人間食べ食べカエルが紐解く、ホラー映画再興の10年 未来を託す各国の気鋭監督と作品

人間食べ食べカエルが紐解くホラー近年史

 今、ホラー映画に追い風が吹いている。その要因には、いくつもの出来事が重なっているだろう。だが、一つだけ言えるのは、映画制作会社「ブラムハウス・プロダクションズ」の存在が大きいのは間違いないということだ。1990年後半頃から、『セブン』(1995年)を皮切りにサイコ・サスペンスがメインストリームとなった時期があった。そんな中でも『ブレアウィッチ・プロジェクト』(1999年)の大ヒットなどはあったが、いずれも単発で終わる。そして、それは2000年代まで暫くの間、続いた。だが次第に風向きが変わっていった。そのきっかけの一つが、2009年の『パラノーマル・アクティビティ』の超特大ヒットである。

『パラノーマル・アクティビティ』DVD

 『ブレア~』同様、POV(ポイント・オブ・ビュー)形式を取り込んだ作品で、製作費は僅か1万5千ドルながら、世界で2億ドル近くの売上を出した。その後、2匹目のドジョウを狙おうと、あちらこちらでパチモン・パラノーマルが乱造された。これを世に送り出したのが、プロデューサーのジェイソン・ブラム率いるブラムハウスである。その後ブラムハウスは、『ソウ』(2004年)で鮮烈なデビューを果たしたジェームズ・ワン&リー・ワネルと手を組み、超王道オカルトホラー『インシディアス』(2010年)をスマッシュヒットさせる。この辺りから、再び幽霊系の作品にも注目度が上がっていった。ワンはその後『死霊館』ユニバース(2013年〜)を確立し、そのほとんどを大ヒットさせている。今や大人気シリーズにまで成長させた。ブラムハウスはさらに続けて、ジョーダン・ピール監督の『ゲットアウト』(2017年)や、クリストファー・ランドン監督による『ハッピー・デス・デイ』(2017年)などヒット作を連発。気づけば、ホラー映画界が再び賑やかになっていった。

『ハッピー・デス・デイ 2U』(c)Universal Pictures

 そして、ホラー映画界は今、群雄割拠の時代にある。ブラムハウスだけでなくA24やイライジャ・ウッド率いるスペクターヴィジョンも積極的にホラーを製作、配給をしている。また、世界各地から次々と新たなホラークリエイターが現れている。米国で言えば、今やスティーヴン・キング原作作品を手掛けさせたら右に出る者はいないマイク・フラナガン、『ザ・リチュアル いけにえの儀式』(2017年)など独創的な映像が持ち味のデヴィッド・ブルックナー、『ヘレディタリー/継承』(2018年)で人々を地獄に突き落としたアリ・アスター、『ウィッチ』(2015年)でホラーファンから高い信頼を得たロバート・エガースなど、名前を挙げればキリがない。

『サイコ・ゴアマン』(c)2020 Crazy Ball Inc.

 カナダからは、『サイコ・ゴアマン』(2020年)など温かみのあるゴア描写を得意とするスティーヴン・コスタンスキ、イギリスからは、Zoomホラー『ズーム/見えない参加者』(2020年)や車載カメラホラー『Dashcam(原題)』(2021年)と続けて斬新なファウンドフッテージ作品を生み出す期待の新星ロブ・サヴェージなど、ハイレベルなホラーを生み出す監督がものすごく増えている。これをホラー黄金期と言わずして何と言おうか。

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