲雫を演じた。ドラマ最終回で神の雫ワインが、1610年からボルドーで無農薬を徹底するシャトー ル ピュイの名醸ワインだったと明かされた。これまた原作効果で人気に火がついた。最終回放送後にはオンラインのワインショップで売り切れが続出したというエピソードまである。その一方で、Huluが独占配信した、日仏米共同製作の再ドラマ化作『神の雫/Drops of God』を見ると、ワインブームの(少なからず)発火点になってきた原作がブーストする、お祭り騒ぎとは裏腹に厳粛なムードが立ち籠めている。
原作の設定を大胆にアレンジした意義とは?
『神の雫/Drops of God』第1話ワンショット目はどんな画面だったか? 静寂が支配する室内。山下智久演じる主人公・遠峰一青が座る前に、デキャンタージュされたワインが置かれている。一青と向かい合う外国人男性が「遠峰さん このワインが何かお答えください」と英語で問いかける。一青はグラスを何度か回す。一矢乱れないスワリングの動き。そして彼のモノローグ。「ワイン 僕の人生のすべて」。このモノローグももちろん英語。かつて放送されていた語学バラエティ『大人のKISS英語』(『山Pのkiss英語』、フジテレビ系)という冠番組のMCが山下だったと知る視聴者なら、クールだけれどどこか人懐こい彼の英語発音が懐かしく、より耳に馴染んでくるかもしれない。
静かな室内場面に響く耳福の英語モノローグ後、画面は次の場面に移行するが、第2話で再度このスワリング場面が描かれる。一青は瞬時に銘柄名を手繰り寄せた。シャトー ル ピュイの「バルテルミ」。上述した前作ドラマの神の雫ワインと同じワイナリーの名醸ワインだ。ただし、『神の雫/Drops of God』でのそれは、神の雫ワインではなく、あくまで再ドラマ化作の初出ワインということでしかない。ここではワインブームを焚き付けるようなお祭り騒ぎは無用の長物。仮にお祭り騒ぎを誘発するものなら、厳粛な画面の中でさらっと初出させ、手際よく封じ込めてしまえばいい。山下智久による冷静沈着な英語モノローグからは、そんな牽制のトーンすらうかがえる。
そしてここには原作の登場人物たちが西洋絵画の名作などを引き合いに、美辞麗句で彩る大袈裟なテイスティング表現もない。美酒の複雑な味わいを名画が喚起する崇高なイメージとして語ることもない。もう一人の主人公であるカミーユ・レジェ(フルール・ジェフリカ)による天才的なテイスティングが、ワインの本質を淡々と言語化するだけなのだ。カミーユがワインに感じる豊かなアロマが脳内映像として画面上に再現されることはあっても、これ見よがしな大味演出にはならない。そもそもこのカミーユこそ原作の主人公・神咲雫に相当する人物であり、主人公をフランス人女性に置き換えたことで物語自体が国際色豊かに味わいを深める。偉大なワイン評論家・神咲豊多香もカミーユの父であるアレクサンドル・レジェ(スタンレー・ヴェベール)として生まれ変わり、遺産総額も原作の「20億円」から「160億円」に桁が変わっている。わかりやすくスケールアップしているにもかかわらず、画面は粛々と厳格なルック(スタイル)を誇示する。ワインそのものを語るため、原作の設定を大胆にアレンジした意義はかなり大きい。
均整美を誇る山下智久が瓶内二次発酵中
遠峰一青は世界的にその名が轟きつつある若手のワイン専門家である。原作では単に神咲豊多香の養子という初期設定だが、『神の雫/Drops of God』ではアレクサンドル・レジェの愛弟子であり、実は息子でもあるという関係値。カミーユとも兄妹だと知った彼は妹を慈しむようになり、フランス式団欒の場で表情を緩ませることになる。カミーユが遺産相続を賭けた対戦相手でしなかった段階での一青といえば、ワイン一筋の完璧主義者で、他者を一切寄せ付けず、ロジカルな口調には凍てつくトゲがあった。
さらに原作の一青は主人公のライバル感がより強く、テイスティング時に相手をあからさまに見下した美辞麗句をひけらかしていた。特に第1巻終盤で信奉者の社長に用意してもらった幻のワインをテイスティングするホテルの場面は輪をかけていけすかない。幻のワインとは、フリウリの生産者ミアーニが醸造する希少銘柄。生産本数が極端に少ないミアーニのワインはイタリアワイン屈指のカルト的人気がある。窓辺でグラスをかざした一青は興奮しながら複雑な味わいをリヒャルト・シュトラウスのオペラ『サロメ』にたとえる熱狂ぶり。原作ではこうしたキャラクター性にもお祭り騒ぎ感が込められているのだが、山下演じる一青はどんな場面でも常に物静かで平常心を保っている(山下の演技もまた驚くほどフラットな状態)。
もちろん心の中では複雑な揺らぎが生じていたりもするが、微動だにしない見た目からは彼の葛藤は全くわからない。彼の心の襞を覗くためには、少しでも動きがある要素を物理的に計測し、そこに意味を読み取るしかない。てがかりとなりそうなものといえば、彼の身体で唯一、微動するものといってもいい、ピクピク動く筋肉くらいだろうか…? 『神の雫/Drops of god』第3話で育ての父・遠峰和博(二階堂智)とスカッシュで汗を流す場面が見逃せない。一青の左二の腕の筋肉がわずかに微動する。一青は、信頼を置く和博とスポーティな時間を過ごすことで確実にリフレッシュできている。さらにフランスの有名銘柄を主体に描く本作中、イタリアワインにスポットが当たる第6話で、ジャーナリスト・片瀬百合香(岡本あずさ)と一夜をともにしたベッド上、すやすや眠る一青の右腕に血管が浮き出ていた。この血管は安息の印だ。
山﨑賢人主演の世界的人気シリーズ『今際の国のアリス』シーズン2(Netflix、2022)で山下は謎のヌーディスト・キューマを演じた。山﨑演じる主人公たちとの対戦中、キューマは素っ裸で仁王立ちだった。山下の雄々しい胸筋から美尻までカメラはあらゆるアングルから惜しげもなく捉えていた。驚異のキューマ役を演じたことで身も心も画面上にさらけ出したかに見える山下が、『神の雫/Drops of God』シリーズでも自らのボディをさりげない場面で提示する。均整のとれたフィジカルな魅力と比例するように、登場する各ワインの骨格やボディ感もまた洗練度を増す。シリーズの続編となる『神の雫/Drops of God シーズン2』(Apple TV +、以下、『シーズン2』)では、カミーユとともに幻の品種を求めて8000年前からワインが造られている発祥地ジョージアなどへ飛び回る過程で、一青が心に抱くそこはかとない不安が描かれる。その不安を象徴する脳内イメージでも彼は夜の海に裸で浸かっている。目には見えない心の動きとフィジカルな強靭さがこの先どのようにリンクするのか。一次発酵させた高級スパークリングワインが、瓶に詰められた後も発酵過程を経るように、毎週最新話が更新されている『シーズン2』配信の間、均整美を誇る山下智久が瓶内二次発酵中だ。
























