人間食べ食べカエルが紐解く、ホラー映画再興の10年 未来を託す各国の気鋭監督と作品
最後に、ここ日本でのホラー情勢についても触れておきたい。『リング』(1998年)以降、Jホラーブームが巻き起こったが、2010年くらいを境にそれも下火になり、一時期、日本のホラーはかなり厳しい状況になったと認識している。だがそんな中でも、『呪怨』(2003年)の清水崇監督は粘り強くホラーを作り続け、白石晃士監督は『ノロイ』(2005年)や『コワすぎ!』シリーズ(2012年〜)でファウンドフッテージ・ホラーを定着させた。そして、近年では日本でもホラーが再び息を吹き返しているように感じる。
2020年には、清水監督が新たに生み出した『犬鳴村』が14億円以上を売り上げる大ヒットを記録。『樹海村』(2021年)と『牛首村』(2022年)に続く、恐怖の村シリーズが誕生することとなった。また、『リング』の中田秀夫監督が手掛けた『事故物件 恐い間取り』(2020年)も10億円以上の興行収入を達成している。映画以外の動きでは、心霊ビデオシリーズ『ほんとうに映った!監死カメラ』シリーズ(2012年〜)の寺内康太郎監督が手掛けた、心霊ビデオ版アベンジャーズな『心霊マスターテープ』(2020年/エンタメ〜テレ)の印象が強い。また最近は、その寺内監督が心霊スポット巡りのYouTubeチャンネル『ゾゾゾ』を運営する皆口大地と共に手掛けた、フェイクドキュメンタリー『Q』が高い注目を集めている。これは断片的なファウンドフッテージを全12回にわたってYouTubeで公開するというもの。今は第9回まで公開されているが、いずれも不可解で不気味だ。まだ観ていないホラー好きの方がいたら鑑賞することをお勧めする。
また、配給会社のTOCANAが日本に世界中の未知のホラーを次々日本に持ってきてくれている他、自社でも映画の製作を開始。その第1弾となる、佐々木勝己監督の『真・事故物件 本当に怖い住民たち』(2021年)は、既に一足先に観たホラー好きから「地獄を体現した」と大評判。ゴア・ホラーの人気に火が付くきっかけになると嬉しい。世界的なホラーブームは日本にも追い風をもたらした。この勢いを途切れさせずに、数多くのホラー映画を生み出してほしい。
気づけばホラーはすっかりメインストリームに返り咲いた。そして、その勢いは留まるところを知らない。ここで書き切れなったが、他にもホラー界に旋風を巻き起こす作品はたくさんあったし、これからも続々と公開される。常に新たなアイデアを取り入れることで、ホラーは進化し続ける。いつまでも新鮮な驚きを与えてくれるこのジャンルに一生付いていきたい。