月マガ新連載『THE BAND』――『BECK』ハロルド作石が描く“少年がギターを手にした瞬間の無敵感”

「ギターってのは、たった6本の弦を伝わって出てくる人間性なんだ」――むろん、ベーシストにはベーシストなりの、ドラマーにはドラマーなりの言い方があるのだろうが、いずれにしてもこれは1つの真実だと思う。そうでなければ、なぜ、同じ楽器を使っても、人によって奏でる“音”が違うのかということの説明はつくまい。
なお、この言葉はハロルド作石のバンド漫画『BECK』の主要キャラの1人、エディ・リーのセリフだが、同じ作者による新たなバンド漫画が、「月刊少年マガジン」2025年1月号にて始まった。
タイトルは直球勝負の『THE BAND』――主人公は、新木友平(あらき・ゆうへい)という名の孤独な少年だ。
※以下、『THE BAND』第1話の内容に触れています。未読の方はご注意ください。(筆者)
音楽とギターがつなぐ、2人の少年の友情
新木友平は中学3年生。小学生時代から理不尽なイジメを受けている彼には、これまでたった1人だけ親友と呼べる存在がいた。井畑眞太朗(マタロー)という名の彼とは、小学5年生の頃、音楽好きな母親に連れられて行ったライブの興奮を共有した仲だったが、その話のわかる友はわずか1年半で転校。それ以来、友平は再び孤独で辛い日々を送っているのだった(母親もその間に亡くなっている)。
が、そんなある時、友平は叔父の“マコちゃん”から1本のギターを譲り受ける。そして、ひょんなことからマタローとの数年ぶりの再会も果たし、すでにギターの基礎をマスターしている彼から楽器の奏法を教わることに。それまで、「俺がいなくても回り続けている」と思い込んでいた友平の「世界」が、大きく変わろうとしていた。
バンド漫画の王道パターンとは
と、これがまあ、『THE BAND』第1話の序盤の大まかなあらすじなのだが、「なんだ、これでは『BECK』とほとんど同じ展開じゃないか」と思う向きもおられることだろう。たしかにその通りだ。
しかし、“孤独な少年がギターと出会い、自らを解放することで仲間を得ていく”というストーリー展開は、『BECK』に限らず、水野英子『ファイヤー!』から、松本大治『DESPERADO』、浅田有皆『ウッドストック』、はまじあき『ぼっち・ざ・ろっく!』に至るまで、ある種の日本のバンド漫画の「定型」と言えなくもないのである(注・『ぼっち・ざ・ろっく!』の主人公は少年ではなく少女)。
だから、『THE BAND』という直球勝負のタイトルからもわかるように、ハロルド作石は、あえて今回もバンド漫画の王道パターンを物語の序盤に持ってきたのだ、という見方もできよう。
むしろ、個人的には、このあと作者がどういう風に決められた「型」を崩していくのかに注目したい。