『キン肉マン』ロビンダイナスティの死闘の歴史 「名門一家」が歩んできた険しい道のりを考察

『キン肉マン』ロビンダイナスティの死闘の歴史

 プロレス的視点から『キン肉マン』(ゆでたまご/集英社)の名勝負を考察する本シリーズ。第8回はある“名門一家”に迫ってみたい。

※本稿は『キン肉マン』シリーズのネタバレを含みます。

第1回:2000万パワーズ、“名タッグ”として語り継がれる理由
第2回:名勝負ブラックホールvsジャック・チー戦に見る、“別人格ギミック”の面白さ
第3回:大魔王サタンは「稼げるレスラー」である
第4回:ジャンクマンvsペインマン戦が証明した、不器用で愚直な戦いの熱さ
第5回:バッファローマンの“裏切り”はなぜ人々を魅了する?
第7回:キン肉スグルの試合スタイルは玄人好み?

名門「ロビンダイナスティ」

『エディ・ゲレロ自伝』(エンターブレイン)

 プロレス界には名門と呼ばれ、多くの名レスラーを輩出している家系、一族が存在する。“鉄の爪”のエリック一族、エディ・ゲレロを排出したゲレロ一族、カナダのハート・ファミリーはブレット・ハートなどの血族だけでなく、クリス・ジェリコなど教え子にも優秀なプロレスラーが多い。日本でも二世レスラーは存在するが、海外のそれと比較したときに並び立つような名門は残念ながらないといっても差し支えないだろう。

 名門一家に生まれ育ち、幼い頃からプロレスとともに生きてきたエディやブレットは、スキルとインサイドワーク、表現力を駆使してWWE(World Wrestling Entertainment)のトップレスラーに成り上がった。

 『キン肉マン』でも、キン肉万太郎を始めとしたII世の代まで物語が進み歴史が紡がれてきたが、作中において名門と言える一家を挙げるとするならば、それはシリーズ初期から仮面の貴公子として数多くの悪行超人と死闘を繰り広げてきたロビンマスク、そしてその偉大な父、ロビンの息子でありながら悪魔超人に身をやつし、II世をはじめとしたニュージェネレーションの前に立ちはだかった、ケビンマスクを輩出した「ロビンダイナスティ」をおいて他にないだろう。

 もちろんシルバーマンを祖として、キン肉タツノリを筆頭にスグル、アタル、サダハル、万太郎らを輩出しているキン肉一族も名門といえば名門だが、なんというか(主に真弓、スグル、万太郎のファニーなキャラクターのせいなのだが)いまいち名門と言ってもピンとこない。バッファロー一族も没落して久しいし、魔界の王族、アシュラマンの一族も、アシュラマン自ら息子シバを手に掛けたことで、その血筋は残念ながら途絶えている。やはりキン肉マン世界の名門といえば、ロビンダイナスティなのだ。

 ただ、ロビンダイナスティも名門としての道を順風満帆に歩んでいるわけではない。エリック一族のような悲劇までは訪れていないが、その道程はかつても、そしていまも波乱万丈である。

Uインター時代の山崎一夫的な役割

 まずはロビンマスクだが、イギリス代表として第19回の超人オリンピックに優勝し、エリート超人しての成功を約束されたかに思えた。しかし、一人のダメ超人=キン肉スグルに喫した敗北が、彼の人生をよくも悪くも大きく変えることになった。優れたリーダーシップと確かな実力から正義超人をまとめる立場にあり、周りから一目置かれる存在である一方で、自分の運命を変えることになったキン肉マンに対しての執着(弟子のウォーズマンを利用してまで倒そうとしたり)、あるいは喧嘩男に対しての感情的な部分だったりと、意外とメンタル的には安定していないダークな面も目立つようになってしまった。

 また、ロビンはその立場ゆえに強敵と戦う機会が多いため、結果的に相手に星を渡すことで相手のポジションをあげ、その敵をキン肉スグルが倒すという、Uインター時代の山崎一夫的な役割に回ることもあった(むしろそれ以外の理由での負けはない)。ロビン自体の評価が下がらないのは、そんななかでも王位争奪編で運命の王子の一人であるキン肉マンマリポーサ、そして作中最強クラスの超人であるマンモスマンを倒したことで自分の格を維持しつつ、勝っても負けても確実に対戦相手の格を上げる的確な試合運びができるという、そのプロレス能力の賜物である。

 しかし、裏では常にキン肉スグルに対しての劣等感、いつかキン肉スグルに勝利するという執念はくすぶり続けていたに違いない。そして時を経て、その思いは一人のスーパースターを生み出すことにつながる。

 そう、息子のケビンマスクである。



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