独ソ戦を題材にした小説『同志少女よ、敵を撃て』が異例の大ヒット! 圧巻のおもしろさを解説

『同志少女よ、敵を撃て』のすごさ

 さらに狙撃を中心とした、戦争描写も見逃せない。どんなにずば抜けた才能があろうと、油断をすれば死ぬ。油断をしなくても死ぬときは死ぬ。戦場は非情である。スターリングラード攻防戦を始めとする激戦地に投入されたセラフィマと仲間たちは、そんな地獄で何度も危機に陥る。作者は独ソ戦の流れを分かりやすく説明しながら、彼女たちの血みどろの戦いを迫真の筆致で描き出すのだ。アクション・シーンの巧さは、「本当に新人なの」といいたくなるほど素晴らしい。戦争アクション小説として読んでも、充分に楽しめるのだ。

 なお本書は、アガサ・クリスティー賞初の、全選考委員が最高点をつけた作品とのこと。読んでしまえば、それも納得だ。セラフィマの狙撃は、時代を超越し、現代を生きる私たちも撃ち抜く。とんでもなく面白く、とてつもなく胸に響くデビュー作である。

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