『キン肉マン』2000万パワーズ、“名タッグ”として語り継がれる理由 プロレス視点のベストバウトを考察

『キン肉マン』2000万パワーズ、“名タッグ”として語り継がれる理由 プロレス視点のベストバウトを考察

 現在も週刊プレイボーイとWEBで連載が続いているキン肉マン。41年の歴史の中で数多の名勝負が繰り広げられてきたが、今回から何回かに分けて、プロレス的観点から見た、キン肉マン各シリーズのベストバウトを紹介していこうと思う。選んだ基準は単にいい試合ということではなく、プロレスという競技の特異性、プロレスの醍醐味が味わえ、楽しめ、学べるということである。今回は無印(1~36巻)から以下の試合をチョイスしてみた。

2000万パワーズvsケンダマン&スクリューキッド

 プロレスのなかで最も「プロレスらしさ」が出るのがタッグマッチであると言えよう。タッチワークやコンビネーション、乱入を駆使して戦うタッグチームに必要なのはやはりチームワークとその組み合わせ。単純に強いレスラー同士が組んでもうまくいかないこともあるし、同じタイプ同士で組んでも意外と噛み合わないことがある。その組み合わせ次第で1+1が2にも3にも、ときには「テンコジタッグ(天山広吉と小島聡)」のように10倍の200にもなるのがタッグチームの最大の魅力である(小島聡が試合後に「1+1は2じゃないぞ。オレたちは1+1で200だ。10倍だぞ10倍」とコメントしたことによる。正しくは10倍ではなく100倍であることから、「テンコジ算」とも言われる)。

 キン肉マンでも「夢の超人タッグトーナメント編」として、タッグ戦がメインのシリーズがあったが、さすがはゆで先生、どのチーム、どの組み合わせもタッグとして秀逸だった。しかしその中でも最も読者にインパクトを与えたのが、バッファローマンとモンゴルマンが組んだ「2000万パワーズ」だろう。

 バッファローマンの1000万パワーはいいとして、「モンゴルマン(の中の人)は97万パワーやないかい!」と当時の読者(私含む)全員がツッコんだこのネーミング。しかし、そこはゆで先生、モンゴルマンにさらっと「超人強度を補う1000万の技」という謎の「ゆで理論」を口にさせ、読者がそれで納得してしまうほどのバッファローマン顔負けのパワー殺法で押し切ってしまったのである。しかし実はこのタッグチーム、プロレス的に考えれば最も理にかなったタッグチームである。

※以下、ネタバレあり

ブルーザー・ブロディ&ジミー・スヌーカ組の影響

 パワーファイトで猪突猛進するバッファローマンに、スピードと多彩な技で相手を翻弄するモンゴルマン。互いに足りないところを互いが補い合い、一人で戦う以上の力を引き出す。この力と技の組み合わせは、古くは仮面ライダーでも「技の1号、力の2号」があったようにある意味王道ではあるが、ライダーの1号、2号はパッと見どっちがどっちかわかりにくい。見た目は基本同じだし、なんなら1号の肩のラインは二本だし、2号は一本だったりする。そこをいくと、2000万パワーズは実に分かりやすい。どっちがパワーを武器に、どっちが技を武器にしているかは一目瞭然。

 ゆで先生は当時日本のプロレス界で活躍していた、ブルーザー・ブロディ&ジミー・スヌーカ組からこの組み合わせの着想を得たと思われるが、個々のキャラクターの明確さ、肩当てを付けることによってのチームとしての統一感、そして単純明快で説明不要のチーム名。タッグチームとしてこれ以上ない完成度である。1+1が2000万、テンコジの10万倍である。

 そんな2000万パワーズの初戦の相手が、タッグトーナメント戦で初登場する新たな勢力、完璧超人の先兵、ケンダマンとスクリューキッドである。本来ブロッケンJrとウルフマンの「モースト・デンジャラスコンビ」と対戦予定だったが、試合開始直前に突如2人が乱入。コンビネーション技、地獄のネジ回しでモースト・デンジャラスコンビの2人を戦闘不能にしてしまう。

 余談になるが、このデンジャラスすぎるかませ犬っぷりを見せつけたブロとウルフの2人は、後年このときの借りを返すのだが(特にブロッケンの躍進は著しい)、そんなことを知る由もない当時の読者は、学校の授業で2人組を作る際に、明らかに弱そうな子の組み合わせをみつけるたびに、ビッグボンバーズやモースト・デンジャラスコンビと名付け、揶揄の対象にしていたことは言うまでもないだろう。これがタッグリーグ戦だったら白星供給係と思われていたコンビがまさかの番狂わせを起こし、リーグ戦線をかき回すなど、それなりに光る場面を与えられたのだが……。

 というわけで、急遽乱入してきたネジケンの参加が認められ(このあたりも実にプロレスらしい)、2000万パワーズ対完璧超人コンビの戦いの火蓋が切って落とされた。まずはバッファローマンとケンダマンのバトルから。

 バッファローマンを超える1500万パワーと、硬度10のダイヤモンドパワーを持つケンダマンのパワー殺法に押され気味のバッファローマン。パワー対パワーの対決にアクセントを与えたのはモンゴルマン。タッチはせずとも絶妙な介入でネジケンの地獄のネジ回しからバッファローマンの窮地を救いつつ、バッファローマンのハリケーンミキサーにアシストを加えることでケンダマンの頭部破壊に成功する。

 急造コンビでありながら、猪突猛進なバッファローマンのパワーをモンゴルマンが絶妙に生かしていくコンビプレーは、後年スプリングマンが嫉妬するのもうなずけるほど、長年コンビを組んでいるかのような息の合いっぷりであった。しかし完璧超人もなりふり構わぬ反撃に出て、二つ目のコンビネーションでバッファローマンの四肢に絶大なダメージを与えることに成功する……のだが、ここまでスクリューキッドは”ネジ”として、ケンダマンが相手に突き刺すためのツールとしての役割しか与えられていないことにお気づきだろうか。

 モンゴルマンがバッファローマンを巧みにリードしていた一方、スクリューキッドはただひたすらケンダマンの道具として戦っている。確かにコンビネーション技は見事だが、あくまでもそれはケンダマンがスクリューキッドを利用しているだけで、それでは1+1は2にしかならない。

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