『日本一の最低男』北野拓プロデューサーが語る香取慎吾の魅力 「また一緒に仕事をしたい」

3月20日に最終回を迎えるフジテレビ系木曜劇場『日本一の最低男 ※私の家族はニセモノだった』。選挙と“ニセモノ家族”をテーマにした本作では、イメージアップを図るため義弟・小原正助(志尊淳)とその子どもたちと暮らすことを決めた主人公・大森一平(香取慎吾)が、次第に家族との問題に真摯に向き合い、大江戸区長選で四期連続当選を果たした“不動の帝王”・長谷川区長(堺正章)に挑戦する姿が描かれてきた。物語がいよいよ最終局面に差し掛かる中、プロデューサーの北野拓に、香取慎吾を主演に起用した理由や企画の誕生過程、そしてクライマックスの見どころについて語ってもらった。
本作の脚本家チームには、映画『ハケンアニメ!』で日本アカデミー賞優秀脚本賞を受賞した政池洋佑、東京ドラマアウォード2024連続ドラマ部門優秀賞を受賞した『舟を編む~私、辞書をつくります~』(NHK BSプレミアム)の蛭田直美といった実力派の作家陣が参加している。ニセモノ家族編と選挙編でコントラストを出した意図について北野は、「日常の問題は政治につながっていて、家族の絆や地域のつながりで解決できる問題ではなく、その奥には政治的な解決が必要だということを描くことが作り手として誠実なスタンスだと思いました。入り口はまず国民的スターである香取慎吾さんと子どもたちの家族ドラマを観たいと思った多くの人に入ってきてもらえるように、身近な社会的課題をなるべく低い目線から描き、キャラクターを愛していただいた上で、後半で現在の社会や政治を背景にした選挙ドラマに持っていくことが狙いでした」と語る。

本作について、『人にやさしく』(フジテレビ系)へのオマージュではないかという声も多く見受けられたが、北野は「『人にやさしく』をオマージュしようという気持ちはまったくなく、むしろ、令和の新しい家族ドラマとして、どのようにアップデートするかという視点からスタートしています」と説明。さらに、「『薔薇のない花屋』(フジテレビ系)の八木優希さんや『西遊記』(フジテレビ系)の堺正章さん、『人にやさしく』(フジテレビ系)からは須賀健太さんや星野真里さんにご出演いただき、保育園の名前を『フォーピース保育園』にしたのは、こちらが香取さんの過去の代表作にリスペクトを持っていることや、これまでの香取さんの過去作のファンの方々には、より楽しんでもらえたらという遊び心を込めたものなんです」とその背景についてコメント。

そんな北野はこれまで、『フェイクニュース』(NHK)や『フェンス』(WOWOW)など、社会派ドラマを多く手がけてきた。その経験を踏まえ、社会的なテーマを民放で扱う意義について尋ねると、「社会的なテーマに関心がある層だけでなく、若者や普段は社会問題に触れる機会の少ない人たちにも、エンタメを通じてメッセージを届けられる可能性がある」とその見解を示す。
また、香取をキャスティングした理由を聞くと、「ホームドラマとしての温かさと、選挙ドラマのシビアさを両立させるには、陰と陽の二面性を演じ分けられる俳優が必要でした。しかも、香取さんはシリアスなテーマでもポップに昇華できる稀有なバランス感覚を持っている。この作品では、社会的な問題に深く踏み込む場面もありますが、コミカルなシーンも数多くあります。香取さんの緩急ある二面性のお芝居が素晴らしいからこそ、重くなり過ぎずに楽しんで観てもらえていると思っています。フジテレビでの連ドラ主演は11年ぶりですし、まさか受けていただけるとは思っていなかったので、決まった時は本当に嬉しかったです」と、オファーの経緯を明かしてくれた。

続けて、初タッグとなった香取との仕事で特に印象に残っていることを尋ねると、「お芝居への向き合い方からも、現場の監督、プロデューサー、スタッフをとても信頼してくれているのが伝わってくるんです。そして何より、現場の空気をとてもあたたかくしてくれる方で。香取さんを中心に、子役を含めたキャストやスタッフが自然と一つにまとまっていくのを感じました。穏やかで心地よい現場が最後まで続いたのは、香取さんの存在が大きかったです。改めて『また一緒に仕事をしたい』と思える俳優さんだと実感しました」と、香取の人柄や現場での影響力についても言及。

そして、正助役に志尊淳を起用した理由については、「香取さんと対になる存在をイメージしていました」とコメント。さらに、「このドラマでは、有害な男性性をどう乗り越えるかというのが一つの大きなテーマになっています。昭和的な価値観を持つ一平と、令和的な価値観を持つ正助、ふたりの価値観のぶつかり合いと対話を丁寧に描くことで、テーマを浮かび上がらせることが狙いでした。志尊さんは回を追うごとに香取さんとの関係性の変化を見事に表現してくれていたので、本当に感謝しています」と述べた。